引き続き、阪急阪神東宝グループについての記事です。
昨12月6日、東宝は東京楽天地を、阪急阪神ホールディングス(HD)はオーエスを、それぞれ完全子会社化を目指したTOBを実施すると発表しました。
「東京楽天地」概略
(出典:Wikipedia)
東京楽天地はグループ創始者の小林一三翁(雅号:逸翁(いつおう))が昭和12年(1937年)、東京・錦糸町(現在の墨田区)に「江東楽天地」を新設したことに端を発します。「私たちの理想である、清く、正しく、美しく、御家族打連れてお遊びの出来る朗らかな娯楽地域を、国民大衆に提げることは…(中略)…必要であると信じ、将来益々発展すべき産業日本の原動力となる工業地帯、そしてここに働く人々、その家族達、それから市川、船橋、千葉方面に住む人々の為にも、丸の内の有楽街(※筆者注:日比谷・有楽町のいわゆる東宝村を指す)の様に、清く朗らかな娯楽場が必要になって来たことに思ひ至りまして…(略)」と設立に際する思いを記しておられます。もともと逸翁は浅草にシンパシーを感じていて、ここに逸翁の理想とする「大衆娯楽」「家庭享楽」の一大拠点をつくろうと志すも、逸翁と同じく甲州(今の山梨県)商人で年長者であった東武の創業者・根津嘉一郎に懇願され手を引いた経緯がありました。加えて当時の錦糸町はうらびれた場所だったゆえに東宝の重役たちは皆仰天し、暴挙とまで指摘される中で、逸翁の錦糸町への思いはさらに増していったようです。
周囲の反対は杞憂に終わり江東楽天地は大成功。昭和27年(1952年)には逸翁念願の浅草にも進出し、社名を東京楽天地と改めたあとはボウリング場経営をスタートするなど加速度的に多角化を図っています。現在では錦糸町でシネコン「TOHOシネマズ錦糸町」(オリナス・楽天地合わせて12スクリーン、2308席)を直営、錦糸町・浅草を中心に都内23区に不動産物件を所有する企業となっています。
現在の出資比率は東宝が22.74%を持つ筆頭株主で、阪急阪神HDが19.38%と第2位株主となっています。
「オーエス」概略
一方のオーエスについては設立趣旨の文書があまり見つかりませんが、戦後の混乱期における雇用安定に資する目的で、逸翁がつくった映画興行会社「オーエス映画劇場」(昭和21年(1946年))がその発祥です。逸翁は労使が健全に権利行使しながら社業を盛り上げてほしいとの願いを込めて、綱引きの掛け声から「オーエス」と名付けたとされます(諸説あり)。兵庫県下における東宝系映画興行は事実上同社のテリトリーとなっていて、かつての神戸阪急ビルにあった阪急会館や現在のOSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランドの計18スクリーンを直営、阪急西宮ガーデンズの「TOHOシネマズOS西宮」(12スクリーン)をTOHOシネマズと共同で運営しています。
こちらの出資比率は間接所有を含めて34.7%を持つ東宝が筆頭株主で、阪急阪神HDは22.16%を所有する第2位株主となっています。
「複合的TOB」の狙い
オーエスが令和3年に取得した「三宮OSビル」は、
阪急神戸三宮駅と神戸三宮阪急ビルに隣接する立地。
東京楽天地・オーエスともに東宝系の映画興行会社でありながら、東京・関西で収益性の見込める不動産事業を展開していて、両社ともに不動産で利益の大半を稼いでいます。オーエスは阪急神戸三宮駅前のビルを取得するなど、近年でも不動産開発への意欲は衰えていないようにみられていました。
この双方のTOBは各々が単独のものではなく、あくまで複合的な意味を持つことは日を見るより明らかであります。
①東宝による映画興行事業の一本化
②東宝は都内、阪急は関西における不動産事業の強化
「ゴジラスクエア」周囲に立つ「日比谷シャンテ」。
右手の尖塔は「東京宝塚ビル」。まさに東宝村!
今回、都内を事業テリトリーとする東京楽天地から阪急が、関西を中核エリアとするオーエスから東宝がそれぞれに手を引くこととなり、不動産事業における東宝・阪急の事業エリアの明確さが際立つこととなる一方で、東京楽天地・オーエスの興行事業については東宝がグリップすることになるのでしょう。
そこで、もうひとつ気になるのは、かねてから話題になっている「宝塚歌劇団」を含む阪急の興行事業の分離ということになります。
阪急の興行事業の移管の可能性は?
阪急の興行事業の拠点は宝塚歌劇団の拠点である宝塚大劇場・宝塚バウホール(いずれも兵庫県宝塚市)、東京宝塚劇場(東京都千代田区)のほか、子会社を通じて梅田芸術劇場(メインホール・シアタードラマシティ/大阪市)と計5館を所有しています。宝塚歌劇団は阪急電鉄直営で、その宝塚OGたちも所属するプロダクションを子会社の梅田芸術劇場などが担い、全国公演のミュージカルの主催等も行います。これらのカテゴリーには高い専門性が必要な反面、阪急電鉄からの出向者が大半を占めるなど人材面で不安がありました。このような人材面における問題が昨今報じられている今回の宝塚歌劇団の事象を招いたとも考えられ、その意味では今般のオーエスの興行事業移管に伴い、専門性の高い東宝が阪急グループの興行事業を一元的に担うというのも、劇団の自浄作用を活発化させる意味で有効打であると思われます。
1905席を持つ「梅田芸術劇場」はミュージカル、
ライブ、オペラなどにも対応する上質文化空間。
具体的には、同じく阪急阪神HD傘下の阪神電鉄が所有する大阪四季劇場と同じく、阪急は引き続き劇場の資産だけは保有しつづけることで不動産収入を確保(※東京宝塚劇場に関してはそもそも土地建物が東宝の所有で、劇場資産についても東宝への所有権移転が望ましい)、興行そのものは東宝グループで担うかたちが理想的だと考えます。
ただし、阪急阪神HDは「エンタメ事業」を基幹事業と位置付けている中で、演劇興行事業から撤退となれば、今年盛り上がった球団を中心とするスポーツ事業と六甲山の観光事業しか残らず、事業セグメントの見直しは必至でありましょう。
グループ再編効果の最大化を!
東京楽天地・オーエス両社ともにTOBには賛同しており、東宝はオーエス株においてTOBに応募、阪急阪神HDは東京楽天地のTOBには応募しないものの、TOB終了後に東京楽天地が実施する自社株買いに応募することで事実上、TOBに賛意を示します。今回の取組が東宝・阪急阪神HD双方にとって再編効果を最大化するとともに、実のある改革につながることを期待いたしたいと思います。
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