たとえば、毎日寝る前に一編。ゆっくり、読んでください。豊饒で多彩な短編ミステリーが、日常の倦怠をほぐします。意外性と機知に富み、四季折々の風物を織り込んだ、極上の九編。読書の愉楽を、存分にどうぞ。
東野圭吾が贈る9つの短編集。
東野圭吾作品ということをすっかり忘れて読み始め、警察が出てきてあ、そうだったこれは東野圭吾作品だった！と思ったり、逆にいつ事件になるのかな、と思いながら読んでいたら結局警察沙汰になるようなことは起きなかったり、バラエティに富んだ色々な話を楽しめる一冊でした。
ともかくどの話もサクっと読めるテンポの良さで、読書好きの人もそうでない人も楽しめます。
話の展開やオチのうまさ、そして読者の想像をはるかに超える結末にさすが東野圭吾とうなる作品ばかりでした。
「十年目のバレンタインデー」や「君の瞳に乾杯」という恋愛モノを思い浮かべるような甘いタイトルを裏切るような展開は見事としか言いようがなかったし、「レンタルベビー」では赤ちゃんの世話、母親業なめんなよ！と思ったらまさかのオチ。
秀逸だったのは最後の「水晶の数珠」。一生分かり合えないままだと思った父のまさかの行動、父から子への想い。その不器用な愛情が何とも言えない格好良さで心に響く良作。
短いお話の中にこれでもか！というぐらいの人間模様がちりばめられていて本当に読んでいて面白く、本の紹介にもあるようにたとえば寝る前に一編、電車の中で一編とゆっくり読んで楽しめると思います。
★★★★