ジャニーズ事務所の前社長、故・ジャニー喜多川氏による性加害事件(※記事執筆時点において刑事・民事双方において訴訟提起されていないなど事件の要件は満たしていないが、当ブログではこの問題の重大性に鑑み、あえて「性加害事件」と統一して呼称することとする)がここ数週間、世間を賑わせています。


許されざる「犯罪行為」

喜多川氏が「ジャニーズジュニア」と呼ばれる、18歳に満たない研修生に対して性的虐待を繰り返していたというもの。各種証言からは常習性が指摘されていて、日テレ「news zero」のキャスターを務める同社所属の櫻井翔氏も番組内で「自分は被害者に見られうる立場」と述べている通り、喜多川氏の加害行為は同社所属タレントにとって「通過儀礼」と化していたのではないかという見方も発現しているようです。櫻井氏は自身の性被害の有無について認否には触れていませんし、事件の性質上、それを追及することは何人たりとも厳に慎むべきでありますが、加害者が明確な優越的地位を利用し、かつ判断能力が成熟途上にある青少年に対して一方的に性的行為を迫るというのはきわめて許しがたい「犯罪」であり、被害者がしっかりと声を挙げやすい環境の整備が必要であることは論を待ちません。


外国記者の報道がきっかけ

同社内における性加害事件は1960年代に雑誌で報じられて以来、元所属タレントが著書で自身の被害について触れるなど、度々クローズアップされてきてはいるものの、センセーショナルなトピックとまでにはなっていませんでしたが、1999年の週刊文春の連載では大きく世に知らしめることとなり、私も本報道を通じてこの事件の存在を知るに至りました。本報道を契機に同社が文春の発行元である文藝春秋に対して名誉毀損による賠償請求訴訟を提起、最高裁まで争われたものの喜多川氏による性加害については「その重要な部分においては認定」された東京高裁の判決を事実上支持し、司法判断としては確定されています。


しかしながら、この結審について触れたマスメディアは朝日新聞と毎日新聞などごく一部のみ、それも小さなベタ記事でした。国民的影響力を誇るテレビ各社はこの経緯も含めて一切報じることはなく、今年に入るまで「ダンマリ」を決め込んでいたわけであります。


(BS-TBS「報道1930」より)


では何故、今年になって急にトピックとして浮上しているのか。

ことし3月、英BBCのジャーナリスト、モビーン・アザー氏が同事件の被害者に取材した内容を報じる英国内での番組がきっかけとされています。きわめてドメスティックなトピックにも拘らず、外国のメディアが率先して取材・報道したことにわが国のメディアが重い腰を上げたというのは、わが国にとって恥以外のなにものでもありません。


同社がメディアに対して強い影響力を行使していたことはつとに知られており、私も具体的事案を聞いたことがあります。在京のあるテレビ局の局内にかつて同社がレッスン場を設けていた時期があって、そこで加害行為が繰り広げられていたという取材結果も発現しています。局側は明確に否定するでしょうが、局も加害行為を知っている、あるいは気づいていて黙っていた可能性も考えられ、それが事実なら極めて許しがたい話であります。そういう圧力めいた話以外にも、とかくわが国のメディアは扱いの難しい性加害問題そのものの報道には常に及び腰。その結果、最初に事件を報じた週刊誌報道から実に51年間、わが国のメディアは同社所属タレントを重用しつづけることになり、長い年月、世代間を跨いで多くの国民を煽動した「罪の意識」は、報道に携わるポジションにいるみなさんには、強く持っていて欲しいと念じます。


日本人の自浄作用に重大な疑義

加えて、私も含めて「ジャニーズに性加害の疑念が持たれている」という事実に目を背け、華々しくメディアに露出する同社所属タレントを何の違和感もなく観ていたという事実があります。以前の記事(以下リンク参照)で触れましたが、思想史家の先崎彰容さんはあくまでご自身の仮説として「日本人は『考えたくない』ことは『考えない』国民性」であるとBSフジのプライムニュースで語っておられますが、まさにこの典型事例といえます。これでは、少年期の思い出したくない記憶を辿り広く世間に告発した被害者の思いを無にする行為となり、図らずも加害者サイドに非常に都合の良い社会が醸成されているのです。



他方、「ジャニオタ」と呼称される同社所属タレントのファンの人たちの中にはタレントを応援するためにファンクラブ会員料をはじめライブやグッズ、DVDなどで多額の金銭を拠出している例もみられると聞いております。BS-TBS「報道1930」でメインキャスターの松原耕二さんが指摘していたように「被害者であるかもしれないタレントの保護」を前提にしつつ、ここでその行動の善し悪しについて私が論評することは控えますが、一方で欧米にみられるような企業の社会性に鑑みて購買行動を判断する文化がわが国には未だ根付いていないという側面も指摘されようと思います。日本企業も今でこそCSRに力を入れつつあるとはいえ、社会的貢献度の高い企業の製品・サービスを積極的に消費し、社会的に批判されるべき行動が確認された企業への投資および消費を最低限に抑制することで当該企業への社会的制裁に繋がり、企業経営においてより透明性を高める大きなうねりをつくれるのではないかと考えております。少なくとも、自身の消費行動が加害行為を間接的にとはいえ黙認し、ややもすれば助長してしまっているという事実に目を向けるべきであることに、一切の議論の余地はないものと見ます。


この事件は、単にジャニーズ事務所の内部で起こった事件たる性質を超越し、メディアを筆頭にわが国の自浄作用のない国民性が露見した話題のように捉えてしまうのは、決して私だけではない筈です。


【おことわり】

当ブログはそのタイトル通り「思い付き」更新のため不定期で更新をしてきましたが、長く続けていますと、定期的に投稿してほしい、とのお声を多数頂戴するに至りました。

そのため、原則として「月・水・金」の週3更新とさせていただきます。

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私も目標として励みますが、多忙時など更新が滞ることも想定されます。何卒ご容赦いただき、気長にお付き合い頂ければ幸いです。


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