医師不足を招いたのは、実は財務省のせい(前回の続き)
(私)「かつて日本は医師の充実を図ろうと取り組んでいた。1970年代のことや。当時も医師不足が深刻でこれを解消しようとしてたんや。
人口10万人あたりの医師数150人を目標に、「一県一医大構想」の実施や私立医学部の新設をやり、その結果、医師数は順調に増加し、ついに目標も達成したんや。」
(妻)「それがなんでまた今医師不足になってんの?」
「それはまず、78年の大平正芳内閣からや。ガチガチの財政健全化政権で、増大する社会保障費、特に医療費が財政を圧迫してる言うて、問題視しよった。「医療費亡国論」まで唱えられたんやで。
実際は、選挙への配慮等政治的判断で見送られたんやけど、医療制度改革の道筋だけはつけよったんや。」
「大平正芳さんっていうたら、蔵相時代に赤字国債の大量発行を悔やんで『万死に値する』とか、総理になってからも『将来世代にツケを残してはならない』という今ではおなじみのフレーズを発言しはったひとやろ。」
「よう知ってんな。日本人に誤った財政問題を植え付けた元凶といってもいい人や。」
「この人から日本が間違って行ったんやな。」
「元大蔵官僚やし、『宏池会』やし…創立した池田隼人を除き、碌でもない連中を排出してる派閥の出身や。大平正芳、鈴木善幸、宮澤喜一、河野洋平、岸田文雄…」
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「うわっ」
「次の80年からの鈴木善幸内閣では、大平内閣の意思を継いで、『増税なき財政再建』をスローガンに、医療費の削減を強烈に推し進めよった。『増税なき』とは、歳出削減を徹底するぞということや。」
「もしかしてこの時、ほら土光さんが活躍しはったんと違う?」
「そうや、よう覚えてるな。81年に増税なき財政再建を目指し、行財政改革を推し進める上で、総理の諮問機関として第二次臨時行政調査会が設置された。
そこの会長にと、石川島播磨重工業や東芝を再建した実力を買われた土光敏夫さんが抜擢されたんや。その土光臨調が、社会保障費、特に増大する高齢者医療費にメスを入れることを提言した。」
「ほんで従来無料だった70歳以上に、医療費の自己負担が始まったんやね。」
「その地位からすれば、あまりの質素倹約な生活ぶりから『メザシの土光さん』として広く親しまれた土光さんも、間違った財政観を持ってたんやな。家計の常識を国家財政にも当てはめてしまいはったんや。」
「借金は悪ってやつやね。」
「そう、しかも国債は実質的に借金ですらない。国債発行は貨幣発行や。そういう理解が当時は全くなかった。まあ、今でもまだまだやけどな。
とにかく財源は税収、財政赤字は悪、そういう頭の時代や。そもそも経済学が間違ってるからそんな風に家計も財政も一緒くたに考えてしもたんや。」
「なるほどね。」
「いずれにしても土光さん得意の経営手法を、国家財政に援用したらあかんかった。」
「で、医師の数についてはどうなったん?」
「将来的に医師が過剰になるという見通しが立てられ、82年の閣議決定で『医師数の抑制』が必要とされてしもたんや。」
「なんか歳出削減には都合の良い見通しがでてきたんやね。」
「そういうことや。実に都合がいい。」
「それで医師削減がされていったと。」
「実は、それで終わりやないねん。今度は97年の橋本龍太郎内閣の時に、やはり『財政構造改革』の一環として医療費削減のために『医師の新規参入をさらに1割削減する』という目標が立てられ、一層の医師削減が閣議決定されたんや。」
「なにそれ」
「またしても医師過剰見通しが出されたんや。20年後の2017年ころから医師が過剰になるというもんや。ほんで医師数削減に拍車が掛かったと。この判断が現在の「医師不足」や「地域・診療科による偏在」の直接の原因になっとる。」
「しかし毎度毎度、政府にというか財務省に都合の良い見通しが出てくるもんやね。」
「そこや問題は。まずその見通しというのは、ザックリ言えば、高齢化は進むけど、国民の健康水準は向上するから、医療需要は抑制されるというもんや。
だけど実際には、予想以上のスピードで高齢化が進み、また先進医療に対する新需要も生まれ、医療需要は減るどころか膨らむ一方やった。」
「なるほど。」
「この外れ方からして、当時の見通しにはやはり意図的なバイアスが掛けられていたんじゃないかと多くが疑いをもってる。つまり、わざと医療需要を過少に見立て、医師数を過剰に見せたってことや。」
「財政再建最優先へ向けて、結論ありきの操作があったということやね。」
「そもそも医療費抑制のために、医師を削減するっていう発想自体がおかしいやろ。
そんな都合よくみんなの健康水準が上がり、医療需要が減るわけはないし、見通しが外れたり、想定外の危機が起こったらどうすんねん。
結局それは、最初から財政再建のための『患者切り捨て論』でしかないんや。」
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「ほんまやな。国民の命より財政って、政府として本末転倒も甚だしい。むしろほんまは、コロナみたいな想定外の医療危機に備えて医師や医療施設に余裕をもっとかなあかんはずや。
で、結局医師不足の実態はどんな感じ?」
「人口1,000人あたりの医師数でみると、OECD平均3.5人に対し、日本は2.4人。かなり少ないな。それだけやないで、『医師の偏在』がきつい。場所の偏在と診療科の偏在や。
おかげで、地方や中小規模の病院、一部の診療科が医師不足で難儀なことになってるんや。それに『女性医師が増えたこと』も新たな問題となってきた。」
「女性であろうと医師の増加は歓迎せなあかんやん。」
「もちろんそうや。ただ、女性特有の事情、つまり、出産・育児で職場を離れることがついて回る。その間、診療はでけへんようになる。そういうことや。」
「それは仕方ないよね。」
「結局、医師の絶対数が増えるだけじゃ問題解決にならないということもあんねん。それでも今は、とにかく絶対数を増やさんとあかんねんけどな。
それにしても財務省は罪を重ねよる。まさに『罪務省』や。
今回の話は財務省が、病院を潰し、医者を減らすという医療安全保障を蔑ろにした話やけど、とにかくすべての安全保障を壊しまくっとおる。
防災、防衛、食料、エネルギーはもちろん、医療、物流、科学、技術開発、教育…とにかく国の安全、成長に関わるあらゆる分野においてカネを削ることで足を引っ張りよる。
今の財務省の存在自体が『諸悪の根源』ということや。
自分たちの欲得のために嘘の財政破綻論を広め、国民の命、安心、成長を犠牲にする財務省は、まさに『国賊』。そう言われてもしゃあないやろな。」