西尾仁左衛門宗次と言う人物 | 面白きコトも無き世を面白く…するのは自分の心意気
~真田まつり~

毎年の真田まつりに披露される『決戦劇』

決戦劇を演出する殺陣頭から連絡を受けたのは今年の始め頃でした。

『西尾仁左衛門を登場させたい。』

私はその一言に気が付いたら参加希望をお願いした。

西尾仁左衛門(にしおにざえもん)

いったい誰?と思った方も今回の決戦劇を観た方では多かったのではないでしょうか?

簡単に説明すれば
真田信繁(幸村)を討った
とされる人物です。

しかし、その人物像は現代に非常にイメージが悪く伝わっています。
たぶんネットで調べるとあまり、というか全然良い評判は出てこないでしょう。是非これを読む前に一度調べてみてください。
嘘つきであったり、恩賞欲しさに自分の活躍を大袈裟に話したり…

幸村公の光があまりに強いため、その陰を一身に背負わせられた感じがあります。

今回の『残桜』では農民上がりの人物像でしたが、実際は違います。

西尾家は現在もそのご子孫がいらっしゃいますし、Twitterでは今回の西尾隊について遊び心を入れた紹介もしていますが、歴史的な故人を演るにあたり、失礼の無いように出来うる限りの勉強をして挑ませて頂きました。

新たな資料などが出ればまた新説が出てくるかもしれませんが、ここでは西尾殿の研究をされている長野栄俊先生の論文を参考にし、その人物像を抜粋してではありますがご紹介したいと思います。

少し長くなりますが、今回の決戦劇で少しでも興味を持たれた方がいらっしゃいましたら是非一度目を通して頂ければ幸いです。

西尾仁左衛門 
元武田家家臣。
高天神城が徳川家康公に攻められ落城する。
この時武田軍はほぼ全滅に近い被害を受けますが、その中の生き残りの一人だったようです。

そこから約10年間所在についての資料はなく不明ですが、牢人かいくつかの家を渡り歩いていたであろう頃、その活躍を耳にした結城秀康公(徳川家康公次男)に家臣として登用されます。

先方役を命じられ、それを誇りとし、常に先陣を担っていたそうです。
つまり、戦では常に最前線にいました。
その活躍が認められてか、西尾は着実に加増されて福井藩でも扱いは中の上くらいの武士でした。

大坂の陣にも当然のごとく先方として出陣。
越前松平家の鉄砲衆21人の頭の一人でした。
西尾隊に配属されたのは30人。

冬の陣では真田幸村公の築いた砦『真田丸』を直接攻めています。
真田丸に対して左翼から攻撃。
西尾自身
『塀に取り付くも兜に槍傷をもらう』
と言う感じの内容の資料が残っています。
この戦いで徳川方から出た死者は一万人を越えるとも言われています。

冬の陣で目立った活躍の無かった西尾隊は夏の陣で奮起し、めざましい活躍をします。

夏の陣では15000を越える敵将の首をあげたとされる徳川方。
その総数の中で4000が越前松平家のあげたものとされてます。
そのうち西尾隊は13の首をあげ、越前松平家でも16番目の活躍だったと言う資料があります。

これに加え、西尾隊は幸村公の首もあげたとされており、一介の名も無き武士が大手柄を上げた事を好ましく思わない人も多かったのではと思われます。
それは噂になり、やがてその噂が物語になり、今に伝わっている部分も多分にあるかと思います。

しかし、経歴上、西尾仁左衛門と言う人物は歴戦の武士であり、その後、福井藩の重臣としっかり明治までその家名を残しています。

そして何より、西尾家では大坂の陣から400年に渡り、幸村公の御霊(具足とも言われています)を弔うために建てた

『真田地蔵』

を大切にしています。
現在、そのお地蔵様は福井市の郷土資料館に展示されています。



ある資料では西尾は虚言の癖があるなどと評されていますが、福井県の資料では物静かな男だったと評されてます。真逆ですね(^_^;)
人間なんで色んな顔があるとは思いますが、どれが真実であるかは今となっては分かりません。

ただ、悪評があるのをおそらく自身も知りながら、それでもなお、討った相手の御霊を長年に渡り大切にしてきた方が本当に今に残る悪評ばかりの人だったのでしょうか?

私はそう思えなかったんです。あくまでも個人的な感情ですが。

なので今回、私は決戦劇『残桜』でそのイメージに一石を投じたかったんです。
おそらくこの400年で初めての西尾像だったのではないかと思います。
正しい正しくないは実際に会ったことがないので分かりません。

私のような得たいの知れない素浪人が勝手なことをしただけですが、それでもこれを読む人が一人でも増え、興味を持つ方が少しでも増えたならいいなぁと思っています。

そんな私の我が儘を聞き入れてくれた『決戦劇』関係者の皆様に本当に感謝しています。

今回の決戦劇を観て少しでもこの
西尾仁左衛門宗次(にしおにざえもんむねつぐ)
と言う御仁に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、機会があれば是非このお地蔵様に手を合わせに行ってみてください。