以前は香港に駐在している商社マンや銀行員の中には、会社の指示で広東語を学んでいる人もいました。しかし、現在ではもう、その様な人はいないと思われます。上海語はあと3、40年でほぼ消滅してしまう可能性が高いです。香港で話されている広東語と台湾で話されている閩南語(びんなんご)も当面は無くならないですが、100年後は分かりません。仕事で中国語が必要な人は、今後無くなってしまう可能性が高い言語は学ばないでしょう。しかし、私は違います。仕事で中国語が必要なわけではありません。私が学びたいのは、文化です。生きた文化である中国語の方言を文化遺産として保存しておきたいと考える人は中国語学習者の中でも、それ程多くはないと思います。私は中国オタクですから、そんな人も少しはいても良いんじゃないかと思っています。

古来より、漢民族と関わり合った民族は皆、漢化してしまいます。清朝は満州族の王朝ですが、清末には満州族の役人でさえも既に満州語を話せなくなっていました。数年前、日本在住の満州族女性と話したことがありますが、満州族でも満州語を話せる人は恐らくいないと思う、とのことでした。アイスランド語も古代英国語を踏襲していると、聞いたことがあります。文化の中には宗教もありますが、仏教は元々印度で釈尊が開いたことは周知の通りです。しかし現在、印度人の多くはヒンズー教徒か回教徒です。仏教はむしろ、東アジアや東南アジアで生きた文化として残っています。広東語は、大陸では消滅してしまっても、東南アジアや欧米の華僑社会では生き続けるかもしれません。         続く

 

 

上海語が中国では風前の灯火になっていることは、この前記しましたが、皮肉と言うか興味深いことに、上海を含めた中国全土では上海語のテキストは存在していません。しかし、日本では現在10種類前後の上海語のテキストが出版されています。確か以前に、蘇州語のテキストと上海語の辞書も見たことがあります。上海語以外にも広東語、閩南語(びんなんご)のテキストもあります。中国の国内には無いのに、日本では研究している人がいます。日本では、何の分野に関してでも専門に研究してる人がいて、しかもレベルが高いのです。

広東語は香港が、閩南語は台湾があるので現時点では無くなることはありませんが、50年後100年後も大丈夫かといえば、何とも言えません。日本語を学んでいる中国人がよく言うことですが、中国語ではひとつの漢字に対してひとつか精々ふたつ位の発音しかないのに、日本語では幾つもの発音があるので大変覚えるのが難しい。と、言う中国人が多いです。確かにその通りですが、日本語ではひとつの漢字対して幾つもの発音があるのには理由があります。先ず、訓読みは古来からの大和言葉ですが、音読みには漢音、呉音、唐音など何種類もの発音があります。それぞれの発音は漢代に輸入された発音、三国志時代に呉の国より輸入された発音、唐代に輸入された発音等どの時代に輸入されたかによって違います。大陸ではもうずっと以前に使われなくなった発音でも何千年の時を経て、日本で生きているのです。着物を呉服と呼びますが、それも三国志時代に呉の国から輸入された物なので呉服と呼びます。この呉服も、大陸にはもう残っていませんが、何千年の時を経て日本では民族衣装として残っています。 続く