★白鳥の王子2 | エゴイストな好奇心

エゴイストな好奇心

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私は、高校生になった。

しげるとは別の高校に
通っていたのもあってか
ほとんど
口をきかなくなっていた

家には、秋子おばさんと
しげる、たくみと私だけ
になっていた。

ひろし兄は地方への
二年間の転勤が決まって
春から一人で生活して
いる。

けんじ兄は大学卒業後
建築の勉強がしたいと
イタリアに留学している
あちらで働きながら
頑張っていた。

ようた兄は、東京の大学
に合格し家を出て
一人暮らしを始めた。

あの事があってから
なんとなくギクシャク
している私たちを
知ってか知らずか
変わらないのはたくみ
だけだった。

私の部屋に勉強を
教えてくれと言って
訪ねてきて

「なぁ。なんで最近
しげる兄としゃべん
ないの?」

とか

「かあさんもなんか
あったのかなぁ」

とか聞いてくる。
私は

「何も変わってないわよ
私としげるは昔から
そんなにしゃべらない
じゃない」

と答えた。


しげるも今はだいぶ
落ち着いた方だった。

あの夜のあと

しげるは、夜中寝ている
私の部屋にしのびこんで
くるようになった。

最初は、身の危険を
感じて何かしたら大声
出してやろうと
寝たふりをして寝返りを
うって背中を向けた。

すると、しげるは
私に背中を向けるように
布団の中に入ると

「ちくしょー!なんで
なんでなんだよ。
ちくしょー!」

と小さな声で呟きながら
肩を震わせ泣いていた。

そんな日が、何日か
続いたが私は、
寝たふりを続けた。


高校三年間
私は、必死で勉強をした
獣医になるための大学は
少なくどこも難関だった
からだ。

そして、帯広の大学に
なんとか合格した。

秋子おばさんは、
帯広に親友がいるから
いろいろお願いしなきゃ
と言った。

高校を卒業した私は
帯広のおばさんの友人の
元を尋ねた。

下宿は大学の近くに
借りたが、夏休みや
何かの時お手伝いして
くれたらバイト代を
出してくれるという
話だったので挨拶に
行ったのだ。

秋子おばさんの親友は
春子さんといった。

私の母、夏子とは
幼なじみで近所だった
らしい。

私と同じように大学から
北海道に来てこちらで
酪農をやってる旦那さん
と出会い結婚した
そうだ。


大学生活最初の
夏休み。私は春子さんの
ところで過ごしていた。

秋子おばさんは、
その事をすごく寂し
がったが、学費以外にも
いろいろとお金がかかる
のでと話したら

「仕方ないわね」

と言って許してくれた。

春子さんのところで
朝から晩まで働いた

毎日美味しい食事と
たくさんの動物に
囲まれて。

「今は、ここにいる
豚みたいに太ってる
けど、夏子と遊んでた
頃なんてガリガリで
ガイコツなんてあだ名
だったのよ。動物も
嫌いだったし」

朝ご飯の後、春子さんは
母との思い出を毎日
のように話してくれた。

「でも、動物嫌いを
克服出来たのは夏子の
お陰かな~。
小学校の遠足で動物園に
行ってね。
ふれあい広場とかある
じゃない?あそこに
夏子、私を連れていって
ね。近くのウサギを
無理やり抱かせたの。
最初は私も恐々抱いて
たんだけどだんだん
可愛くなってきて…
夏子は、そういう表現
がちょっと不器用だった
わね…だから、秋子には
絶対負けたくないって
いつも言ってたわ」

春子さんの話だと
秋子おばさんとは小学校
で出会ったらしい。

ひとたらしだった秋子
おばさんは母にとって
うらやましい存在だった
ようだ。

「夏子はそんな風に
秋子をライバル視して
たんだけど、秋子はもう
夏子が大好きでね。
夏子、運動も勉強も
いつも一番だったから
なっちゃん
すごい!かっこいい!
って。追っかけみたい
だったわよ」

春子さんは、とても
楽しそうに話してくれた

「もうひとり、一年生の
二学期に転校してきた
のが冬子っていってね
私ら四人で春、夏、秋、
冬でしょ?だから先生
とかに春夏秋冬(しゅん
かしゅうとう)!とか
呼ばれてね。」

冬子さんはご両親の
転勤が多かったそうで
4年生の秋にまた転校
してしまったそうだが
その後も春子さんと文通
を続けて今は結婚して
イタリアに住んでいる
そうだ。

(そういえば
けんじ兄がお世話に
なってる下宿の人って
冬子さんって言った
ような…)

春夏秋冬の友情は今で
も健在のようだ。

「でも、こんなに早く
夏子が逝っちゃうなんて
ね。冗談で子供同士を
結婚させよう!なんて
話したこともあったのよ
といってもうちは豚や
馬や牛になっちゃうけど」

春子さん夫婦には
子供は居なかった

夏休みが終わり大学生活
に戻ってしばらくした
秋、たくみから帰って
こいと電話があった。

秋の連休を利用して
家に戻ると

秋子おばさんをはじめ
全員が揃っていた。
イタリアのけんじ兄。
東京で商社に就職した
ようた兄。
同じく東京の出版社で
アルバイトしている
しげる。
高校生のたくみ。

そして、ひろし兄と
婚約者。

そう、ひろし兄の結婚
報告会でみんな集まった
のだった。

ひろし兄の奥さんに
なる人は看護婦さんで
去年、ひろし兄が
盲腸になった時に
知り合った。

二人が付き合いはじめて
ちょこちょこ家に来て
いるのはたくみから
聞いて知っていた。

結婚となり、
秋子おばさんはとても
嬉しそうだった。

「娘が増える!!」

と。
ひろし兄はもう
デレデレでけんじ兄や
ようた兄に早く結婚しろ
と言った。

「そうだね」

ようた兄がそう答えた
とき、私の胸がチクリと
小さく痛んだ。

結婚式は、来年の秋と
いうことだったので
その時、帰省することを
約束して私は帯広に
帰った。

季節は流れ、春になった
しげるから出版社での
採用が正式に決まったと
メールが届いた。

しげるは就職を期に
ようた兄の居候から
卒業して家を借りた
そうだ。

「おめでとう。
頑張ってね」

そう、返事をした。

秋に帰省した時、しげる
は私をあの公園に
連れ出した。

秋子おばさんと
同じようにブランコに
座ると

「あの夜さ、かあさんに
ちかの事好きなのか?
って聞かれたんだ。」

私も、しげるの隣の
ブランコに座った。

「好きだ。って言ったら
来なさいって言われて
ちかの部屋に連れて
行かれて…そのあと
あの話聞かされて。」

しげるは少しブランコを
こいだ。

「その後もしばらくは
好きなら関係ない。
とか思ってちかの部屋に
行ったりもしたんだ…
最低だろ?」

私は、首を横に振った。

「ありがとう。でも、
まだ、その気持ちは
変わらないんだ。でも
ちかが、俺の姉さん
なのは事実だしきっと
そう思える日が来ると
思うんだよな」

しげるはそう言うと
ブランコから降りた。

「先、帰るわ。」

私は、何もいわず
しげるを見送った。

帯広での何度目かの
夏休み。私は、来年
大学の卒業を迎えよう
としていた。

いつものように、
朝ごはんのあと春子さん
の昔話を聞いていると

「おーい、お客さん。」

と春子さんの旦那さんが
声をかけてきた。

春子さんが、私?と指
さすと旦那さんは首を
ふり私を指さした。

私は、こんなところに
誰だろうと外に出ると
スーツ姿のようた兄が
立っていた。

「おはよ。」

ようた兄は、私を見る
なり言った。

「おはよって、どうした
の?こんなところで」

私が言うと

「お仕事。出張で近く
まで来たからさ。
かあさんに様子見て
来てって言われたの。」

ようた兄は、そう言って
鞄から東京土産を出した

「お前、一昨年のけんじ
兄の結婚式以来帰って
ないんだって?」

ひろし兄の結婚に続き
けんじ兄の結婚が
決まった。
けんじ兄は帰国して
建築事務所を立ち上げた
その時、協力してくれた
弁護士さんと一昨年
結婚したのだ。

「ひろし兄んとこの
息子、ゆずるも寂し
がってたぞ~
ちか姉ちゃんに会いたい
って」

ひろし兄のところは
男の子が産まれた。

「仕方ないよ。獣医の
試験は難しいし、
そんなにしょっちゅう
帰れないよ。お金
かかるし」

「それは、俺たちが
なんとかするって
いつも言ってるだろ…」

「もう、私も子供じゃ
ないんだよ。いつまでも
みんなに頼っていたく
ないの」

私がそういうと
ようた兄は少し寂しそう
な顔をした。

私は、近くのベンチに
ようた兄と座った。

夏の北海道は、濃い緑
が一面に広がりとても
綺麗だった。

「そうだな。
むこうで俺の親友の
おやじさんが今か今か
と待ってるよ。
息子が役者なんか目指し
ちゃって後継ぎが
いなくなっちまったから
な」

「たかひろさん、まだ
役者頑張ってるんだ」

「ああ、この間公演みた
けれどなかなか
面白かったよ」

「え~、私も観てみたい」

「次にやるときは一緒に
観に行こうか?」

ようた兄にそう言われて
私は、少しドキドキ
した。

たかひろさんのお父さん
こそ、あの時の獣医さん
だ。私が獣医を目指して
いるというのをようた兄
つてに聞いて。
大学を卒業したらうちで
働かないかと誘って
くれたのだ。

「さて、そろそろ
行くかな。お前の顔も
見れたし。」

「え?もう?」

ようた兄は立ち上がると

「一応、仕事で来てる
身分だからな。」

と言った。

私は、急に寂しくなって
目がうるうると潤んで
きた。

「な、なに泣きそうに
なってんだよ。
このご時世、大学卒業
してすぐ就職なんて
幸せなことなんだぞ!
しっかりしないと…」

ようた兄は、あわてて
よくわからない励まし
方をした。
私は、なんかおかしくて
嬉しくて笑った。

「そうだね。期待に
答えなきゃね。」

私の笑顔を見届けて
ようた兄は、帰って
いった。

私の心には、ぽっかりと
穴が空いた。

その年の秋の終わり。
秋子おばさんが倒れた
とひろし兄から連絡が
きた。

私は、あわてて家に
帰ると暗い表情で4人が
待っていた。

けんじ兄が状況を説明
してくれた

秋子おばさんは、
訪問先の家の前で
倒れているのを発見され
救急車で運ばれた
脳梗塞だった。
この10年ばかり血圧が
高いといって薬を飲んで
いたのは知っていたが
こんな急に…

「その時、かあさんが
これを握りしめてた
そうだ。ちか、お前
あてだ」

けんじ兄がそういって
くしゃくしゃの封筒を
私に渡した。

表には
ちかちゃんへ
と書いてあった。

「ずっと仕事鞄に入れて
持ち歩いていたらしい。
それくらい大事なもの
だったんだろう」

けんじ兄がそう言うと
同時に私は自分の部屋に
駆け込んだ。

封筒を開けると
秋子おばさんの字で
書かれた手紙がでてきた

「ちかちゃんへ

この手紙を読んでいる
ということは
おばさんの身に何か
あったということね。

この手紙には
ちかちゃんへ伝えなけ
ればいけないことと
おばさんのお願いが
書いてあります。

まず、ちかちゃんは
今でもおばさんの娘
ではありません。
あなたのお母さんの
お母さん。つまり
おばあさんの好意で
お母さん方の籍にずっと
入っていました。
そしてあなたが二十歳に
なった時、分籍をして
もらいました。

だから、ちかちゃんは
おばさんの娘では
ありません。

ここからがおばさんの
お願い。

ちかちゃん、おばさんの
本当の娘になって
くれないかな?

ようたのお嫁さんに
なってくれないかな?

ようたは、はじめて
あった時からちかちゃん
がずっと好きだったの
おばさんは、あの子の
母親だからよくわかる
お葬式の日、ちかちゃん
をうちの子供にしようと
最初に言ったのも
ようただったのよ。

僕があの子なら
誰かが側にいてくれない
と辛くて死んでしまう。
って言って。

ようたは、周りに気を
使う子だから
しげるがあなたを好き
なのも知っていたから
でも、しげると
あなたは…

おばさんが憎いかも
しれない。
だけど…お願いを
聞いてくれないかしら

その時…

つづく