カモン・フィール・ザ・ノイズ!
スレイドは最高だ。けっこう多くの人がそう感じると思うんだけど、ほとんどの人はそう言わないような気がする。
イギリスから1969年にデビューしてグラムロックブームで一発当て、パンク時代はバカにされていた。でも労働者階級の陽気なハードロックバンドという感じは、とても好感が持てる。
カッコよさと暴力的な感じとデリケートさを除けば、ニューヨーク・ドールズとそんなにも違うか?と思う。
(モリッシーには、ぜんぜん違うだろバカかお前はと言われそうだが)
スレイドと言えば、何といっても1973年の“Cum On Feel the Noize”だろう。
いわゆるロックンロールタイプの曲の中でも、最高のひとつだと思う。1983年にクワイエット・ライオットがカバーして、アメリカのチャートで5位に入った。
わざとスペルを変えているのも、キャッチーな感じを出そうとしたんだろうな。「この騒音を感じに来いよ!」
Cum On Feel the Noize
スレイドは最初からイギリスでバカ売れしていたが。アメリカでは受けなかった。
イギリスは不思議な国で、国民的に受けるクリスマスソングは何かひねくれた曲が多い。
ポーグスの“Fairytale of New York“は、アイルランド系の貧困層アメリカ人カップルが相手をぼろくそに言いながら愛情を持っているという曲だし、ロイ・ウッドのウイザードの“I Wish It Could Be Christmas Everyday”は、毎日がクリスマスだったらいいのになという歌詞がフィル・スペクター・サウンドに乗っている。
スレイドのクリスマスソング“Merry Xmas Everybody”も、イギリス限定の国民的なヒット曲になった。何のひねりもない直球の歌詞が素晴らしい。
家族はみんな着いたかい?
部屋の準備はばっちりかい?
ばあさんは、ちゃんと君に話してるかい?
古い曲は最高じゃないか?
それで彼女は立ち上がって
みんなと一緒にロックンロールさ
Merry Xmas Everybody
スレイドはパンクロック時代をかろうじて生き残ることはできたが、瀕死の状態だったようだ。
パンクのブームが去り、ヘビーメタル系のバンド、クワイエット・ライオットがカバー曲を大ヒットさせたあと、もう一度だけ今度はアメリカを含む世界的なヒット曲を2曲出した。
その1983年に出た「The Amazing Kamikaze Syndorome」は、音楽以外は最低だった。
「驚くべき神風シンドローム」というタイトルに、正座して合掌しているスーツ姿で眼鏡をかけたアジア人のジャケットが付いている。
もう少しマシなタイトルとジャケットだったら名作として紹介したいのだが、見かけが酷すぎてどうもその気にならない。
アメリカでヒットした2曲は、逆にとてもイギリスっぽい曲だった。
その一つ“ラン・ランナウェイ”は、途中でイギリス風のギターフレーズが出てきたり、動画にバグパイプの集団が出てきたりするパーティソングになっている。
Run Runaway
スレイドは4人組のバンドで、1992年まで30年以上オリジナルメンバーのままだった。
彼らの曲は皆で大騒ぎして聞くタイプが多く、親しみやすさと「楽しくやろうぜ」という感じがとてもいい。
アメリカでヒットしたもう一つの曲、“マイ・オー・マイ”はシンプルなバラードだった。
若さやカッコよさのカケラもない実にダサい映像だが、観衆と合唱しているこの演奏は、なぜかとても感動的だ。
スタジアムで合唱するタイプの曲やバンドはあまり好きではないんだけれど、スレイドの音楽は、そんな下らない感情をぶっ飛ばしてくれる。やっぱりスレイドは最高だな。
My Oh My