さて、帯広では決まって行くカレー屋がある。駅から歩いて10分くらい。
ここの特色はアルバイト従業員店員がたくさんいるものの、厨房の中でこまねずみのように働き、実にリズミカルにカレーを温め、盛り付けているのはただひとり、「店長」という、ひとりだけ黒地に白の名札をつけている、まさに店長だけだというところ。ほかの店員はどっちかというといつも所在なげに店長の働きぶりを見学しているといった体。…しかし、じつは僕は、この店長も非正規社員ではないかとにらんでいる。
しかし、彼の手際の良さは、見ててホントにホレボレする。踊るようにご飯をよそい、かたわら複数の鍋をあやつり、そこから流れるようにカレー・ルーをかけていく。
けっこうな歳なのにアルバイトじゃぁ、決して生活は楽ではないと思うが(アルバイト…というのはあくまで私の独断的推測だが。)、私は断言したい、彼は自分の仕事に自信と誇りをもってるにちがいない、と。
現代の日本経済を支えているのは、ゴーン元社長でもZOZOの社長でもなく、もしかしたらこういう非正規労働者たちなのかもしれないのだ(くどいようだが、彼が非正規労働者だというのは、あくまで私の推測です。)。
…肝心なことを言うのを忘れた。ここのカレーは、本当においしいと思う。とろみと辛みが絶妙。もちろんルーは工場でつくってんだろう。だからかもそれないが、実に安定した日本のカレーの旨味なのだ。
ただし、CoCo壱とかに比べたら、圧倒的にメニューの種類は少ない。ビーフカレー、チキンカレー、野菜カレー、シーフードカレー、カツカレー、エビカレー、ハンバーグカレー。これだけ。しかも、この日は野菜カレーとシーフードカレーが売り切れとのこと。私がエビカレーを頼んだのは言うまでもない。
だが、銀色のカレー皿の上に白いライスと濃厚なカレー、そしてその上に約13個のバナメイエビが、散りばめられたその一品は、壮観とさえいえた。そして、エビはただひたすらプリプリしてて、カレーによく合った。
「店長、ごちそうさん!」
私ははるばる北海道まで来てよかったと思いながら、クリスマスの景色の中をわざとやや遠回りしてホテルに帰った。
(つづく)
帯広に3時過ぎに着く。再び寒い戸外に出た。しかし、帯広の観光地も実はほとんどすべて制覇してたことに気付く。…となると、やはり当地の旧知の知人を訪ね、つまらぬ世間話にお付き合いいただこう…という運びとなる。
私は、帯広の老人ホームに入居されてるBさん、さらにはCさん夫妻を訪ねた。みな、いやな顔ひとつしない。ほんとに心の広い人たちなのだ。
それにしても、どうして、こう、知り合いという知り合いが、みな老人ホームに入ってるのか。高齢化社会の縮図をここ北海道で、実感するところとなる。
BさんやCさん夫妻と無駄話をしていたら、あっという間に北の大地には夜のとばりだ。
(つづく)
あんまり元気がない夜の釧路をちょっと散策してから、駅前のホテルにチェックインした。
することがないから、風呂に入ってすぐに寝た。
翌日は、釧路にはほかにも知人がいたな、お元気にしてるだろうか…と思い出し、午前いっぱい2名ほどだが、やはりある老人ホームにご挨拶に伺ってから、JRのディーゼル特急で帯広に向かうことにした。釧路駅で買った駅弁「蟹飯」を食べながら。
車窓に寂しい平原と、寒々とした海が続く。
そりゃ、こういうところに鉄道を走らせれば、当然赤字になることだろう。わかりきったことだ。しかし、鉄道って、こういう路線単位、あるいは、地域単位で収支を考えるべきものなのか。そもそも収支がすべてなのか。JR北海道に乗るたび、私はいつもそんなことを考える。厳しい自然、北の大地に延々と続く鉄路の安全確保は、とてつもなく大変な営みなのだ。…それにしてもこの漬物、なんていうのかしらないがうまいな!あの、ピンク色したカブか何かの薄切りの、弁当のすみによく入ってるアレだ。いつもただの飾りみたいに思ってたが、この「蟹飯」に入ってるやつは、ほどよい酸味といい、シャキシャキした歯応えといい、ちょびっと甘味もあって抜群じゃないか。
(つづく)