FM ACOUSTICSの始まり | 禁断のKRELL

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FM ACOUSTICS FM800A ステレオパワーアンプ 1975年




FM ACOUSTICS というブランドはマヌエル・フーバーによって1973年にスイス、
ホルゲンに設立された。最初はスイスのプロアンプ機を作っていた業務機器ブランドで
素性の知れない山師的な外国人が何人も乗り込んできて乱立されている、社歴の浅い
"高級スイスブランド"とは一線を隔する名門ブランドで、同国はスイス製高級時計に
象徴される精密な物作りを得意とする職人の本場だ。スイスで生産される高級時計や
ハイエンドアンプは、マーケットが小さな小国スイスはそれほど想定されておらず、
昔から主に海外向けに製造された外貨獲得の為の輸出品なのである。
FMはもともと最初はアメリカ向けの業務用アンプを作っていて、
その音が評判を呼んで民生用も少しずつ手掛けるようになっていった。

FMの音は「昔のモデルほど馬力があってパワフルで力強い」というのは、
ベテランディーラーの方から訊いた言葉ですが、アメリカ製アンプってやつは、
大抵どれも物凄い力感とテンションに溢れる非常にパワフルな音ですからね。

会社の設立時に顧客のアメリカに合せた音作りがそのままFMのサウンドになっているのだ。
一度始めた「ブランドの音」はおいそれとは変えられません。業界の常識。これが、
「アメリカのJBLにスイスのFMのパワーアンプの組み合わせ?」という疑問に対する答え。
マークレビンソン、クレル、エアー、ヴィオラ、ボルダー、どれもとても力強い音で
間違いないですよね
。これがお国柄というやつです。欧州製の落ち着いた大人しい音とは
全然違います。FMの製品のほとんどがフルバランス設計なのも録音スタジオが広いア
メリカに合せて配線を何十メートルも長く引き伸ばすのに向いている耐ノイズ性能に強い
バランス伝送になっているから。GOLDMUNDが東アジアでの成功に気をよくして、
何度か積極的にアメリカに売り込んでいたけど、さっぱり売れなかったのは
音質が欧州製で耽美的で大人しかったのと、アンバランス伝送しか使い物に
ならなかったからだと言われている。









FMは日本では初期の頃レイオーディオ(キノシタモニター)が輸入代理店をやっていた。
その後千葉のGTサウンドも取り扱っていた。ここまで言えば分かると思いますが、
FMは大型のフロアー型ホーンスピーカーにもっともマッチするアンプです。
レイオーディオやGTサウンドが「自分たちのスピーカーを最も上手く鳴らす」
アンプとして世界中からFMを選び出したわけです。



評論家の細谷信二氏に"JBLを知り尽くした人"が語った言葉、

「JBLを本当に鳴らし切れるのは、FMのパワーアンプだよ」という言葉が頷ける音がでている。