心臓が口から飛び出そうな私ですが、
不安気な表情のまりこの前では
平気な顔をして
スタスタ歩く
妻の私
ラストオーダー間近に
何度か席を移動する
殺伐とした雰囲気の女性3人組
店員さんも察してくれたんだろうか
完全なる放置プレー
テーブルに、私の携帯と夫の携帯を置く。
真っ直ぐまりこの顔を見た。
マスクをしているから、
本当の素顔はわからない。
怯えた猫のような目をした女の子
そんな幼い印象だった。
「初めまして。
◯◯の妻です。」
「…」
「あなたをお呼びした理由はわかりますか?」
「はい」
「どんな理由ですか?」
「◯◯さんと、連絡をとった…、から?」
「あなたは会社を辞める気はありますか?」
「いえ、そんな。」
頭をブンブンふる。
「ここに夫の携帯があります。
消されている内容はありますが、業者に確認した所、復元できる箇所はあるそうです。
あなたの口から事実を聞かせてもらえれば、私は大事にするつもりはありません。
会社に出向くような真似もしません。
弁護士を立ててこのトラブルを長引かせたくないのは、あなたも私も同じだと考えております。」
彼女を前にして
一か八かの勝負だった。
「夫と、10回以上キスをしましたか?」
今にも泣き出しそうな顔をしながら
まりこは下を向く。
黙るということはイエスか。
私はこの時点で、頭が真っ白だった。
だって
キスは1回だけ
それを
本気で信じていたから
心の準備なんて
本当は
全くできていなかったから。
私は
感情を殺して、もう一度聞いた。
「キスは10回以上しましたか?」
彼女はうなだれるように
頷いた。
そして私は
次の質問をした。
震える声だったと思う。
「5回以上、夫とセックスをしましたか?」