30歳の誕生日。

仕事は休みだった。

彼は仕事を早めに切り上げ、夜はどこかに食事に行こうと約束した。


ここ数年、誕生日は特別な記念日ではなかった。

付き合いが長くなり、プレゼントをもらう事もなくなった。

ただ、今日は30歳という節目の歳。

何かサプライズを密かに期待していた。


駅で待ち合わせをした。

彼がやってきた。

そのまま地下鉄へ乗り、数日前に出来たばかりの話題のスポットへ行くことにした。


目的地へ着いた。

出来たばかりとあって、人、人、人。

食事をしようとしても、行列だらけだった。


誕生日。

食事もできず、なんだか悲しい気持ちになってしまった。

多少のサプライズの期待もあって、

「30歳の誕生日なんだから、予約くらいしてくれればいいのに…。」

私は彼に不満をぶつけた。

しかし、彼も予想以上の人の多さにイライラしていたのだろう。

私の言った言葉をきっかけに、抑えていた気持ちが爆発してしまった。


「こんなに混んでるなんて思わなかったんだよ。」

それを言った後、黙ったまま早足で歩き始めた。

「どこに行くの?」

返事はない。

そして、そのまま地下鉄の階段を降りていった。


人だかりの中言いたい事は沢山あったが、大声を出す事も出来ず、私も黙ったまま電車に乗り込んだ。

今すぐにでも泣いてしまいたい。

でも、電車の中で泣くなんてできない。

ただただ黙ったまま、地元の駅へ着くのを待った。


地元の駅へ着いた。

彼はイライラしながら、私の家へ歩き始めた。

人が少ない通り。

私は悲しい気持ちをぶちまけた。


今日は誕生日。

しかも30歳。

私にとっては特別な日だったのに、なんでこんなに悲しいの?

どうして?

私は涙が溢れ、まともに話す事が出来なくなった。

自分でも驚く程、次から次へと涙が止まらなかった。


自宅に着いた。

彼は、ごめんねと言って帰っていった。

冷たい、冷たすぎる。

私は納得できないまま家に帰り、納得できないまま誕生日が過ぎていった。