あるヘルパー事業所の廃業9 〜最終話・一族滅亡〜 | めざすぞ!四感王 〜視力は失っても残った四感をフル稼働、前向きな人生をめざす〜

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全盲の管理人が、ある時は身障者への偏見や誤った認識を指摘、またある時は日々の喜びや小さな気づきなど綴ります。皆さん前向きでいきましょう!!

最近、風の便りであるヘルパー事業所が廃業したと耳にした。私も一年弱ほどお世話になったことのある小さな事業所だ。


トライブのカツオに振り回されること10ヶ月。そろそろ決着をつけなければ、という頃、たまたま訪れた病院で社長フネが現れる。


[主な登場人物&事業所]

・トライブ

→最近廃業したヘルパー事業所

・カツオ(男性・40代)

→トライブの管理責任者

・ハナコ(女性・70代)

→トライブのヘルパー

・フネ(女性・推定70代)

→トライブの社長

・さざえ(女性・推定40代)

→トライブの事務担当

・エンジェル

→良好な関係のヘルパー事業所

※固有名詞は仮名


病院から帰宅後、私のスマホが鳴った。出てみるとケアマネジャーからだった。私にはなんとなく用件が想像できた。


私「どうしました?」

ケ「Koichiroさん、最近トライブさんと何かありましたか?」

私「(あぁ、やっぱりあれはフネだったんだ…)ご存知の通り、銀行口座振替がなかなか進まないので、毎回ハッパはかけてますけど。あと、さっき病院で順番待ちしてたら、トライブの社長らしき人と会いましたね」

ケ「実は社長から電話がありまして、Koichiroさんのヘルパーサービスを停止したいそうです」

私「理由は何だって言ってるんですか?」

ケ「それが、特に理由は言わないんですが、とにかくもう行かないということなんですよ」


フネはケアマネに何と言ってサービス停止を申し出たんだろう?まさか自分に都合よく話を捻じ曲げてはいないだろうな?私はありのままをケアマネに説明した。


ケ「そうだったんですか…」

私「それで、いつから来なくなるの?」

ケ「今週からです。先週のサービスが最後、ということになります」

私「えっ?そんな唐突に?!なんで?こっちが悪いことしたわけじゃないでしょ?それは酷いんじゃない?」

ケ「そうなんですが、もうやらないと言ってる以上仕方ありません。先方も感情的になってますし。それで、今後のことを相談したいんですが…」


私の経験上、このような場合ヘルパー事業所は、よほどこちらに非がない限り次の事業所が見つかるまでは責任持って面倒見てくれる。もしくはある程度の猶予期間を設けてくれるものだ。それなのに、悪いのはずっと迷惑をかけ続けたトライブの方なのに、この仕打ちはなんなんだ?!


そもそもフネには、たまたま病院で会った男が私だという確証はないはず。固有名詞は一切出さなかったし、そこまで詳しいことも話していない。一歩間違えば被害妄想だ。社会人、ましてや一国一城の主ならまずは裏をとってからだろう。万が一人違いだったら相手に迷惑をかけるし、失礼だとは考えないのだろうか?この思考、恐ろしすぎだよ!


それに、自分たちのこれまでの非礼は棚に上げてこんな仕打ちをしてくるとは、あちらには全く非がないとでも思っているのか?私は当たり前の要求をして、カツオを最後まで信じて待ったんだぜ?そりゃないぜーーーーー!!


しばらくの間憤りが収まらなかった。だが、それよりも今後のことが大切だ。代わりのヘルパー事業所を探さなければならない。私はケアマネに相談した。……あれ?そういえば……?


私「そういえばこれまでのトライブの利用料金、全く払ってないけど、どうすればいいのかな?」

ケ「それなんですが、あちらはいらないと言ってました」

私「いや、それはまずいでしょ?経緯はどうあれ、10ヶ月間働いてもらったのは事実なんだし、それは払わないわけにはいかないよ」

ケ「ではどうしますか?現金書留で送りますか?」

私「あ、でも請求書全部持ってきてなかったな。送ろうにも金額わからないよ」

ケ「そうなんですか。あちらはもう関わりたくない勢いでしたから、いらないと言ってる以上、請求書を出せと言っても出さないでしょうね」


これほどまで感情だけで我を通す経営者とは初めてお目にかかった。こうしてトライブとの付き合いは終了した。その後すぐにカツオが抜けた枠にはエンジェルのヘルパーが入り、現在まで良好な関係を維持できている。そして、2024年に入り、トライブそのものまでもが終了した。


結局、トライブとは?フネとは?一体なんだったのか?周囲の人々の呟きに多かったのは、今時現金払いに固執するなんて脱税してるに決まってる、というものだった。まぁ、何の根拠もない想像ではあるが。


私は、重度の認知症や障害者を積極的に受け入れて世話していたことから、もしかしたらいわゆる貧困ビジネス的なことに手を出して…はいないよなぁ?などとも考えてしまう。だとしたらとんでもない闇だ。まぁそれはない…かな?


とにかく、彼らにとって私は最初から見込み違いの利用者だった。それだけのことだったように思う。


それも今の私にはもう関係ない。私に必要なのは、お互い与え・与えられ、尊重し合いながら信頼関係を積み上げていける人々とより多く出会い、大切にすることだと思う。前進あるのみだ。



当シリーズを最後までお読みいただきありがとうございました。



©️2024 Koichiro