Echo and The Bunnymen ‐モンスターにならなかったウサギちゃん | 100nights+ & music

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2020年の1年間に好きな音楽を100回紹介していました。
追記)2023年になっても見てくれる人がいて驚きました、感謝を込めて?気が向いた時にときどきまた書こうかと思います、よろしく!

 

ビッグマウスと真摯な音

 

 エコー・アンド・バニーマンは1980年にレコードデビューした。

 ポストパンクの時代に、ふざけたバンド名(こだまとウサちゃん男たち)、イアン・マッカロクの独特の声、カッティング中心のギター、沈み込むようなダークさとどこかポップなサウンドで、一躍人気バンドになった。 

 ヴォーカルのイアン・マッカロックは、ビッグマウスとして有名で、同世代のU2などを辛辣かつボロカスにディスっていた。

 

 ファースト・アルバムのタイトル曲、“クロコダイル”の1980年のライブ映像があった。カリスマティックなヴォーカルと勢いのある演奏は、ポストパンクのバンドという感じがする。

 

ついこのまえ ある奴に会った

「明日まで待て」と言われた

俺は言った

「今日、お前は何をやってるんだ」

彼は言った

「俺は明日になったらやるさ」

 

Crocodiles

 

 エコー・アンド・バニーマンの初期のアルバム・ジャケットは、夜の森、陽が落ちる(昇る?)直前の海辺、凍り付いた滝など、冷たい自然の中で4人のメンバーが映っているものばかりだった。

 

 ジャケットと同じように、冷たい熱さのある3枚目の「ポーキュパイン」からは2曲がヒットした。

 その1曲“ザ・バック・オブ・ラブ”は、尖った緊張感を持ったまま音楽的な深みを得ているような気がした。

 4人に加えてシタールやバイオリンみたいな音が入っているこのアルバムは、イギリスはもちろん日本でも一部でとても人気があったと思う。

 

The Back Of Love

 

 彼らのアルバム自体は少しもったいぶっている感じがして、それほど積極的に聞いてはいなかったのだが、4枚目の「オーシャン・レイン」はとても気に入った。

 「蒼い洞窟の中の湖にうかぶ船」というジャケットが付いたこのアルバムは、弦楽器が大きく取り上げられてミドルテンポの曲が多い。初期のカオスな感じが薄れている代わりに、美しい完成された世界が広がっている。

 

 オリジナリティを失わずに、いろいろなアイデアやメロディアスな曲が揃っている「オーシャン・レイン」を聞いて、この後は世界的なスーパースターになるんだろうと多くの人が思っただろう。

 

Killing Moon

 

 5枚目の「エコー・アンド・バニーマン」を、それまでコンスタントに音楽を作り続けていたバンドが3年の時間を空けて1987年にリリースした。

 バンド名をタイトルにして、バックには何の風景もない白黒の4人のポートレートという原点回帰的なイメージのあるアルバムだが、それまでの勢いや尖った部分が何だか無くなってしまっていた。

 このアルバムを出してイアン・マッカロクが脱退し、その後すぐにドラムのピート・デ・フレイタスがオートバイの事故で亡くなり、そしてバンドは一度解散した。

 

 エコー・アンド・バニーマンは、一時期はU2やニュー・オーダーのような世界的なバンドになるかもしれないと思わせたが、ビッグマウスで悪口を言いまくりながら、音楽の本質的な部分や表層的なスタイルを変えることを拒み、そうはならなかった。

 彼らは商業的な成功を得るモンスターバンドになる代わりに、次の世代の多くのミュージシャンに決して小さくない影響を与えた。おそらく今日も世界中で何人もの人がエコー・アンド・バニーマンを聞いているだろう。

 

 バンドは1997年に再結成した。現在のエコー・アンド・バニーマンに以前のような緊張感はないが、コンスタントに良いアルバムを出し続けている。

 

 1989年に出たイアンの最初のソロ・アルバム「キャンドルランド」は、どこか内省的で、もったいぶったところのない良いアルバムだった。

 アルバムの最後に入っている“スタート・アゲイン”を聞くと、いまでも「疲れ果てた先の微かな希望」のようなものを感じる。

 

Start Again