家に着き部屋に入ると、さらに涙が溢れてきた。


彼から電話やメールがくる事を期待したが、それもない。

堪らずメールを打ち始めた。

今日の許せなかった事や、悲しかった事をメールに打ち込んだ。


すぐに彼から電話が…。

「ごめんっていってるじゃん。」

彼の言い方はイライラしていた。

どうしてこんなに冷たいの?

私は彼との今後を少し冷静に考えたくなった。

「わかった。もういいよ。」

そういって電話を切った。


次の日、彼からごめんねメールがきた。

ホッとした。

このままメールがなかったら、終わらせてしまってもいいと思っていたからだ。

でも、メールがきただけで簡単に笑顔にはなれなかった。


あの誕生日以来一週間ぶりに彼と会う約束をした。

彼がやってきた。

まだ機嫌が悪い私に、彼は小さいプレゼントを手渡した。

大きさからして指輪ではない事はわかったが、なんだろう??

開けてみると、以前欲しいと言っていたipodだった。


彼は彼なりに反省し、誠意を見せたのだと思う。

彼はとっても不器用だが、私の事は好きなんだと思う。

私も単純なのかもしれないが、彼をやっぱり好きなんだって再確認した。


30歳の誕生日。

仕事は休みだった。

彼は仕事を早めに切り上げ、夜はどこかに食事に行こうと約束した。


ここ数年、誕生日は特別な記念日ではなかった。

付き合いが長くなり、プレゼントをもらう事もなくなった。

ただ、今日は30歳という節目の歳。

何かサプライズを密かに期待していた。


駅で待ち合わせをした。

彼がやってきた。

そのまま地下鉄へ乗り、数日前に出来たばかりの話題のスポットへ行くことにした。


目的地へ着いた。

出来たばかりとあって、人、人、人。

食事をしようとしても、行列だらけだった。


誕生日。

食事もできず、なんだか悲しい気持ちになってしまった。

多少のサプライズの期待もあって、

「30歳の誕生日なんだから、予約くらいしてくれればいいのに…。」

私は彼に不満をぶつけた。

しかし、彼も予想以上の人の多さにイライラしていたのだろう。

私の言った言葉をきっかけに、抑えていた気持ちが爆発してしまった。


「こんなに混んでるなんて思わなかったんだよ。」

それを言った後、黙ったまま早足で歩き始めた。

「どこに行くの?」

返事はない。

そして、そのまま地下鉄の階段を降りていった。


人だかりの中言いたい事は沢山あったが、大声を出す事も出来ず、私も黙ったまま電車に乗り込んだ。

今すぐにでも泣いてしまいたい。

でも、電車の中で泣くなんてできない。

ただただ黙ったまま、地元の駅へ着くのを待った。


地元の駅へ着いた。

彼はイライラしながら、私の家へ歩き始めた。

人が少ない通り。

私は悲しい気持ちをぶちまけた。


今日は誕生日。

しかも30歳。

私にとっては特別な日だったのに、なんでこんなに悲しいの?

どうして?

私は涙が溢れ、まともに話す事が出来なくなった。

自分でも驚く程、次から次へと涙が止まらなかった。


自宅に着いた。

彼は、ごめんねと言って帰っていった。

冷たい、冷たすぎる。

私は納得できないまま家に帰り、納得できないまま誕生日が過ぎていった。

友達の結婚ラッシュも一段落した29歳。
まだ未婚の友達と集まっては、
「35歳までに嫁に行ければいいよねぇ。」
とのんきに話したりした。
しかし、その中の一人が30歳目前で電撃できちゃった婚をしたのだ。
私は少し羨ましく感じた。

もう9年も付き合っている彼。
たぶん何かきっかけでもなければ、結婚する事はないだろう。
相変わらず、結婚したいとは言うが、それに向けて行動する事はなかった。

親も、こんなに長くお付き合いしているのに、なんで結婚しないの?と不思議そうにしている。

30歳が区切りとなり、30歳を超えると結婚への焦りが薄れると聞いた事がある。
今まさにその状態なのかもしれない。
30歳を目前に、急に焦り始めてしまった。
でも、彼には何だか焦っている事を言えずにいた。

そして、何の変化もなく30歳の誕生日を迎える事になった。