失われた30年をもたらした失政の結果(8)  底辺への競争と移民政策 | 子や孫世代の幸せを願って

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失われた30年をもたらした失政の結果(8)

底辺への競争と移民政策

 

 

①底辺への競争

新自由主義が広がる中で、ヒト、モノ、カネ、情報が国境を越えて自由に移動できる自由化、また市場化競争原理の導入が世界的に進められてきました。

そうすれば地球規模での効率化が達成され(非効率なものが淘汰され)、世界がより豊かになるというのです。

いわゆる「グローバリズム」というものですが、わたしには、多国籍企業とそれに癒着する先進国政府また覇権主義国が弱肉強食政策(新たな帝国主義)を押し付ける屁理屈としか思えません。

 

それはともかく、グローバル化が進む中、企業は、手っ取り早く利益を上げる方法を手に入れました。

国外の安い労働力に目を付けたのです。

その国に行って生産する。あるいはその低賃金労働者を国内に招き入れ雇用する。

そうすることでコストを引き下げ利益を上げるのです。

 

これは先進国の労働者にとってはたまったものではありません。

内外の労働者間で競争が始まり、当然賃金の高い先進国労働者が労働需要を奪われ、賃金引下げや失業に晒されるのです。

 

日本では、緊縮財政により内需を失った企業は、大きな需要と安い労働力が期待できる中国や東南アジアに逃げ、一方、国内では、派遣労働や外国人雇用などの労働規制緩和が進むなど、「底辺への競争」が、日本人労働者に四面楚歌を招いているのです。

 

 

 

②人手不足と移民政策

現在の人手不足は、やはり30年に亘る経済の長期停滞(長期デフレ)によりもたらされたと思われます。

 

既に述べた①少子化、貧困化による生産年齢人口(15歳から64歳までの労働力となる人口)の減少とともに、②東京一極集中地方の衰退による生産年齢者の偏在、③公共投資の削減による土木・建築会社数の減少、同技能者・技術者の減少、また自由貿易の犠牲となった農業従事者の減少等の人手不足の偏在は、産業政策の失敗が主因でしょう。

 

その結果、不足を埋めるべく外国人労働者受入れの規制緩和が行われ、その数は2022年10月には182万人となり、ここ10年ほどの間に4倍にも達しています。

 

かつて日本の高度成長期も現在以上の人手不足でしたが、当時は企業の設備投資によりそれを乗り越えました。

投資が投資需要を生むと同時に生産性向上を果たし、企業利益が拡大、賃金上昇、消費需要拡大、そしてまた投資拡大といった経済の黄金循環を生み、それが世界の軌跡と呼ばれた日本の高度成長を形成したのでした。

 

今回の人手不足もそうした形で乗り越えるべきでしたが、デフレの上に、緊縮財政がさらに内需を潰すことから投資を本格化できず、また新自由主義(グローバリズム)や株主資本主義が、「効率」や「競争」を理由に短期での儲けを求めることから、「底辺への競争」を促し、外国人労働者受入れに流れているのです。

そしてまたこのことが、人手不足にもかかわらず賃金上昇が本格化しない背景ともなっています。

 

政府は「移民政策」ではないとしていますが、誰もそれを信じていません。規制緩和が進み、事実上の移民政策が実施されています。

心配されていた外国人による治安悪化や文化破壊のニュースが増えてきました。

欧州は移民の大量受け入れにより、自らその文化や価値観を失う道を選んだとの「欧州の自死」(ダグラス・マレー著)というベストセラーがありますが、まさに欧州は移民受け入れの失敗により立ち往生しているのです。それを見ながら、同じ轍を踏もうとする日本の政治が理解できません。