自由を失わないロックバンド
ソニック・ユースは1981年にニューヨークで結成された。
すこし前の世代の、ある意味では分かりやすいニューヨーク・パンクとは明らかに感じが違っていたが、1978年の「ノー・ニューヨーク」よりは古典的なロックスタイルのような印象だった。
ラジカルで実験的な音楽とロックのバランスをうまく取って、音楽的な自由を手放さないまま、商業的にも成功したバンドという感じだろうか。
最初に聞いたアルバムは、1988年の「デイドリーム・ネイション」だった。アンダーグラウンドの凄いバンドという噂が先行していて、名前は何となく知っていた。
ある日、「暗い一画に置かれた一本の蝋燭」という印象的なジャケットを輸入レコード屋で見かけてジャケ買いした。
ただ奏でているだけのギターの音と女性の声から始まるパンクロックタイプの1曲目、“ティーンエイジ・ライオット”を聞いて、すぐこのアルバムが気にいった。
「デイドリーム・ネイション」はザラザラした感じのギター・アルバムで、どこか不安な気持ちになってくるような独特の冷ややかな感触がある。
アルバムに入っているポップだけど不安定な“キャンドル”などを聞くと、海外の多くの人が思っているシンプルで陽気なアメリカとは違う、都市部に住む若者のリアリティはこんな感じなんだろうと思う。
Candle
次のアルバム「GOO」は、1990年にメジャーレーベルから出た。これと次のアルバムは前のアルバムにあった「ノイズと冷たい静けさ」のような感じがなくて、ポップでけっこう聞きやすい。
ここら辺はグランジという分野になるのかもしれないけど、彼らにとって分野のカテゴライズに意味はないな。
この2枚はあまり聞き返したりはしないが、疾走感のあるピクシーズみたいな“ミルドレッド・ピアース”は気に入っている(最後が笑えるんだけど、多くの人はそう思わないかもしれない)。
Mildred Pierce
ジム・オルークも参加した2000年の「NYC ゴースツ&フラワーズ」も、タイプはかなり違うが気にいっている。
このアルバムはアメリカでは売れなかったそうだ。実験的な要素が強く、地味で長い曲が多いからだろう。
「NYC ゴースツ&フラワーズ」は彼らのインテリっぽい側面の良い部分が出ていて、とても美しいアルバムだと思う。彼らはバカみたいなこともよくやるが、どう見てもバカではなく、それどころかものすごく知性的だ。少なくともオレよりは確実にずっと頭が良い。
アルバム全体にポストロックの感じが強く、いわゆる「ロック」とは違う独特のグルーブがあって音楽的にも面白いと思う。ただロック的な盛り上がりではないので、そういう雰囲気が好きな人には退屈かもしれない。
Free City Rhymes
ソニック・ユースはレコーディングとライブを良い感じに分け、音楽制作における自由さを確保しながら、長いあいだ音楽性からアートの感覚を失うことなく、好きなように続けて多くのバンドに影響を与えた。
そんな側面と、「ロックバンドで音楽をやるのって、単純に楽しいだろ」というシンプルさが混ざったところが、ソニック・ユースの一番好きなところだった。
Teenage Riot