前回宮城県の行った水道事業の民営化について、そこに外資が入っていることだけが問題なのではなく、民営化自体が問題だとしていました。それはなぜか?
(私)「民営化の対象が水道という『ライフライン』やからや。
そもそも企業(株式会社)は金を儲けて株主に配当するのが使命。赤字になるなんてのは論外。その企業が絶対的な需要がある水を手に入れたんや。ひとは水なしでは生きていかれへん。
それを人質に、水道料金は値上げするわ、『水質』や『安定供給』を放り出してコスト削減に走るわ、儲けの為やったらやりかねへん。
地域の水道を独占することから、住民に選択肢がない。そやから民営化で期待する競争原理なんてのは働きようもあらへんしな。」
(妻)「そうならないように契約とかで縛ってるんやないの?」
「契約がどうあれ、『いくらやってもこれ以上は無理です』って言われたらどうしようもない。」
「そんなこと言うんやったら、『他の会社に代えるで』って言うてやったらいいねん。」
「『そうですか、一方的に契約を解約されるなら、違約金をいただきます』ってなるやろな。
莫大な金額やで、なにせ長期契約やからな。
違約金を支払ったうえに、新しい引き受け会社を探すことになる。でもおそらく民間はどこも五十歩百歩、結局最後は再び役所が事業をする羽目になる。
いずれにしろドタバタでコストが嵩み水道代は上がざるをえんってことや。それに、役所がすんなり業務を引き継げるとは限れへん。」
「どういうこと?」
「丸投げした期間にもよるけど、役所側にその業務ができる人材やノウハウが無くなってしもてるからや。」
「そういうことか。あかんやん。へたしたら水道が止まってしまうやん。」
「そういうこっちゃ。だから、ライフラインだけは民営化したらあかんねん。いくら契約で縛っても、結局ライフラインが人質となり、企業のやりたい放題にされてしまう。」
「ましてそれが外国企業やったら、日本に一切の遠慮が無いから国内企業よりドラスティックやろな。それに政治的に利用される恐れもあるってことか。安全保障の問題があるんやね。」
「その通り。」
「そやけど、そうした心配は単なる可能性の話で、実際にはそれほどのことにはならんのと違うの?」
「いやいや、とっくにそんな実例があるから可能性の話やないねん。既にして、起こるか起こらへんかではなく、いつ起こるかの問題や。」
「どんな実例?」
「これはつい最近の日経新聞の記事やけど、元祖民営化、サッチャーの英国での事案や。」
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
小さな政府サッチャリズム、英国が転換へ 「大悪臭」水道に国が介入
2025年8月8日 日経新聞
英国の民営化政策が転機を迎えている。水道などのインフラ部門は投資不足でサービスが劣化し、鉄鋼をはじめとする製造業は地盤沈下が続く。サッチャー政権で世界に先駆けて民営化や自由化を推し進めた新自由主義の本家が官の関与を強める経済政策にかじを切る。
(中略)
イングランドの川や海への下水放出は2024年にのべ361万時間と過去最長にのぼった。投資不足の下水道システムが機能不全で汚水を処理しきれず、雨水とともにたれ流す。
投資の停滞を招いた一因がサッチャー政権下の1989年に実施した民営化だ。
最大手「テムズ・ウオーター」は2006年にオーストラリアの投資銀行マッコーリー率いる連合の傘下に入ると、株主への配当優先で必要なインフラ投資に資金を回さなくなった。不正な下水処理に伴う罰金も相まって債務が膨らみ、再国有化が取り沙汰される。
政府は独立委の改革案を基に水道会社の財務や買収、水質などを監督する強力な規制機関を設ける。水道管の老朽化対策や下水施設に今後5年で1040億ポンド(約20兆円)の投資が必要とされる。家庭の水道代の大幅な上昇は避けられない。
(中略)
英国民の多くはインフラの再国有化を望んでいる。ユーガブの24年6月の世論調査によると、82%が水道の国有化を支持した。鉄道は76%、エネルギーも71%が国有化すべきだと答えた。料金の上昇やサービスの質の低下にうんざりしている。
民営化や自由化は当初、コスト削減などのプラス面が目立った。ただ短期的な利益追求が投資を鈍らせた。老朽設備を使い続けることでサービスは悪化していった。
英グリニッジ大学のデビッド・ホール客員教授はサッチャー政権の民営化政策について「民間が官より効率的だというのはフェイクニュースだった」と結論づける。
(後略)
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「これは、民営化の総本山ですらこんなことやという事例や。ただし、英国の水道事業は完全民営化でコンセッション方式ではなかったんやけど、実は『コンセッション方式』でも同様の事例が多発してるんや。AIに尋ねるとこんな答えが返ってきた。」
次回に続きます。