レアアース輸出規制への日本の対応力の強さとは
(私)「前回2012年、尖閣諸島問題に端を発した中国のレアアース輸出規制に懲りて、以後再びそのような事態が生じても耐えうるように国も企業も様々な備えをしてきており、それにかなりの効果が期待できる、そのことや。」
(妻)「それってさっきの野村総研の話題の中で出ていた『調達の多様化』や『代替技術の開発』、『リサイクルの促進』や『備蓄の増強』のことじゃないの?」
「そうやその通り。それにその他に『とっておき』もある。」
「なんやそれ?」
「その話の前に、もう少し具体的に見ておこか。」
「はいはい」
「調達の多様化については、アメリカはもちろん、オーストラリア、ベトナム、タイなど各レアアース産地に広げ、またオーストラリアやカザフスタンなどとは鉱山開発などの分野で連携を強化してるんや。」
「なるほど」
「代替技術については、『大同特殊鋼』や『プロテリアル(旧日立金属)』、『トヨタ』などが、EVが必要とする磁石を、レアアース無し、あるいは大幅削減して作ることに成功しているし、またそれを活かすモーターを『ホンダ』や『トヨタ』、『日立製作所』、『ジェイテクト』、自動車部品メーカーの『Astemo』などが開発している。『デンソー』など他企業も続々と開発中や。」
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「日本の技術力、恐るべし!」
「リサイクルについては、『信越化学工業』『AREホールディングス(旧アサカ理研など)』『プロテリアル(旧日立金属)』他リサイクル技術が高度化していて、採算ラインの価格でさえあれば、いくらでも増産は可能らしいんや。」
「いわゆる『都市鉱山』ってやつやね。それにしても中国の国家ダンピングはいやらしいね。本来なら採算割れも甚だしい価格やゆうやない。」
「実はその価格について、こういう話もある。片山さつき財務大臣曰く、『300万円のEVで使っているレアアースは数千円程度。調達コストが高いリサイクルに置き換えたところで5倍ぐらいしか変わらない。つまり1000円が15000円程度なので十分コストとして吸収できる』と。」
「なるほど」
「それにこの1月12日、ワシントンで開かれたG7会合で、片山さつき財務大臣が『いつか日本のようになるかも』と発言し、中国への対抗措置として『最低価格制度』を提案した。
これは、中国のルール違反の『補助金』や『環境破壊』、『人権無視』などによって生み出される『健全な市場価格を無視した不当に安い価格』でレアアースを買わないようにしようということや。中国産を締め出す「新市場」構想ともいえる。
各国の代表者もこれを支持し、トランプ大統領も乗り気で、早速検討を指示したようや。
『レアアースの対中依存度をスピード感を持って引き下げていくということがほぼ合意になって、非常に有意義であった』と報告してくれた。」
「片山大臣、頑張ったはるね。」
「そんなこんなで、リサイクルの技術の高度化は進んでいるが、今までは中国産が安いからリサイクル生産が進んでいなかっただけや。中国産が入ってこなくなれば、リサイクル生産が伸びることになる。」
「そういうことやね」
「そして『備蓄の増強』。繰り返しになるけど、国内備蓄は官民合わせれば2~3年分はあると言われている。だから短期的な影響は出にくいはずや。」
「で、とっておきと言うのは?」
「それは、南鳥島沖の『レアアース泥』や。今月12日に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が清水港(静岡市)から出航し、現在この試験採掘が行われている。」
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「そのニュース、聞いたことあるわ。なんでも相当量のレアアースが海底に眠ってるとか」
「そうや、日本の年間使用量の230年分ほどのレアアースがあるらしい。それに中国産のレアアースと比べ、20倍の濃度がある上、放射性元素の含有量は極端に少ないらしい。だから希塩酸で容易に抽出できる。環境負荷が少ない上に、抽出コストも格段に安くつく。」
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「すごい!」
「今回の試掘も、他所で成功しているので、失敗はほぼないとされている。これがうまくいけば、早くも27年から商業化に向けた本格的試験開発が行われる予定や。さらに高市総理からもっと急げと指示が出ているらしい。」
「良いこと尽くめやねんけど、果たして中国がこのまますんなりやらしてくれるやろうか? 心配やわ。」
「そう、その心配がある。やつらの空母が以前から南鳥島近海をうろうろしてるからな。
そこで安全保障上の万全を期すために、米国の資源メジャーを参画させるプランもあるようや。採掘に米国企業が絡むとなれば、米国政府の保護を受けることになるし、危険地帯での採掘が日常の資源メジャーは、自己防衛のために独自の軍事力も持っている。」
「でも、アメリカに権益を渡すことになるよね。」
「一部権益を渡してでも安全を確保すべきということやろな。」
「無法で人でなしの中国を相手にするんやから、それぐらいは必要か…でも、日本が独占できず、ちょっと残念。」
「いやこれは、決まった話ではないで。そういう話もあるということや。」
「もうひとつ心配は、在庫とも関係するけど、そうした日本産レアアースが、いろんな意味で間に合うのかってことや。」
「確かに精製が商業化するまでには5年以上かかるという。中国の出方次第では間に合わんな。」
「そうやろな。」
「もともと南鳥島のレアアースだけで一点突破するには無理がある。確かに豊かな資源があるとはいえ、世界の需要を満たすほどには無いし、必要なレアアースの種類がすべて揃っているわけでもない。」
「おいおい」
「それでも、南鳥島のレアアースには、中国の脅しを相当程度無力化する効果はある。
その上で、さらにこちらには対中国の強力な外交カードもある。いざとなれば、それをぶつける手が残されている。」
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「なにそれ。」
「たとえば『高品位フォトレジスト』。高性能半導体生産に欠かせないものや。日本のシェアは90%にも上る。さらにそれ以上に、こちらも半導体を作るのに欠かせない『ABFフィルム』。これはあの『味の素』が製造しているんやけど、なんとシェア100%。まさに独占状態。これらを止めると中国の半導体生産は一発でアウト。そう易々とマネできる技術やない。」
「なるほど、それを駆け引きの材料にしようと。」
「いろいろ語ってきたけど、中国のレアアース輸出規制への日本の対応力は、前回の規制時と違い格段に強くなっている。それにさきほどのG7の話や。早速関係各国が脱中国(依存)を意思統一し、その早期実現に向け連携を強化する算段や。良い感じになってきたで。」