あぶらだこ
あぶらだこは1983年に結成された。
当時は、いろいろなバンドが自主制作でレコードを出しはじめていた。マイナーな日本のロックを話す友人はいなかったし、ハードコアパンクまでは手が回らず(金が足りず)、強力なバンド名は知っていたが音は聞いていなかった。
最初に買ったのは、メジャーデビューしたと思ったらすぐインディーズに戻って1986年に発売した「あぶらだこ」。通称「青版」だった(彼らのアルバムはタイトルがすべてバンド名なので、通称がついている)。
どこかで音を聞いて、バンド名と同じくらい変なボーカルとやたらにうまい演奏が気に入り、すぐ買いに行った。この45回転の短いLPは最高だった。
ボーカルのヒロトモの書く漢字を多用した歌詞は殺伐としつつも妙なユーモアがあり、日本ぽくてとても詩的だ。何を言っているのかはさっぱり分からないが、何となく言いたいことは分からないでもない。
とてもとてもめでたくない感じがする、“祝言”。
雪溶けて春溶けて人溶けて金溶けてサルマタケの花が実る頃
祝言
それから、何だかんだずっと彼らの音楽を聴いている。
後から聞いたメジャーデビューの1枚目は、イカレた親しみやすい(以降に比べればだが)パンクロックだった。
そういえば当時、数少ない友人に説明するときには「ボーカルが虫みたいな声を出していて、最高なんだよ」と言っていた。誰も聞こうとはしなかったが。
“Row Hide”は人を選ぶかもしれないけれど、パンクロック好きの心を打つ曲。
Row Hide
その後のバンドは、だんだんヒロトモの書く詩に曲を合わせたような、変則リズムだらけになっていった。
「普段はみんな仕事をしているから一曲練習するのに時間がかかる。ライブはそう頻繁にできない」という内容のインタビューを見たことがある。
まあこの音楽で金は稼げないだろうし、曲はどんどん複雑になっていくし、そうだろうなと思った。
しかし一時期のあぶらだこはメジャーからアルバムを出し、プロモーションビデオまで作成されていた。それを見て喜んだ自分がいうのも何だが、「これはいったい誰が見るんだろう?」と思っていた。
例えば“冬枯れ花火”という曲は適当に演奏しているように聞こえるかもしれないが、いつだって完全に同じように演奏する。「猛練習の成果がこれか」と思う人がいるかもしれないが、あぶらだこは最高のバンドです。
花粉飛ぶ國三連打杉の木陰で三連符散りいく桜も三連符咲いて滲んで三連符夜鳴き丑三つ三連符目覚まし響いて三連符三拝九拝三連符三拝九拝三連符 なった なった なった なった なった!花火が! 不発
冬枯れ花火
あぶらだこは、2009年の「あぶらだこ 二十六周年 ワンマン」から演奏をしていない。このライブには気が付いていたから、行けばよかったと今でも後悔している。
あぶらだこ こそが本物のロックバンドだ。いつかまたライブをする日が来たら必ず行こうと心に決めている
一番好きな曲は、青版で最も疾走感がある“アンテナは絶対”。これは本当に名曲だな。
アンテナは絶対