クリッシー・ハインド クールでタフなロッカー
プリテンダーズは、とてもセンスのいいロックンロールバンドだ。ボーカルとギターのクリッシー・ハインドの、クールビューティでタフな感じがカッコよかった。
初期メンバーは何人かドラッグで死んだが、決して暗い音楽をつくらないとこがいい。
Wikipediaによると、アメリカ人のクリッシーがイギリスに渡ってから、マルコム・マクラーレンに労働許可書を取るためにジョニー・ロットンかシド・ヴィシャスのどちらかと結婚させられそうになったり、ダムドの前身バンドにいてデビュー前に切られたり、ミック・ジョーンズとバンドを結成しようとしたけどダメだったり、パンクムーブメントの真っただ中にいてひどい目にあっていた。
ようやく結成した自分のバンド、ザ・プリテンダーズは、友人のニック・ロウにプロデュースしてもらって、その前のあまりよろしくない友人たちの音楽とは違う、ポップでソリッドなロックミュージックをつくり、すぐに成功した。
1980年の “トーク・オブ・ザ・タウン” は、シンプルでいい曲だと思う。
たぶん明日 たぶんいつか
あなたは、この世界の中で
自分の居場所を変えていく
Talk of The Town
何といっても一番好きな曲は、“バック・オン・ザ・チェイン・ギャング”。
サム・クックの “チェイン・ギャング” のオマージュみたいなこの曲は、途中で「Hoh! Ah!」という同じ掛け声が入る。
ソウルミュージックの歌手ではサム・クックが一番好きなのだが、クリッシー・ハインドもそうみたいだ。ザ・プリテンダーズというバンド名も、ザ・プラターズの“グレート・プリテンダー”のサム・クック・バージョンからとったらしい。
少し寄り道して、サム・クックの“チェイン・ギャング”について。鎖につながれた囚人の男たちが、きつい肉体労働をしながら歌っているという名曲中の名曲。
いつか家に帰って 愛してる彼女に会うんだ
仕事は酷くきついぜ
水をくれよ 喉が渇いているんだ
俺の仕事は酷くきついぜ
Chain Gang
“バック・オン・ザ・チェイン・ギャング”は、主人公が「戦いの中の安らぎ」だった恋人と別れて、鎖につながれた囚人のように、それぞれの列車に戻っていく、という歌詞。
ギターのフレーズ、メロディ、どこかクールで熱い感覚、喪失感と強い意志などが、クリッシー・ハインド自身を感じさせるような曲だと思う。
この曲には一時期プリテンダーズのギタリストとして参加していた、ザ・スミスのジョニーマーがギターを弾いてるライブバージョンもある。20 19年にはモリッシーもこの曲をライブでカバーしていた。スミスの二人もプリテンダーズが好きなんだろうな。
Back On The Chain Gang
とっくに別れてしまったが、大昔にクリッシー・ハインドはザ・キンクスのレイ・デイヴィスと結婚していた。
レイ・デイヴィスが、10年くらい前に出したアルバムのボーナストラックに、“ポストカード・フロム・ロンドン”という曲が入っている。
クリッシー・ハインドをゲストボーカルに迎えたその曲には、「鎖につながれて、それぞれの列車に戻っていった二人が、何十年ぶりかにクリスマスに近況を連絡して過去のことを思い出す」ような映像がついていた。
みんな長く生きていると、いろいろなことがある。
Postcard From London