千葉の先にある、ある金融機関の某支店から「今度いつお越しになれますか?」という電話があったのは、先月のことだった。
私は、生前たいへんお世話になったある方の遺言執行者なのだが、その支店にその方が遺した預金の相続手続きをお願いしているのである。
先月、私は往復4時間かけてその支店に行き、そこで、(覚悟はしてたが)約3時間待たされて手続きを終え、これでもうここには来なくてすむな!…と思ってたのだが。
「なにかさらに手続きが必要になりますか?」
「お預かりした通帳とかをお返ししたいのです。」
「郵送じゃダメなんですか?」と言いたくなるのをぐっと飲み込んで(…というのも、本当にここは融通がきかない…じゃなく、手続きが厳格な金融機関であることをすでに知っていたので…)、「来月20日の朝一番になら伺えます。」と約束したのが今日。
先週「コロナの問題で大変ですが、来週予定どおり来れますか。」とわざわざ確認の電話が入り、私は「こういうときですし、郵送とかではだめなんですか。往復4時間かかるんですよ。」と言いたくなるのをぐっと飲み込んで、「伺います。」と今朝7時に家を出た。
で、9時過ぎにその金融機関に到着したのだが、「先日お渡しした受取書をお持ちですか?」と。
「えっ、あれ必要だったのですか? 事務所のファイルにファイリングしてしまいましたが。」と私。
…先週電話もらったときに、「何か持っていくものありますか?」との問いが喉まで出かかったが、ま、相手がなんにも言わないんだし、印鑑と身分証があればよかろう、とタカくくってしまったのが猛烈に悔やまれる。
「いやぁ、申し上げておけばよかったですね。」と彼女。まだ「だから言ったじゃないですか。」と開き直らないだけマシといえばマシ。
私「帰ったら郵便でお送りしますので、郵送で処理していただけませんか。」
彼女「ダメなんです。あの書類と引き換えでないとお返しできないキマリなんです。」…ったって、そもそも、解約済みの通帳なんて、捨てていただいてもかまわないんですよ、ホントは! …私は、キレそうになる自分に「悪いのは事前に念押ししなかったお前の方なのだ。」と必死に言い聞かせ、「じゃぁ、しょうがないですね、出直しますよ。」と回答。
「次いつお越しになれますか?」と彼女。マスクをしてると仲間由紀恵さんに似ている。私は多少いやみっぽく、「このコロナ禍で裁判が軒並み延期で、ちょうど暇をもて余してたとこですよ。明日の朝参ります。今日は余計なお手間をとらせ、かえって失礼しました。」…そう言い残して支店をあとにしたのだった。
こうして何度も遠出して新型コロナウィルスに感染しないよう、注意しなければなるまい。
本日の教訓(…っていうより、前から学んでいたはずの教訓なのだが。)。思い込みはよくない。相手がどうであれ【ちがっていたら困る方】が、よく確認をしなければならない。
赤信号だから停まってくれるだろうと思い込んで信号を渡っても、ひかれて死傷するのは歩行者なのだ。あなたは車が停まったのをよく確かめたうえで、道路を横断するべきなのである。
いずれにせよ、週明け早々、悪い夢を見ているようであった。
たいへんな騒ぎになったものである。
フリーランスの自営業者である私の商売も少なからず影響を受けているが、普段からあまりお金になる仕事をしてないせいか、打撃はそれほど大きくない。また、日ごろから貧しい倹約暮らしをしてるので、ほんのわずかだが、当座の糊塗をしのげる程度には貯金もある。ありがたいことだ。

さて、今日は、こうして外出自粛要請の嵐が吹き荒れる中、はるばるここ北海道までやってきた。もちろん、やんごとなき用件で、だが、実は今回も交通費すら出ない、全くもうけにならない仕事だ。

朝の羽田空港はシーンと静まり返っていて、どこか異世界の聖堂のようだったし、飛行機も14、5人しか乗っておらず、まさに空気を運んでいるよう。先月末の沖縄出張のときとは、その「空気」が全然違ってた。
しかし、意外なことに、コロナ禍の再燃が懸念されている当地北海道は、そんなに危機感が高まっているような感じもなく、いたって平和な印象である。…ただ、粉雪が舞っているのだった。

さて、くだんの新型コロナウィルスであるが、いわば感染先進地だった日本、WHOから当初、危険な4ヶ国のひとつとして名指しされてた日本を、欧米があっという間に追い抜いていった。…ロンドンなんて、最初は東京の代わりにオリンピックしましょうかと言ってたくらいなのに! 
なぜ、日本ではいまだ爆発的な感染に至っていないのか。諸説ある。私はもともと新型コロナウィルスにも2種類あるのではないかとにらんでいたのだが、最近の報道では3タイプあるらしい。とすると、爆発的な欧米タイプがこれから我が国に…という危惧が当然あるわけだが、緊急事態宣言の効果かどうかは別にして、冷静に統計を見つめれば、今後国内感染者は1万人には届きそうだが、算数的にいって、いわゆる漸近線が見えてきたようにも思える。
それに、いまだ特効薬がないというのに、他方で治ってる人が多いという事実にも、人々の生命力のたくましさ、というか、しぶとさというか、とにかく人類の底知れぬ偉大な可能性を再認識させられる。ウイルスもすごいが、人間はそれ以上にもっとすごいんだ……そう、思う。

それにしても、今回の「災害被害者」は、「有名人率」がすこぶる高い。まだ、国内感染者は7000人程度。そのうち、志村けんさんを筆頭に、阪神の藤波投手、今回の石田純一さん等々、いわゆる有名人が20人以上はいるんじゃないか。日本の人口に、これだけの割合で有名人はいないはすである!
それだけ今回のコロナウィルスが有名人好きなのか、それとも、有名人がウィルスと親和的な生活を送ってるのか?

さて、ここからは(ここまで辛抱強く読んでくれてる人はほとんどいないという前提で、でもあるが)、暴言だ。
今回のコロナ禍でとくに苦境に陥っている「主な」業種は以下の3業種だと思う。
1 エンタメ業界
2 飲食業界
3 観光業界

あえて申し上げよう、まず、1のエンタメ業界の方々で、このコロナ禍で食べていけなくなったという方々は、普段はこの業界で食べていられたということだから、それはそれで余程才能豊かであるか幸運であるか、いずれにせよかなり恵まれた立場の人たちにちがいない、ということだ。
実は、こういう業種は、ほとんどそれだけでは食べていけない、バイトとか副業をしながら一生懸命夢を追っているアーチストや役者さん、裏方さん達によって底辺を支えられている業種でもあるなのだ。
いま、この困難にあって苦境に陥っている人たちは、むしろ幸せなのだと言わねばならない。…だからどうだっていうわけでもないが。

その次。2の飲食業界は、もともとそういう水商売だってことをあえて言いたい。
いいときはものすごくもうかるときもある。いま「補償しろ」とか言ってるみなさん、しかし、もうかってるときに利益を社会還元したことあるか…とは言いません、しかし、せめてこういうときに備えてある程度の備蓄はしてこなかったのでしょうか。未来永劫続く危難じゃぁないのです。そういう備えができないお店は、そもそもこういうコロナ問題なんかなくたって、きっと長続きはしなかったと思う。ダメになる時期がちょっと早まっただけと言うべきだろう。
じっさい、こういう国難にあっても本当に必要とされるお店は、この情勢下でもやはり必要とされ、商売繁盛とまで言えなくても、まさにしぶとく頑張ってくれています。そういう業界なのだ、この業界は!

さて、問題は3の観光関連業界だ。
もちろん、この業界にも2同様水商売的な要素がないではない。
ただ、旅行代理店を除けば、業態がより地域密着的で、納入業者はもとより、運輸・交通からお土産屋、飲食店(当然「2」に属します。)まで、関連業界の裾野が非常に広いところに特色がある。業界の苦境は、地域にとっても死活問題なのだ。
地域経済の発展ならぬ維持、さらにいえば今回のコロナ禍ではしなくも露呈した一極集中社会の脆弱性をカバーする地域振興の観点からも、この業界の苦境はどうしても見過ごすわけにはいかない。自助努力ばかりを声高に唱えることはできないのだ。
ただ、ふりかえって見るがいい。この業界を襲った危機は今回のコロナ禍が初めてではない。大震災しかり、豪雨災害しかり……。しかしながら、その都度たくましく、粘り強く、雄々しく、苦難を克服し、立ち上がってきたのがこの業界でもあるのだ。すなわち、とても大変ではあろうが苦境を克服できる地力というかプライド、そういう体質を伝統とするのが、この業界ということになる。
余計なお世話なんか焼かなくていいってことではなかろうか。

勝手なことばっか言ってすみません。しかし、いずれにせよ、今回の苦境は、自然現象と社会のボーダレス化がもたらしたものであり、安倍政権はそんなに悪さをしてるわけでもない、決して人のせいにはできない災厄だってことなのだ。緊急事態宣言も、その帰結にすぎない。悪いのはウイルスなのだ。
もちろん、この俺も5万円でも10万円でもいいから欲しい! 今月は新しいご依頼、すなわち受注が1個もない。
しかし、新型コロナウィルスがあってもなくても、欲しいものは欲しいのだし、最後は自分で自分を守るしかないってことなのだ。
私は、今回のウィルス禍ほど、我々の矜持を問う災難はないような気がしてならない。
とにかく、人のせいにするのはよそう。まずは、ひとりひとりが懸命に頑張るしかない、ひとりひとりの誇りをもって! そんなことを、この弱虫老人が考えさせられた、今回の北海道出張であった。

それにしても北海道でお目にかかった私のお客さんたちは、だれひとりビクともしてなかった! そういう彼ら、彼女らのほとんどは年金生活者なのである。

あとからなら何でも言えるが、これだけボーダレスとなった国際社会、世界的な感染症の蔓延は、決して事前にまったく予測できないことではなかったはずだ。
しかしながら、こうして後手後手にまわってるように見える、我が国はじめ国際社会。リスクマネジメントの難しさを改めて痛感する。

さて、私は、一昨日用務で沖縄県那覇市を訪問。たしかに羽田空港は普段に比べ閑散としていたが、沖縄便は、予想以上に混んでいた。
小さな子供連れも多く、CAさんのお尻に抱きつくおちゃめな幼児を、若い父親が「おい、セクハラだぞ、それは」などとたしなめる考え違いな機内光景にまで出くわす。
だが、投泊した那覇市内のホテルは、宿泊客が2割に減ったとかで、ガラーンとしていた。いつも見かける中国人旅行者はもちろん皆無といってよかった。
私はその夜はホテルから一歩も出ることなく、逆に、ホテル内の新装なった鉄板焼屋でひとりぼっちのディナーを楽しむという贅沢を味わった。

翌日、つまり昨日、私は宮古島に渡った。驚いたのは、宮古島に向かう飛行機が旅行客らでほとんど満席だったことだ。
しかも、マスク姿は明らかに減っており、どこか、新型コロナウィルスどこ吹く風…といった空気。
ちなみに、沖縄県内の感染者は今日時点で6名、宮古島圏域ではゼロ。たしかに、宮古島ではマスクをしてる人にほとんど出くわさなかった。…当地で落ち合った不動産業者さんとともに渡った伊良部島ではなおのこと。私が見た限り、マスクしてる人はひとりもいなかった。
折からの悪天候で、伊良部大橋からの絶景はジットリと灰色によどんでいた。しかし、遊びに来たわけではない。
伊良部島佐良浜地区の、架橋後の開発ラッシュからも取り残された廃屋だらけの集落を視察した後、宮古本島にとって返して関連部局など訪ねたり。
…こうしてこの日の仕事を終えて、その夜は「どこかで食事でも」と、決然、その業者さんを島唄ライブの飲食店にお連れしたが、目当ての三線弾きがお休みでがっかり。が、さっきも書いたが、遊びに来たわけではない。

それにしても、ここでも驚かされたのは、この宮古島パイナガマビーチに程近い「ホテル・サザンコースト」。
たしかにビジネス客にも観光客にも使い勝手のいい清潔な、また、立地もすぐれたホテルなのだが、ほぼ満室。大繁盛しているのだった。
翌日(すなわち、今日)、私は地元の旧知の知人に会い、ある別の仕事への協力を求めたのだったが、事情通でもある彼によると、この自粛ムードの中、海外旅行をやめて宮古島に来たり、国内の旅行先を変えて宮古島に来たり…といった来島者も少なくないのだという。それにしても、日付が変わったこの日の宮古島にもマスクなんかしてる人はほもんどいなかった。

…さて、私はその知人をお誘いし、島内のある老舗リゾートホテルにランチを食べに行くことにした。
そしたら、そのホテルのプールでは観光客らがワイワイと、いわゆる濃厚接触を楽しんでいるし、しかも、このツアー3度目の驚きというか、「ビュッフェスタイル」のランチ会場が大にぎわいなのであった。もちろん入り口で手のひらの消毒を求められたが、私は、ここはまるで別世界だな…との感想を強く持った。字義どおりresort地。そんな観があった、宮古島は。
ただ、こういう観光客からウィルスが持ち込まれていなければよいが…との憂慮も禁じ得ない。例によって自分のことは棚にあげて…だが。

今、那覇空港まで戻り、乗り継ぎ便を待ってる間にこのブログを書いているが、空港ロビーには、明らかに不要不急とはいえそうにないファッションの旅行者が、ギッシリではないが、けっこういる。人間、前から楽しみにしていた旅行は、簡単にはやめられない、というか、やめないのである。
是非は別として、よほど強権発動しないと、外出自粛要請とか、ましてや、首都封鎖とか、実効性は期せない。
また、那覇市内のゆいレール(モノレール)ですら朝夕はけっこうな混雑である。首都圏のあの通勤電車が走り続ける限り、ウィルスの根絶はむずかしいにちがいない。

最初の話に戻るが、自然のリスクをマネジメントしようなどということは、ある種、人間の驕りなのかもしれない。それどころか、リスクを軽減することすら、この一極集中社会ではかなり難しいかもしれないのだ。…あ、間もなく飛行機が出る。