中学生の時、山川先生という女の担任がいた。
通称『山姥(やまんば)』
一時期渋谷界隈で名を馳せたのとは程遠い、真面モノの方だ。
年齢不詳、髪はグレーでウェーブがかり、顔には皺、怒ると鬼の形相になる。
担当は家庭科。
なので男子は担任の授業を受けたことが無い。
しかし教師歴は超がつく程の大ベテランで、以後軽くあしらわれることになる。
私の中学時代は不良で、坊主頭に剃り込み入れて学生服は中ラン(裏地は玉虫色に虎龍の刺繍)
にボンタンという地方によくいる、俗に言うヤンキーだった。
朝のHRの時、山姥が教室に入ってくるなり先ず私の机の前に立ちはだかり、私の頭を覗き込み額
に指を這わせ、
「また剃り込みなんか入れてないだろうな!」
と毎朝それが定例になっていた。
私は剃り込み部分を毛抜きで抜いていたので、
「剃ってないっス!」
と言えばお咎め無しで済んだ。
成績も良く運動もでき、学校では健康的不良(ってあんのか?)で通し、裏では相当酷い事
(ここでは言えません)を散々していた。
まぁ、バレないように要領の良い不良だったのかも。
山姥の執拗なお説教にも相当嫌気が差してたが、中3の夏ともなるとこの後の高校受験も控えてい
るのでガキの不良も引退しなければならないのだ。
この頃になってくると何かと色気づく時期でもあって、化粧品にこだわったり小物もお洒落な物
を持ち歩くようになる。
化粧品(私は資生堂派)の変遷も面白いですよ。
BRAVAS→VINTAGE→LORDOS→TACTICS→AUSLESE
といった具合に匂い振り撒いて学校に行く訳です。
すかさず山姥が、
「坊主が一丁前に、なぁ~に色気づいてんだゴラァァ! 臭いんだよっ!」
「頭洗って来い! 馬鹿野郎!」
と、よく怒鳴られてた。
ところが進路指導になると、山姥は何もいう事が無いと言う。
別に受験勉強もしないで良いとまで言いやがる。
はてさて、とうとう見捨てられたか?とも思ったが流石に不安になって訊いてみると、
「お前は部活で良い成績を残してるし志望校は新設校だから、お前のような奴は落とさんよ。」
「安心せいっ!」
私はそれを信じ、本当に一切受験勉強をしなかった。
皆は受験勉強などで忙しく、私は大人の不良達(サーファー)と遊ぶようになっていく。
高校受験間際に志願書提出し受験倍率が出て驚いた!
0.96倍
おいおい定員満たないじゃねーか。
これって全員合格じゃん、試験の意味あんのかよ?
新設校だが我々は2期生になる訳で、一年先輩が入学しているので話は聞いていた。
進学校なのでかなり勉強はハードで厳しいらしい。
試験当日地元の各中学からの受験生を見ると、いるいる柄の悪そうな奴ら。
試験も済み合格発表の日。
合格だった。
担任の山姥に報告したら、すごくにこやかな顔をして
「おめでとう!」
と、あんなに優しい顔を見たのは初めてだった。
「先生、ありがとうございます。」
涙が止めども無く溢れてきた。
その後地元新聞の合格発表を見て更に驚いた!
不合格者が4名いた。
余程の馬鹿だったんだろうなぁ。
高校編につづく