以前、京都市の財政危機について論じた記事を掲載しましたが、そこでは財政上の危機に陥った理由を簡単に申し述べております。



今回、京都市による行財政改革計画の公表に際し、その解決策に繋がる、京都市が経済都市として成長を遂げるための議論のテーブルにのぼっている、いくつかの話題に触れたいと思います。


1.課税対象の拡大


京都駅前に建つ京都タワーから見た洛中の景観。

どの方角にも立派な神社仏閣の建造物が見える。


京都は世界有数の文化と歴史を誇る都市であります。やはりそういう性質上、一等地に神社仏閣が広大な敷地を得ているという特徴があります。これらは宗教法人化しているケースが殆どで、法人市民税や固定資産税のような市税が取れない状況が続いています。

であるから宗教法人も課税対象にしようというのは拙速で、そもそも宗教法人を非課税にした方針との整合性や、京都が経済都市として機能する前から神社仏閣は存在していたわけで後付け感が否めないこと、また神社仏閣なくして文化歴史都市としてのブランディングが成せたかと考えれば本末転倒な議論に思えなくもないですし、加えて神社仏閣でも一部は「稼いでいる」のかも知れませんが、大部分の宗教法人は近年の無宗教化の影響からか氏子や檀家が減り、どことは申しませんが京都でも市街地にあった神社が山深い大原地区に「移転」したような事例もあります。財政危機を救うひとつの手段として課税対象を拡大せんとする議論そのものに私は反対はしませんが、京都の歴史や文化を守ることを最優先にした丁寧な論議を願うところです。


2.京都の成長戦略の欠如

高感度なショップやカフェが立ち並ぶ北山通。

府による府立植物園(左)の再開発計画が出たが…


街の高度利用ができていないことは確かに問題ではありますが、そもそもの都市政策が不十分であった点を私は問題としたいと思います。

例えば私の知る限りにおいて20年ほど前から市内を走る車に対してロードプライシングの議論がありますが、実現に向けての兆しが全く見えないまま、市内の自動車通行量の総量の削減見通しがないのに四条通の歩道拡幅と車道削減を実施し、逆に四条通は慢性的な渋滞を惹き起こす結果となりました。これはひとつの事例であって、京都市の都市計画が杜撰な例はこれにとどまりません。例えば北山についても地下鉄烏丸線の乗り入れに際して若年層を引き寄せる街づくりを志したものの途中で断念、南部に新都心を作る案も暗礁に乗り上げています。もう一度、市域全体での成長戦略を描くべきです。



都市計画とリンクし合う交通問題について。市営地下鉄の値上げに示唆しているものの、利用客が少ない理由がその運賃の高さにあるのに、さらに値上げするというのも理解しづらい考え方です。

地下鉄東西線は市内中心部の東西交通の円滑化と、京阪京津線沿線(山科以東)から京都市街地(特に三条・四条)への直通が開業の2大目的となっています。市街地にとっては97年に開業した京都駅ビルに対してトラフィックで対抗できる唯一のビックプロジェクトでしたが機能せず、結果としてJR京都駅に利用客が流れた理由は、地下鉄開業による大幅値上げにありました。(三条〜浜大津間、東西線開業前:300円・東西線開業後:390円)

こういう理由をひとつひとつ考えれば、京都市の将来を見据えた際に、必ずしも値上げが最大の効果をもたらす施策とはいえないことが見て取れるのです。


3.計画の伝わりづらさ

8/10カンテレOA「報道ランナー」より。
市役所内部のリストラ策が報じられていない。

京都市では独自施策の見直しを行財政政策の一丁目一番地に据えていますが、おもに負担が集中するとみられるのが子育て世代と高齢者となりそうです。保育園への補助金見直しでは保育士の削減に繋がりかねず、待機児童問題など別の課題をもたらす可能性もあります。子育て世代は市税収入を考えた際に最も誘致したい層ですので、引き続き手厚いサービスを期したいところです。



以上のNHKの報道によると、今年度からの5年間で職員数を550人以上削減するという思い切った案が提示されています。住民サービス低下やむなしという状況には理解しつつも、論理の立て付けとして、先ずは市役所が思い切って身を切り、それで足りない部分について市民に負担をお願いする、という内容としていかに伝えることができるのか。京都市は市民の協力なくして行財政改革は成し遂げられないことを肝に銘じ、市民が理解、そして協力しやすいメッセージの発信に努めて頂きたいと念じるところです。