ATMで通帳がなくなるという信じられない話をしよう。

私は裁判所に行く途中、ある老人ホームへの振り込みをしようと思いたち、有楽町のとある銀行のATMに立ち寄った。
ATMを操作していたら携帯電話が鳴った。
こういうことが、なぜか、本当に多い。振り込め詐欺されてるのでは、と紛らわしいが。
…携帯片手に振込手続きを終える。通帳やカードがATMから吐き出されてきた。しかし、ちょっとそのままにしていて、電話がやっと終わった…と思ったそのときだ。あるはずの通帳がないのである!
私は電話に気をとられて無意識のうちに紛らせてしまったのかと思い、カバンの中、もちろんATMの周囲を含めて探し回った。しかし、ない。
私は、これは何らかのトラブルで通帳がATMに逆戻りしてしまったのだと考え、かたわらの受話器で電話をかけた。
事情を話したら、なんと、ある時間がたつと、ATMは通帳を吸い込むようになっているというのだ。
たしかに、通帳が引き取られずにいつまでも放置されていたら盗みや悪用の危険があり、問題だ。きっとそういう配慮なのだと思う。
しかし、それならそれで何らかアナウンスがあってもよいのではないだろうか。
それに私だって何分間も通帳をそのままにしていたわけではない。せいぜい2、3分だったと思う。まごついた老人がもたもたしてたらすぐ過ぎてしまうくらいの時間だ。
さらに私を愕然とさせたのは、私が「とにかく通帳を返してほしい」と言ったときの電話口の次の答えだ。
「これから担当者をそちらに向かわせますから、1時間くらいそこで待っていてくれませんか」
「!!!」
私はこれから裁判に行かなきゃならないんですよ!…そこまではさすがに言わなかったが、私にはそのような時間の浪費を強いられねばならないほどの特段の落ち度がないように思うのだが…
そのATMからだってほんの4、5分のところにその銀行の支店どころか本店があるってのに!
結局、その日、別の時刻を約束して、そこで銀行の担当者(実はアルソックの人)と待ち合わせをすることになった。
ATMに入れた通帳は、出てきたらすぐに取り出す…これが今回私が得た教訓である。皆様もぜひお気をつけください。

次回は後見人なのに預金の引き出し限度額が勝手に設定されてしまってる話(予定)。
東京中央郵便局では、平日午後9時まで窓口営業していますが、その後も「ゆうゆう窓口」は24時間営業というふれこみだ。
で、ある日、午後9時10分ころ、内容証明を出しに行ったときのことだ。
ゆうゆう窓口の人が、「午後10時までは内容証明は出せません。」と言うではないか。
「えっ、なぜですか?」
「内容証明を出せる人が10時まで来ないのです。」
そういうこともあるのか!
しかし論争したって出せないものは出せないだろう。
しょうがないから私は、この東京中央郵便局が入居するビル「KITTE」の地下で担々麺を食べながら、10時まで暇をつぶさねばならなかったのだった。
しかし東京の、しかも「中央」を名乗るこの由緒ある郵便局で、内容証明を出せない時間帯があるとは…
それならそれで、ちゃんとそのようにネットに案内出しといてほしいものだが、まぁ、東京中央郵便局にはかつて置き忘れた財布を親切にとっておいてもらった恩義もあるので、クレームとかする気にはならない。
ただわが同業者の方々(すなわち事務員の方々)は、注意していただきたい。集配局の通常窓口がゆうゆう窓口に切り替わるころ、エア・ポケットのような時間帯があり得ることを。
私の場合、はからずも抜群にうまい担々麺を食べられたからよかったが!
この担々麺のことは機を改めてブログに書かずにいられない。
が、その前に、次回は、通帳がATMに吸い込まれてしまうという恐い話をしたい。
いま、ちょうど日付が変わったところだが、こんな時間に、私はこうしてとある商店街に立ち尽くしている。
ほとんどの店は、寝静まっている。しかし、その一角には小さなビルがあり、1階のラーメン屋はまだ店を開けている。
そしてその上には小さなスナックがあり、そこもホツホツと灯りがともっている。
私はそのスナックの様子を伺っていた。
灯りはともっているが、さっきはドアは内側から施錠されていた。私はドンドンとたたいた。
応答はなかったが、ガラスの向こうに目をこらすと、なんと奥の方に女性の長い脚が。つまり、女が脚をむき出しにして横たわっているようなのだ。
私はハッとした。
生きてるのか死んでるのか…しかし内側から鍵がかかってるのだから、少なくとも殺されたということはないはず…寝てるのか?
警察を呼ぶのはもうちょっと様子をみてからにしよう。結果的にこうして時間をかけるのが裏目に出ることもあるが。
しかしあの女性はこの店の何なのか?
従業員? それともお客? いや、オーナーか?
よく見るとすらっとした長くて格好のいい脚だった。あ、動いた!
わずかにその脚が。
生きているのだ。
しかし、何らかのアクシデントで気を失っているのかも。だとしたら救急車を呼んであげなければならないのだ、ほんとは。
どうしよう?
弁護士なのにこんな判断がつかない。
もしこのまま彼女が死んだとしたら、真っ先に疑われるぞ、お前は!
まず、いったん外に出て頭を冷やそう。
…と、こうして外に出て、私はまだそのスナックの様子を伺っていたところ、最初に書いたとおり日付が変わったのだった。
しかしそれにしても、私はいったい何のためにここに来たのか。
実は、私は、ある方の代理人として、ある人を被告(相手)に、ある裁判を起こしたのだが…。守秘義務の関係でそうとしか言えないのだから、まったくなんのことかおわかりにならないと思う。
が、いずれにせよ、その相手の住所がこのビルの2階ということになっており、裁判所からはここに訴状や呼び出し状が「送達」されたのだが、それが受け取られず戻ってきてしまった。「どうなってるか調べてこい」
これが、裁判所から私への指示。こういうことはよくあるのだが、実に手間隙とられる、いつもほとんど気乗りのしない仕事だ。
そのため私は先日もここに来たが昼間だったせいか、シャッターがガッシリと閉じられていたこのスナック。やむなく、今日、この深夜、私はここを再訪したのだった。
しかし、前記のとおり、ここに被告がいるのかいないのか突き止められぬまま、ここにこうして立ちん坊している。
どれくらい立っていたろうか。ようやく、うすら寒さを感じるようになったこの東京。頭も十分冷えたころ、さっきの美脚の女がビルから出てきた。…そうだ、あの女性に間違いない。僕には脚しか見えなかったけれど。
私は彼女に歩み寄り、話しかける。
「Aさんは今日はお留守ですか」
いかにもうさんくさそうに、彼女が答えた。「Aは私ですけど」
「それは失礼しました。私は弁護士の市川と言います。Bさんの依頼であなたに訴訟を提起しました。あなたが裁判所からの送付物を受け取られないとのことでしたので、ほんとにご住所におられるかどうか確認しに来たのですが」
私がそう言い終わるか終わらないうちに、彼女はさっさと歩き出した、私を振り払うかのように。
…もちろん私は彼女を追いかけたりしない。ストーカーじゃないのだし、こうして被告の所在がわかれば、あとは裁判を開いてもらい、法廷で言いたいことを言わせていただく。
それが裁判なのだ。
その裁判のプロセスの、これも私のような3級弁護士のひとつの仕事として、こういう調査作業もあるということを、今回はご紹介しました。