愚民化した日本 (5) ザル法 「重要土地等調査法」 | 子や孫世代の幸せを願って

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愚民化した日本 (5) ザル法 「重要土地等調査法」

 

2021年6月16日成立、同23日公布、2022年9月20日に全面施行された「重要土地等調査法」。これは安全保障上重要な施設や国境離島等の機能を阻害する土地・建物の利用を防止するために設けられたものでしたが、早くもその「ザルっぽさ」が露呈しています。

 

23年2月、沖縄本島北方の無人島、屋那覇(やなは)島が中国資本により買収されたのです(島の半分程度)。この島は「重要土地等調査法」のいう国境離島には該当せず、同法の対象とはなりません。しかし、同島は米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古までは直線で約43キロの距離にあり、安全保障上の懸念は十分存在するのです。政府も同島について「動向を注視する」と警戒感を示すも、事実上お手上げです。

 

「屋那覇島の事案をきっかけに国民の間で不安や懸念が高まっている。現行法の対象の拡大も検討していかなければならない」。23年3月7日、自民党の「安全保障と土地法制に関する特命委員会」で、同法の見直しが言及されています。(2023/3/10 産経新聞)

 

なにがどうザルなのか。

 

①まず土地の「取引規制」ではなく、国の調査による「利用規制」に止まるということです。

 

土地収用はもとより強制的な立入調査もありません。一応、安全保障上の重要地域「特別注視区域」においては「土地取引の事前届出」義務が課され、違反すれば罰則がありますが、そこにおいてすら「売買は自由」であるということです。

日本の不動産登記制度では、国籍記載が求められず、更新は任意としています。これでは敵性国家の悪意ある取引の実態は追いきれません。

 

 

②次に対象範囲が狭すぎるということです。

 

国境離島や防衛施設周辺に限られること。それになぜか、すでに大量買収が顕在化しているにもかかわらず森林・農地が対象となっていません。さらに特別注視区域から市街地が除かれています。そして「周辺」といってもたった「1キロメートルの範囲」です。

100マイル(概ね160㎞)を対象とする米国との差はいったいなんなのでしょう。

市街地を除くという点で言えば、日本防衛の中枢「防衛省市ヶ谷庁舎」も、特別注視区域の対象にはならないということです。

 

外資による国土買収を取り締まる法ができたことはとりあえずの一歩としても、遅すぎ、緩すぎでため息が出ます。結果冒頭の事例です。これではザルと言われても仕方ないでしょう。

 

そもそも外資による国土買収の遣りたい放題は、実はかつて日本が結んだ国際協定に原因があります。日本は世界貿易機関(WTO)協定の一部「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS)に加盟する際(1994年)、外国人等による土地の取得及び利用をオールフリーとしました。「外資を呼び込みたい」、つまり安全保障よりも経済優先の判断だったとされています。反日国家ばかりを近隣に抱える日本なのに、なんと能天気なことでしょう。

 

それじゃぁ、その協定を結び直せば良いと普通そう考えるのですが、役所が抵抗します。

この国際協定見直しには、WTOの閣僚会議で4分の3以上の承認を貰う必要があり、160を超える国々や地域と個別に再交渉しなければなりません。その外交に係る膨大な手間とエネルギーをもって事実上不可能と外務省等は受け付けないのです。

またこの協定の「内国民待遇」規定により国籍を理由とした内外差別的な立法を行うことも原則認められていません。そうしたことから彼らの口からでるのは「だから、外資による買収はなんともできません。」

 

しかし、実際には日本と同様の協定内容であっても、「取引制限」をしている国家が存在します。WTOルールの「安全保障に関わる例外規定」を根拠に、イギリス、フランス、インド、シンガポールなどは、安全保障上の懸念がある場合には外資による土地取引や取得を規制をしているのです。

 

こんなことは当然役所は知っているでしょう。しかし「面倒くさい」「人手が無い」ので政治家には正しい情報を与えず、「無理」で押し切ろうってことでしょうか。

 

役所にとっては緊縮財政により人員が削られ、作業の電子化、合理化も遅れ、とてもじゃないが面倒事は御免蒙りたい。国家の危機より目先の都合が本音でしょう。ここにおいても緊縮財政と愚民化が、幅を利かせているようです。

 

 

次回に続きます。