『アーヤと魔女』NHK放映版と劇場版の微妙な違い | アンパンマン先生の映画講座

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 2020年12月30日にNHK総合で『アーヤと魔女』が放映された。その後、当初の劇場公開日は2021年4月29日だったが、2021年8月27日に『アーヤと魔女・劇場版』が劇場公開された。劇場版は一部追加映像を加えて公開されると知り、テレビ放映から4か月(延期されて8か月)も時間があるので、かなり編集し直されて、追加映像が多数あるのではないかと期待して見た。

 大画面で見ると、絵が細部まで作り込まれている事が分かる。また音響も、テレビ放映版のステレオから、劇場版はドルビーシネマにパワーアップされている。特に、赤い髪の女性(アーヤの母親)が『Don’t disturb me』を歌う場面は、臨場感があって良かった。

 ところが、一部追加映像があると言っても、劇場で見ている時には全く気が付かなかった。パンフレットには書いていなし、ネットを探しても分からない。テレビ放映をただで(受信料は払っているが)見た後で、高い入場料金を払って劇場版を見たのだから、テレビ放映版とは違った内容にしてほしかった。

 ところで、『スタジオジブリ絵コンテ全集〈22〉アーヤと魔女』の最後には、次の4か所で追加・編集をしているとあった。劇場で見て違いに全く気が付かなかったので、パソコンの画面を左右2画面にして「NHK放映版」と「劇場版」を同時に見て比較したところ、次の様な本当に微妙な違いを見つけたので紹介する。

 

1.Aパート

 アーヤが臭い部屋から出てきた後に、玄関の扉がなくなっていることに気がつく。自分が閉じ込められたことにアーヤは腹を立て、ベッドの中で「EARWIG」と書かれたカセットテープを眺める。

【NHK放映版】

 ベッドの布団に入ったアーヤは目を閉じてから、再び目を開け「一人で寝るの初めてかも」と言って目を閉じて寝る。部屋の天井から見た、一人で寝るアーヤのベッドが映り、その後暗転。

【劇場版】

 ベッドの布団に入ったアーヤは目を閉じてから、再び目を開けるまで約2秒間長い。その後「一人で寝るの初めてかも」と言って目を閉じて寝る。部屋の天井から見た、一人で寝るアーヤのベッドが映るが、それも2秒くらい長い。その後の暗転も1秒くらい長い。全体として約5秒長い。

 アーヤが一人で寝る寂しい心情を、より表現しているようである。

 

2.Bパート

 アーヤがマンドレークの部屋を覗き込んで、デーモンが揚げたてのフィッシュアンドチップスを取ってこさせるところを見る。台所の小物入れから電池を見つけたアーヤは、自分の部屋に戻り、ラジカセに電池を入れる。デーモン達に身の回りのことをやらせているマンドレークを羨ましいと思いながら、孤児院でも他人に家事をさせていたアーヤは、ふと思う。

【NHK放映版】

 ラジカセを手にアーヤは「私もマンドレークみたいに暮らしていたかも」と反省し、すぐ「カスタードに会いたいな」と呟く。

【劇場版】

 ラジカセを手にアーヤは「私もマンドレークみたいに暮らしていたかも」と言った後に「頼めばいつだって好きな物食べられたし。『今晩は子供の家のシェーズパイを取ってこい』『アイアイサー、キャプテン』」とカスタードの物まねをした後に、「カスタードに会いたいな」と呟く。

 孤児院での生活を懐かしみ、カスタードに会いたい心情を強く表現している。新しいセリフが入ったので、全体として約42秒長くなった。

 

3.Cパート①

 アーヤがベラ・ヤーガに「奴隷じゃないって言ってるでしょ!」と完全に切れてまくし立てる。『スタジオジブリ絵コンテ全集〈22〉アーヤと魔女』では、この後、劇場版では、言いすぎたと急に怖くなって後退るアーヤをベラ・ヤーガは思い切り平手打ちする。トーマスはびっくりする。

 とあったが、NHK放映版も劇場版も、平手打ちする場面があり、違いはなかった。

 

4.Cパート②

 その後、怒鳴るベラ・ヤーガに渋々従うアーヤはベラ・ヤーガが自分に魔法を教える気がないことを知り、不機嫌な顔で作業部屋から出て行く。

【NHK放映版】

 作業場のドアを開けて、不機嫌な顔でアーヤが廊下を歩く。作業場のドアが閉まり、トーマスが映る。アーヤはすぐマンドレークのいる台所に入る。

【劇場版】

 作業場のドアを開けて、不機嫌な顔でアーヤが廊下を歩くが、5秒ほど長くアーヤの顔を映す。作業場のドアが閉まる前に、ベラ・ヤーガの後ろ姿がちらっと見える。その後、アーヤはマンドレークのいる台所に入る。全体として6秒ほど長い。

 アーヤの不機嫌な様子が長く描写されている。作業場の中の様子が少し長く映るため、天気が回復して作業部屋へ日差しが差し込んでいるのが、NHK放映版より良く分かる。

 

『スタジオジブリ絵コンテ全集〈22〉アーヤと魔女』にはないが、次の違いもあった。

5.オープニングとエンディングのクレジットが違う

【NHK放映版】

 エンディング曲が終わるのは「NHK放映版」では「HAPPY END」の文字が出てから約2秒後。

【劇場版】

 オープニングクレジットには、ミュージシャンのレコード会社名などが記載されている。

エンドディングクレジットに記載されているキャストやスタッフの名前が「NHK放映版」よりかなり多い。エンディング曲が終わるのは、アーヤが机で手紙を書いている絵の最後で、次の「HAPPY END」の文字は無音でうつる。つまり、エンディングの背景絵の1枚を映す時間が「NHK放映版」より若干長く、キャストやスタッフの名前がおおいため、エンディングが全体で5秒くらい長い。

 

 以上のように、本当に非常に微妙な違いで、「NHK放映版」と「劇場版」を左右2画面にして同時に見て比較して、やっと違いを発見した。従って「NHK放映版」より「劇場版」の方が約1分長いくらいの違いである。もっと大幅な追加映像を期待していたのに残念である。