金田式OTL ステレオパワーアンプ 1993年 日本
金田式OTLはOTLらしい臨場感や生命感の表現力に優れており、生々しい音がする。
アウトプット・トランス・レスはすべての制限を取り払ったかのような開放感を感じる。
活き活きした鮮明なエネルギーが無尽蔵に湧出し眼前を迸っていく、じつに痛快な音である。
金田式は透明感にプライオリティを置いており、色艶の濃い味わいは持たないが、
温度感が高くライヴのような熱量がある。音質には余韻や響きが豊かで真空管らしさがある。
音楽を聴くのが楽しくなる。とても感激する音で、拙宅に到着した日は夢中になって
一日中聴いていた。アンプは音楽を聴く道具なのだから、OCTAVEより真空管パワーアンプとしての
評価は格段と上になる。ハイファイでトランスペアレンシーに優れた音だが、
音場感や精巧さでは現代的なOCTAVEにアドバンテージがある。駆動力や電流供給能力が
すこし不足する為か、あるいはステレオアンプであるためか、音の拡がりはもうひとつで音像が
中央に寄ったような音になる。金田式は随所で雑味も若干出現。1993年発表の最初の金田式OTLで
球の味わいが強く、音質的にはメリットなのだが、全段真空管式でオフセット変動が大きく
保護回路が付けられない。故障は後期型より多いと思われる。MQ36とはぜんぜん違い、
通常スピーカーでは重低音もなかなかに強力である。OTLアンプの雄LUXMAN MQ36より
随分上になるので、本機の実力は相当なものである。思いもかけず JBL S9800SEが
大音量でバンバン鳴る。しかし、このスピーカーでは息切れしがちであるようで、音が一瞬途切れたり、
クリップする前兆は随所にあるが、パワー感は十分だし、迫力や瞬発力もある。ただDD66000では
38㎝ダブルウーファーで150Hzのスタガー駆動をしているためか、実質4Ω相当まで落ち込むこともあり、
残念ながらウーファーは殆ど動いていない感じになってしまった。中高域だけで鳴っているような
音になる。6C33B プッシュプルで出力は 約30w。BiltriteTAMURA製作所の商標の特注品の
無酸素銅巻き線トランスを搭載、このトランスだけで値段は10万円以上する。
今は昔のような音の良いトランスはどこにも売ってない。カップリングコンデンサーを使わないDC結合で
情報量が多い。一般的なプッシュプルの真空管アンプの三倍は発熱があるので扇風機は必須で
上から風を当てる。金田式OTLは濃厚でこってりした真空管アンプとは相性が悪い美音系の
VALHALLA SPと個性がぶつからず、喧嘩しないで持ち味を引き出してくれる。温度感こそ
高い物があるが、透明感に優れた音質が良かったようだ。金田式全てに共通するのが、
トランジスターでも冷たい無機質な音ではなくヒューマンな暖かみがあるそうだ。
広大な音場空間だとかセパレーションや音の正確さや整合という点ではOCTAVEに軍配が
上がるけど、金田式は温度感が高く音が活き活きしており出音に人間味が感じられて好ましい。
音の拡がりはやはりモノラルのMRE130の方が良い。OTLのアンプは16Ωのスピーカーで
本領を発揮する、聴いてみると8Ωのスピーカーでもなんの問題もなく鳴っているようだが、
やはりベストは16Ωスピーカーだろう。OTLアンプは通常のアンプとは逆で、
インピーダンスが下がるほど出力値も減少する特性がある。お貸し下さった横浜の技術者の方は
フッターマンやSA4やMQ36など主要OTLアンプに修理の際に接した事があり、テクニクス20A以外は
聴いているが、金田式だけ次元が違うという 「他の自作系アンプでなにかいい物はないですか?」
「う~ん、金田式だけしかないでしょうね」 結局これを維持できる人は自分で球の調整を取れる人や
修理できる人じゃないと無理なのだそうだ。あとSD SOUNDも二人とも聴いた事がなく
詳細不明である。音質の70%を支配する出力トランスなし、音はスカッと抜けてくる。生々しい音。
こういう音を聴かせるものは他になく、この音の秘訣は回路設計と部品選別と、
よけいなパーツを使わないシンプルさにある。一番最初の金田式OTLは全段真空管式で
後期型はFETに一部置き換えられたり、全段真空管式のものがあったり、いずれにしても
オフセットも安定して落ち着いたしっとりした感じの音になるそうだ。
なんと!このアンプを実際に製作された方からお便りを頂きましたのでご紹介します。
irony様
DCアンプで初めて6C33C-Bを使ったもので、記事が出てすぐに電源トランスをサン・オーディオに
注文し、回路図と写真を頼りに完成できました。当時は基板図もシャシー加工図もなく、
シャシーはアルミ材を切って作り、塗装も自分で行いました。
前段真空管はテレフンケンとWE、ソケットはWEの9ピンを使っています。
大切に使ってくださっているようで、大変嬉しいです。先方にもよろしくお伝えくだされば幸いです。
丁寧に作ったつもりではありますが、基板裏側は見せられないくらい下手です。
調整を上側からできるように工夫しました。位相補正コンデンサーは指定は双信SEコンですが、
耐圧が心配なのでアメリカ製マイカコンデンサーに、6C33C-Bのグリット・カソード間抵抗は
スケルトンではなくデールの巻線にしたと記憶しています。電源トランスはご指摘のように
タムラ製で、販売代理店がサン・オーディオだったのです。電解コンデンサー160V/10000μFも
同時に求め、少し安くしてくださいました。出力端子は海外製品でよく見る六角頭の赤黒ポストで
、あんなのでも100A流せる代物です。初段差動は最初メッシュの美しいCV4085でしたが、
テレフンケンがよいと先輩に聞き、EF806SとEF86を探し出し、定電流にはニッケルシールドの
テレフンケン、差動にはグレーのテレフンケンEF86にしました。DCオフセットは温まれば安定していました。
SNS繋がりでも金田式アンプのファンのお方からメッセージを頂きました。
こんばんは。金田式OTL楽しみですね。 静観しているつもりだったのですが、
いろいろ気になってご連絡しました。そちらの事情がよく分からないので、
おかしなことを言っていたらすみません。 これはNo.131のものだと思いますが
(推測)、MJ誌の記事のコピーはお持ちでしょうか? そこに真空管の選別方法も含めて、
いろいろなことが書いてあります。 金田先生の指定では、初段はEF86(CV4805, 6267)、
2段目は404A(5874)、となっています。シャーシの番号だと初段が2と4, 7と9で、
2段目が1と5、6と10のように思われます(推測)。 安定して動かすには指定された
真空管から、信頼性や安定度に定評のあるものを選ぶのが早道の気がします
(同規格の真空管だからいいということでもないようです)。とくに初段の安定性は重要です
(安定性はペアリングとは別になります)。 いろいろ気になることはあるのですが、
私も素人なので、ひとまずこれくらいで。