『ガリレオ 沈黙のパレード』ネタバレの感想 人々の愛情が複雑に絡んだトリックに感動(再掲) | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

 2024年3月30日の「土曜プレミアム」で『ガリレオ 沈黙のパレード』が放映されるので、2022年9月の公開当時に掲載した「ネタバレの感想」を再掲載する。

 

 評価 5/5 ☆☆☆☆☆

 『容疑者Xの献身』(2008年)、『真夏の方程式』(2013年)が非常に面白かったので、やっと9年ぶりに続編『沈黙のパレード』が映画化されて嬉しい。しかも、今回は内海薫が相棒として復活したのが嬉しい。湯川は教授に出世しているのも、時間を感じる。「ソラリス」で鑑賞した。原作の小説は読んでいない。

 冒頭で、並木佐織と、並木家の家族、定食屋「なみきや」の常連客の戸島、宮沢、新倉夫妻、佐織の恋人の高垣との関係がフラッシュバックで、手際良く紹介されているのに感心した。パンフレットによれば、当初は4時間越えの大作になる脚本だったそうで、演出が上手だと思った。

 その佐織がすぐ殺される。容疑者の蓮沼は、逮捕されて物証を突きつけられても黙秘を続け、証拠不十分で釈放される。蓮沼は15年前の本橋優奈殺人事件でも完全黙秘を続け、無罪になった。題名から、黙秘する蓮沼の犯罪を湯川が暴く話かと思ったら、蓮沼が早々と殺されたのに驚いた。つまり、本作は蓮沼を、誰が、どのようにして殺したか、を突き止める話だった。

 蓮沼を殺す動機があるのは、もちろん佐織の家族の並木夫妻と妹夏美であるが、映画の冒頭の紹介のように、店の常連客と恋人の全員に動機がある。しかし、事件発生時は全員お祭り会場にいたアリバイがある。非常に難解な事件である。

 殺害方法は、湯川は最初、酸素を吸い取る、風船で埋めるなど非現実的な事を言っていたが、液体窒素を使うのが一番現実的であろう。実際に1992年8月10日北海道大学工学部で、助手と大学院生の2名が死亡した事件もある。ヘリウムガスでは可能であろうか?私としては、ドライアイスを気化させて、二酸化炭素で窒息死させる方法もあると思うのだが。後ほど、別記事で検証してみたい。

 犯行に液体窒素を使ったと分かれば、冷凍食品会社「トジマ屋フーズ」で液体窒素を使っているので、戸島が怪しいと分かる。液体窒素のボンベを蓮沼の家まで誰が運んだかが問題だったが、戸島がパレード出発地点まで運び、新倉が宝箱に隠し、高垣がパレードゴール地点から蓮沼の家まで運び、並木が実行だったが中止になって代わりに新倉が実行と、細かく役割を分担したため、一見、誰もがアリバイがあるように見えたと言う、複雑なトリックに感心した。

 新倉が蓮沼を殺したのは、妻の留美が誤って佐織を殺したと思い、罪を蓮沼に被せるためだった。もちろん、蓮沼の自白は新倉の作り話だった。完全黙秘を続けた蓮沼が、窒息死を脅されただけで自白するとは思えなかったので、当然である。ところが、佐織は気を失っただけで、留美は殺してはおらず、蓮沼が殺した可能性が高い事が分かる。つまり、新倉は妻を助けようとしたが、殺人は無駄だった事になる。(佐織の仇は取ったので無駄ではないかな)

 ところで湯川が「蓮沼が黙秘を続けられたのは、佐織を殺していなかったからだ」と言っていたが、蓮沼は佐織を殺していた事になり、矛盾していない?

 さて、多くの人逹がこの計画に関わっていた事が分かる。それだけ佐織は皆に愛されていたのだろう。その前に、日本の警察は自白至上主義から物証主義に変更になったはずなので、蓮沼を起訴に持ち込めるくらいの捜査をして欲しいと思った。新倉は、妻が蓮沼に脅されていたと言う情状酌量で、刑が軽くなって欲しいものだ。

 題名の『沈黙のパレード』とは、殺人の道具である液体窒素を秘密裏に運んだパレード。もしくは、「愛する人を守るために、沈黙する人々」をパレードに例えたのか。トリックが非常に複雑で、人と人との愛情が絡む、何とも深く考えさせられる作品だった。評価は「5」である。