私の小学生時代に、谷口先生という男の担任がいた。
頭はポマードべたり7:3に分け、黒縁の眼鏡さえ外せば若い頃の藤竜也に似ていて、男前で格好
良かった。
怒ると怖い先生だったが、授業はすごく面白く愉しかった。
でも宿題を忘れたりすると教壇の前に呼び出され罰を受けるのだが、自分で罰を選択することに
なっていた。
男子はズボンから尻を出し1mの竹製の物差しで一発引っ叩かれる。
女子はスカートの上から。
こめかみに両拳でグリグリ。
教室に飾ってある花瓶の水を首元から背中に流し込む。
運動場5周走ってくる。
この中から選ばされるのだ。
私は一通り体験したが、一番嫌だったのが花瓶の水責めだ。
花瓶の水など花が枯れそうにならない限り取り替えないので、汚いわ臭いわで背中が痒くなる。
それからは誰しも毎日花瓶の水を取り換えるようになった。
宿題を忘れてこなければ良いのに、皆こぞって忘れてくるんだなぁ~これが。
今の時代に教師がそんなことをしたら、暴力だ!体罰だ!セクハラだ!と世の親共が大騒ぎして
大問題になるだろうが、その当時は誰一人として文句を言う親はいず、先生を嫌う生徒も誰一人
としていなかった。
小学校の先生というのは教科全般を担当する訳だが、算数が専門分野の先生だった。
算数と言っても中学で習う数学の幾何学が専門らしい。
私も算数の図形問題が面白くてはまってしまった。
ある時先生が、
「興味がある奴は家に来たら教えてやるぞ。」
と言うので、算数好きの友達3人で日曜日に先生の家に遊びに行くことにした。
先生の家は公園の森に面した古い木造の平屋の一軒家で緑に囲まれて静かなたたずまいだった。
日曜なのに学校の始業時間と同じ時刻に来い、と言うので朝飯も食わず出掛けて行くと、すごく
綺麗な奥さんが朝ご飯を用意してくれていた。
カッコイイ先生だとこんな美人の奥さんと結婚できるんだ、と羨ましかった。
驚いたのはそればかりではない。
いつも学校では緑色のジャージ姿だったのが自宅にいる時は和装なのだ!
先生に対する印象が変わったのは言うまでもない。
皆で朝ご飯を食べてから、いよいよ先生の幾何学の授業が始まった。
授業時間は2時間半。
日に日に難しくなってきて、我々が問題を解いている間は先生は縁側のロッキングチェアで本を
読んでいる。
小学生で既にピタゴラスの定理とか教わっていた。
我々の親たちは先生に塾料を払おうとしたが、そんなものはいらないと言って受け取ろうとしな
かった。
これも今だったら金銭を受け取ってなくても、えこひいきだ!とか騒ぎ、問題になるだろうな。
あと休みの日に先生は『探検』といって沢登りやカブトムシ取りに連れて行ってくれた。
「行きたい奴は来い!」
ということだったのに・・・
何故かクラスの全員が揃ってた。
皆先生の事が大好きだったんだな。
中学校編につづく