津村沙世子――とある地方の高校にやってきた、美しく謎めいた転校生。高校には十数年間にわたり、奇妙なゲームが受け継がれていた。三年に一度、サヨコと呼ばれる生徒が、見えざる手によって選ばれるのだ。そして今年は、「六番目のサヨコ」が誕生する年だった。学園生活、友情、恋愛。やがては失われる青春の輝きを美しい水晶に封じ込め、漆黒の恐怖で包みこんだ、伝説のデビュー作。
直木賞を受賞された恩田陸さんのデビュー作。
恩田さん作品は、夜のピクニックとかチョコレートコスモスとかすごく好きな作品がある一方、正直ちょっと苦手な作品も結構あって、最近あまり手に取っていなかったんです。
が、直木賞受賞をきっかけに、今まで読んでいなかった恩田さん作品を見返そうキャンペーンを一人で勝手に実施中。
キャンペーンの最初に手に取ったのがこちらのデビュー作、「六番目の小夜子」。
これがまぁ、面白くて面白くて引き込まれてしまいました。
舞台は田舎の高校。
その高校には3年に一度行われる、ゲームのようなある”行事”が受け継がれていた。
3年に一度「サヨコ」が選ばれ、サヨコが引き継がれていく。
「サヨコ」に選ばれた者は、誰にも気づかれることなく新学期に教室に赤い花を活け、学園祭で芝居をする。誰にも悟られることなくやりとげれば、その年のサヨコの勝ちとなるゲーム。
そして六番目のサヨコの年、3年生のクラスに津村沙世子という才色兼備の女の子が転校してくる。
主な登場人物は3年10組の生徒の花宮雅子、唐沢由紀夫、関根秋、そして才色兼備の転校生、津村沙世子。
美人で人懐っこい雰囲気の沙世子にクラス中華やいだ興奮でザワつく中、由紀夫と秋は沙世子に対して何かがおかしい、嫌な感じを覚える。
そして今年のサヨコである「彼女」もまた、沙世子の登場により、自分の今年のサヨコの成功が邪魔されてしまうと怯える。
沙世子はなぜ古い鍵を持っていたのか?
2番目の沙世子だった同姓同名の津村沙世子との関係は?
沙世子は何をしようとしているのか?
沙世子の周りで起きる不可解な出来事は一体何?
沙世子には人間を超越した力を持っているのか?
沙世子とサヨコ伝説は関わりがあるのか?
ともかく謎だらけです。
そして学園祭で行われることになった全校生徒が参加する「六番目の小夜子」の芝居。
この芝居、読んでいるときはかなりホラーでゾッ。
でもそれ以上に秋のことを好きな佐野美香子に対する沙世子の洗脳とも呼べる言動がかなり恐ろしかったです。
また今年のサヨコから思わぬ形で鍵を受け取ってしまい、サヨコ伝説を調べはじめた秋に危険が忍び寄っている感じがすごく怖くてゾクゾクして、お願いだから秋を巻き込まないでーと思ったり。
さらにサヨコにまつわる話の傍らで、学生の青春や恋愛の話もあり、内容盛りだくさん。
決してスッキリするラストではないのですが、学園小説としても、ホラー小説としても楽しめる作品で、これが恩田さんのスタートの作品か、と思うとなかなか感慨深いものがありました。
というわけで、引き続き恩田さんの過去の作品を読み返そうキャンペーンを続けようと思います。
★★★☆