(妻)「ちょっと気になること言うたね、お父さん。あの福島第一原発事故を支持率回復のために使おうとしてたって。」
(私)「そう取られたって仕方がないことをしてるんや、菅直人は。」
「具体的には?」
「現場が必死の対応をしている時に、わざわざ一国の総理が現場視察に出掛けた。
これは本来、すべての情報の中心に鎮座し、事態全体を冷静に捉え、的確な判断と指示をする、そうした役割のはずの最高指揮官が、事態の最中にやってはならん行為や。
職務放棄だけやなく、現場を混乱させ、その手を止めさせてしまうのが目に見えてるからや。
しかしそれをやった。つまりこれは、あまりの事態に気が触れたか、こうしたことを度外視してもやりたかったってことや。」
「でも菅さんの言い分は、東電はベントをやると言っておいてやっていない。その報告も無ければ、遅れている理由を聞いても答えが無い。だから現地に行って確かめたい。そんな風なことを言ってたんとちがう?」
「よう、知ってるな。菅さんは、自身の公式サイトで次のように語ってる。」
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官邸は12日1時30分、海江田万里経済産業相名で正式にベントの指示を出しました。
(中略)
ところが、そのベントが始まったという報告が来ません。東電は「やる」と言っているのに、なぜやっていないのか。その理由を聞いても即答できず、回答が来るまでに時間がかかりました。さらに、その回答に対して再質問しても、やはり即答できません。
とにかく、震災直後から、私のもとへは確かな情報がほとんど来ませんでした。
(中略)
官邸の指示が現場で対応にあたっている人たちに本当に伝わっているのか、それさえ分からなかったのです。
物事を判断するには、指示がしっかり当事者に伝わることが大切です。現地の責任者と直接話をしなければならない。そう強く思いました。それで、短時間でも現地に行こうと決めたのです。
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「菅さんはこうは言ってるけど、実際に現地視察を決定したのは、『ベントの指示を出す前』。12日の午前1時18分に官邸で開かれた緊急災害対策本部で決定されてたんや。」
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「なんやそれ、ベントの遅延理由がはっきりせず、意思疎通がままならないので現地に行こうとしたんとちがうんかいな。」
「そういうことや。ベントの遅れを理由にしたのは後付けや。最初から現地に総理が出張り、命を張って原発事故と闘っている姿を国民に見せつけたかったんや。
だから報道用のビデオカメラを積み込み、現地に最初に降り立つところをカメラに収めるのにわざわざ時間を割いとる。
同行していた班目春樹原子力安全委員会委員長は、原発の危急存亡の闘いのさなかに、『まず撮影を』という神経に当人の常識を疑ったぐらいや。※」
※「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫)
「なるほど、端からパフォーマンス狙いか。」
「当時菅政権の支持率は地に堕ちとった。普天間基地問題の迷走、消費税増税表明、尖閣沖中国漁船衝突事件のまずい対応、それに外国人からの違法献金問題。こんなことが続いたからな。」
「未曽有の危機、原発事故を解決した頼れる男、菅直人。それで支持率爆上がり!…って、はぁ⁉やね。」
「総理の突然の現地視察にどれだけの人手が取られ、余計な混乱を招いたか。
現場はそうでなくても極限状態で余裕ゼロや。
当時経産省副大臣で、現地対策本部長だった池田元久氏も菅総理の大局観の無さや常識の無さに呆れてたようや(※)。
このことが仇になり、後の『水素爆発』を招いたと言われても仕方がない。以後、あれは菅直人による『人災』、そういう批判に晒され続けることになる。自業自得やな。」
※「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫)
次回に続きます。