映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』ネタバレの詳しいあらすじ | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

監督:成田洋一 2023年

主な登場人物(俳優)役柄

【現代の人々】

加納百合:かのう ゆり(福原遥)高校3年生。将来に悩み、母と喧嘩をして家出する。

加納幸恵:かのう ゆきえ(中嶋朋子)百合の母。

ヤマダ(坪倉由幸)百合の学校の担任。

【1945年の人々】

佐久間彰:さくま あきら(水上恒司)特攻隊員。秋田出身。21歳。

石丸(伊藤健太郎)特攻隊員。彰の親友で同じ部隊に所属する。高知出身。21歳。

板倉(嶋﨑斗亜)特攻隊員。大阪出身。18歳。故郷に許嫁を残してきている。

寺岡(上川周作)特攻隊員。東京出身。32歳。妻と生まれたばかりの子供を残して入隊した。

加藤(小野塚勇人)特攻隊員。千葉出身。代々陸軍家系の隊員。

千代(出口夏希)基地で勤労奉仕をする女学生。石丸に淡い恋心を抱く。

ツル(松坂慶子)鶴屋食堂の女将。特攻隊員たちにとって母のような存在。

警官(津田寛治)百合の戦争に反発する言動を見とがめる。

 

「溶けそうに暑い夏だった。悪夢のような世界で、私は初めての恋をした」

 高校3年生の加納百合は、進路希望書に「なし」と書く。担任のヤマダ先生は「本当にいいのか?大学に進学できるのに。家の事情か?奨学金制度もある」と進学を勧める。そこに百合の母・幸恵が三者面談に来る。百合は、スーパーで魚を下ろしている母に「魚臭い」と言い、「気分が悪いので、先に帰る」と勝手に帰る。控室で同級生が百合に「お母さん、素敵な香りがしていた」と嫌味を言う。

 百合が自転車で帰る途中、崖にある防空壕跡で、小学生が遊んでいるのを見かける。

 百合が家に帰り、ソファーに寝転んでテレビを見ていると、終戦記念日の2か月前で、特攻隊の特集をしていた。3148名が死亡したと報じていた。

 母か帰って来て「お金をためていたので、地元大学なら何とかなる」と話す。百合は「大学に行かない。就職する」と反発する。母は「父は百合に期待していた」と言うと、百合は「父さんは溺れる子供を助けて亡くなった。他人の子は助けて、自分の子は助けないの?母さんは魚臭くて、一日中働いても働いても貧乏。全部お父さんのせい。父親失格だ」と言って、雨の中、外に飛び出す。

 百合は雨の中「いくら他人を救えても、自分を救えなかったら意味がない」と考えながら歩く。雨宿りに防空壕後に入ると、中は子供の「秘密基地」になっていた。母から心配するメールが来るが、無視する。百合はビニールシートの上で寝る。雷が山に落ちる。

 翌朝、百合は防空壕の中のゴザの上で目覚める。防空壕内の子供達の道具は無くなっていた。外に出ると住宅街ではなく、田園が広がっていた。街並みは昔風に代わり、「ぜいたくは敵だ」の看板があり、人の服装も質素だった。セーラー服にもんぺ姿の女子高生とすれ違う。

 百合は具合が悪くなり、道端に座り込む。すると軍服を着た青年が「大丈夫か?」と声をかけ、頭に濡れた手ぬぐいを当て、鉄製の水筒の水を飲ませる。百合は立とうとするが、ふらつく。青年は百合を「鶴屋食堂」に連れて行き、女将に「この子に何か食べさせてくれませんか」と頼む。女将は豆が入った飯と、具の無いみそ汁、漬物を出す。百合が食べると、女将は「良い食いっぷりだ」と感心する。

 女将の名前はツル、青年は佐久間彰だった。百合がテーブルの上の新聞を見ると、戦争の記事だらけで、日付が昭和20年6月14日だった。

 驚いた百合は店を飛び出し、防空壕に戻り「帰して。ありえない」と泣き叫ぶ。行く場所のない百合は鶴屋食堂に戻る。ツルは泥だらけの百合に、水で行水をさせる。ツルは「帰る所はあるの?」と聞き、百合は「ない」と答える。「家族は?」と聞き、百合が答えないので、ツルは百合が戦災孤児だと誤解して「すまない事を聞いた。うちで店の手伝いをしてほしい。住み込みで働かないか?」と誘う。百合はお願いする。

 ツルの娘のもんぺを着た百合を見て、ツルは大きさが合って感心する。彰が百合に滋養をつけてほしいと「軍用粮精(キャラメル)」を持って来た。ツルは「甘い物は手に入らない」と教える。

 朝、百合が起こされ、母だと思って「放っておいて」と言うと、ツルだった。百合は井戸から水を汲み、テーブルを拭き、ツルと一緒に野菜をもらいに行き、客の接待をする。ツルは「だいぶ慣れてきた。もんぺが似合っている」と感心する。百合も「動きやすくていい」と感謝する。ツルは食事にサツマイモを出し「軍指定の食堂だけど、食料が手に入らない」と詫びる。

 魚屋の娘の千代がアジを持ってくる。千代は初日にすれ違った女学生だった。千代は基地に勤労奉仕に行っており、面白い人(石丸)がいると話す。すると店に石丸と彰など兵隊たちが来る。ツルは百合を「新しい看板娘」と紹介し、獲れたてのアジを刺身にする。

 自分達をお腹ペコペコ隊と名乗る陽気な石丸は「高知の生まれ。佐久間と同じ21歳、得意技元気、趣味元気、そして歌」と歌を披露しようとするが、板倉が止める。板倉は「大阪生まれの大阪育ちの若さ溢れる18歳」と自己紹介し、「このむっつりしているのが加藤さん。千葉出身で空手の達人」と紹介する。寺岡は「東京出身、32歳。隊員の中では2番目にお爺ちゃんです」と自己紹介する。最後に彰が「俺は秋田の生まれで…」と説明しようとすると、石丸が「生意気に早稲田の学生だ。哲学を専攻しているらしい、こんな小難しいのを嬉しそうに読める」と彰の本を取り上げる。出会って1週間でとても仲が良い。

 彰たちはツルに「軍用粮精」を差し入れする。百合がどこで手に入れたか質問すると、彼らは特攻隊員で、早ければ数日に飛び立つと言う。百合はショックを受ける。

 彰は百合に「ちょっと付き合ってくれ。見せたいものがある」と誘い、一面に百合の花が咲き誇る丘に連れて行く。

百合は18歳で、彰の妹と同じ年だった。彰は、妹は人一倍負けず嫌いで、百合と似ていると言う。彰は下の名前で呼ぶように言い、彰も百合を下の名前で呼ぶと言う。

 百合は「彰は特攻隊ですよね。何でそんな事するの?おかしくない?」と反発する。彰は「百合は真っすぐだな。なみみたいだ」と言うと、百合は「私、なみさんでないから」と怒って帰る。

 夜、寝床で百合は「小さい飛行機でバカでかい船に突っ込んでも、何もならない。日本は負けるんだよ」と呟く。

 彰が月を見ていると、石丸が来て「坂本たちは明日早朝出撃らしい。先越された。生殺しはたくさん。早く飛びたい」と言う。

 特攻隊員がツルに手紙を持ってくる。ツルは百合に「家族の手紙は検閲があって、内容によっては届かない時があるから、私が出しに行っている」と、棚にあった手紙も出しに行く。

 千代が魚を持ってくる。着ているシャツを百合が可愛いと褒めると、百合は「花柄の下着を婦人会に見られて叱られた」と、慌てて隠す。でも千代は胸の花の刺繍を見せて「石丸さんに見せたら、可愛いと言われた」と教える。料理をする千代を見て、百合は「いいお嫁さんになる」と感心する。

 石丸たちが店に来たので、百合が「千代ちゃんをお嫁さんにして」と頼むと、石丸は「生まれ変わったら」と答える。今朝、兵舎が空いたので、店に来たのだと言う。

 ツルは「アジ天にしよう。米が少しあるから炊こう」と言う。百合が金の心配をすると、ツルは「あの人たちは2、3日後、遅くて1か月後には飛び立つ生き神様」と教える。百合は「兵舎が空いたのはその事?佐久間さんはいつ?」と心配になる。寺岡は百合に、妻と娘の写真を見せ「冬に生まれて、まだ会っていない」と教える。百合は「会わずに出撃するのですか?」と疑問を口にする。寺岡は「俺の命で妻と娘を守れるのなら、満足だ」と言う。百合は「間違っている」と反発する。加藤が「何だと。俺たちは志願してきた。腰抜け扱いは許さん」と怒る。

 ツルは百合にアジ天を食べさせ、百合は美味しいと言う。ツルは百合を連れて、娘の月命日の墓参りに行く。隣町に嫁に行って幸せに暮らしていたが、空襲で子供と一緒に焼け死んだ。孤児は可哀そうなので、子供と一緒に死んで良かった」と言う。百合は「そんなのは良くない」と言う。ツルは「百合ちゃんは良い子だね」。百合「いい子じゃない。いつも母に酷い事を言っていた」。ツル「それでも母親は分かっている。命がけで子を守ろうとする」と言う。

 百合が買い出しの帰りに、路地で一人の男の子を見つけ、野菜をあげる。「父さんと母さんは?」「父さんは戦争で死んだ。母さんは爆弾で火事になって服に火がついて、消そうとしたけど、母さんが燃えて…」と話す。百合は男の子を抱きしめて「戦争はもうすぐ終わる。日本は負けるの。でも良い国になる。もう少しの辛抱」と教える。

 ところが警官が聞いており「今何と言った。日本が負けるだと。皆辛抱しているのに」と怒鳴り、警棒で殴ろうとする。百合は「本当の事を言った。日本は負けるんです」。警官「非国民」。百合「戦争に意味があるの?子供がガリガリに痩せて、私と同じ子が命を捨てて、どんな意味があるか言って」と警官に食って掛かる。

 彰が警官を止め、殴られる。ツルが「生き神様を殴っていいのか?」と言う。警官は「今日は見逃してやる」と言って去る。

 彰も怪我をして百合が謝ると、彰は「悪いのは警官だ。警官をあんな風にした何かが悪いんだ」と話す。彰は明日基地に来るように誘う。

 次の日、基地のグラウンドで、特攻隊員たちが野球をしていた。彰は投手で、安打を打たれる。彰は「あまり良い所を見せられなかった」と言うと、百合は「楽しかった」と答える。

 彰は百合をかき氷屋に連れて行く。百合は砂糖水が掛かった「みぞれ」で、彰は砂糖が上に掛かった「ゆき」だった。百合は「メロンやイチゴはないの?」と聞く。味を聞かれた百合は「幸せの味だ」と感想を言う。彰も味を聞かれて「幸せの味だ」と答える。

 鶴屋食堂で新聞を見ていた2人の特攻隊員は「どの記事も威勢の良いことを書いているが、フィリピンから撤退。東京は大空襲。大阪も」「逃亡した大将は加藤の父親。そのせいで日本は南方を奪われた」と話していた。

 ツルは百合に、着物を田島さんに持って行って、米に替えるように頼む。百合が「大事な着物なのに」と言うと、ツルは「兵隊さんより大事な物はない」と答える。

 百合は着物を米に替え、道を歩いていると、空襲警報のサイレンが鳴る。周りの人々は慌てて逃げる。飛行機の大群が焼夷弾を落下し、建物が燃える。百合は燃えている街に行く。辺りは火の海で、目の前で老人が機銃掃射で殺される。倒れてきた柱に百合の足が挟まり、動けなくなる。火に囲まれ「嫌だ。暑い。助けてお母さん」と叫ぶ。

 すると百合を探しに彰がやって来て、棒をテコにして柱を持ち上げ、百合を助ける。彰は百合を背負って逃げる。道端で、前の男の子が死んでいた。彰は「なぜあんな所にいた?」と責める。百合は「ツルさんが心配で」と言って、米を失くしたのに気づいて探そうとすると、彰は「米より命が一番だ」と言う。 彰は百合を背負って逃げる。

 しばらく走って、彰は百合を下ろす。近くで爆弾が爆発して伏せる。彰が「どれだけ心配したと思っているんだ」としかる。百合が「ごめんなさい。何で私のために?」と聞くと、「百合は私にとって大事だ」と言い、再び百合を背負って逃げる。

 兵舎で彰は眠れずに外に出ると、板倉もいた。彰は「暑くて眠れない。あと1月はこんなもの」と言うと、板倉は「その頃はいない。田舎に許嫁がいる。佐久間は百合ちゃんを残して死ねるか?」と聞く。彰は「百合は妹みたいな者。許嫁ではない」。板倉「妹とは便利な存在だ」と呆れる。

 鶴屋食堂は無事だった。近所の人が田舎に疎開すると、ツルに挨拶する。ツルも疎開を勧められるが「兵隊さんがいるから」と断る。

 今日は特攻隊員たちが店に来なかった。百合がふさいでいるとツルが「黙っていく人じゃないよ」となだめる。ラジオで特攻隊員の家族への伝言「剛は明日飛び立ちます。必ず敵空母を沈没させます」が流れ、百合はいたたまれずにラジオを消す。

 沈んだ顔の千代が鶴屋食堂に来る。続いて石丸が「腹ペコ航空隊1番機」と挨拶し、板倉、加藤、寺岡も来る。遅れて彰がやってきて、百合が「5番機遅い」と心配する。5人は食事を注文し、楽しく談笑する。寺岡が、彰、石丸、板倉に「3人、仲が良い。血が繋がっているみたい」と言うと、石丸が「皆、家族だと思っている」と言うと、皆静まり返る。

 石丸が「出撃命令が出ました。2日後に行きます」と報告する。ツルは驚くが「おめでとうございます」と励まし、隊員は「ありがとうございます」と答える。

 百合は「頭を整理したい」と外に出る。彰は「遠くに行くなよ」と注意する。百合は道端のベンチに座り「おめでとう。ありがとうございます。死にに行くんだよ。使い方間違っている。もう少しで戦争が終わるのに」と涙を流す。

 板倉がいなくなり、皆で手分けして探す。百合が橋で板倉を見つけ、彰も来る。板倉は土下座して「どうか見逃してください。私は死にたくないです」と頼む。彰は「俺たちは志願したではないか」と言うと、板倉は「覚悟はできていた。でも許嫁に会った。家族は空襲で死んで、あいつだけ生きているが、歩けない体になって。まだ16歳なのに。一昨日、死のうとしたらしい。彼女を残して死ねない」と言う。彰は見逃すが、石倉、加藤、寺岡が来る。

 加藤「逃げるのか。恥ずかしいと思わないのか。天皇のために命を捧げる帝国軍人の自覚がないのか」と叱咤する。板倉は「帝国軍人は国を救うのが役目。薄ぺらな飛行機で死ぬことではない。それより、愛する者と生きたい」。加藤「女か。この非常時に生き恥をさらして」と怒る。板倉は「生き恥ですか?加藤さんは敵前逃亡した父親の汚名を晴らすために、言っているのでしょ」と言う。すると百合は「生き恥って何ですか?生きている事は恥ずかしくない。板倉さんは生きたいの。それの何がいけないの?皆にも愛する人がいるはず」と加藤に食って掛かる。寺岡が「お前の必要としている人の所へ行け」と見逃し、彰も「俺たちの分まで生きてくれ」と励ます。板倉は走り去る。3人も帰る。

 百合は彰に、百合の花が一面に咲く丘に連れて行ってもらう。百合が「幸せの匂い」と言い、彰は「百合の匂いに囲まれていると、全部忘れられる。全部忘れて、何も考えたくない時がある」と言う。彰の号令で、2人が深呼吸する。百合が「体育の先生みたい」と言うと、彰は「教師になりたかった。子供達の未来を豊かにしたかった。子供達の中から未来を作れれば良いと。これから生まれる子供たちに、こんな思いをさせたくない」と話す。

 百合が「一緒に逃げよう。負けるんだよ、日本は。もうすぐ戦争が終わる。彰が言っても戦争が終わる」と必死に頼む。彰は「戦争に負ける事が怖くないの?悲惨な国にならないかと。俺たちが諦めたら、この国が終わる」と言う。百合は「終わらない。良い国になる」と言っても彰は信じない。彰「俺はこの時間を大切にしたい。百合に何もしてやれなかった」と言う。

 翌朝、百合が掃除をしていると、千代が作った自分の人形を持っていた。百合が「石丸さんにあげるんでしょ」と言うと、「皆で相談して、隊員さんに渡そうと」と答える。百合は「可愛い。石丸さん、喜ぶ。腹話術するかも。それから歌う」と言い、千代も同感する。

 鶴屋食堂で隊員たちが食事し、石丸が調子外れの『同期にサクラ』を歌う。寺岡が「いよいよ明日、出撃する。決して死出の旅に行くのではない。悠久の旅に行くのだ」と演説する。千代は奥から出てこない。百合が酒を追加しようとすると、寺岡が帰ると言い、「必ず敵艦を沈める。明後日の新聞を見てください」と言う。石丸は「残り40年の寿命はツルさんに上げる」と言い、彰は「美味しい料理のおかげで、元気でいられた」と感謝する。ツルは「ご武運をお祈り申し上げます」と祈る。

 千代が出てこないので石丸が呼び、涙ぐむ千代に「やっと現れたか。別れに泣いたらいけない」と言う。千代は石丸に自分の人形を挙げる。石丸は人形に「一緒に行くか?」「飛行機に乗る」と予想通り腹話術をし、「千代ちゃんありがとう。泣くな。君は絶対に幸せになる」と感謝の言葉を贈る。千代は「明日、見送りに行きます」と約束する。

 店の外で彰が「百合、幸せにな」と言うと、百合は彰にしがみ付き「行かないで。お願い」と頼むが「もうやめる。なみさんみたいに強い妹になれなかった。ありがとう」と言う。彰も「ありがとう」と言って別れる。

 翌朝、ツルが見送りに誘うが、百合は「昨日、ちゃんとさよならできたので」と断り、ツルと千代が見送りに行く。百合が部屋の掃除をしていると、棚にあった特攻隊員が家族に当てた手紙の束を落とす。その中に「百合へ」と書かれた彰からの封筒を見つけ、驚く。百合は自転車で急いで基地へ行く。

 基地の飛行場では特攻隊員の献杯が行われ、代表が「必ず敵艦を撃破します」と誓う。隊員が戦闘機で飛び立ち、見送りの人が滑走路脇で手旗を振る。寺岡は操縦席に妻と娘の写真を飾って出撃する。石丸は千代の人形を持って飛ぶ。彰は百合の花を持って飛ぶ。

 百合が滑走路にやってきて、飛び立つ彰の飛行機に向かって「彰」と叫ぶ。飛行機が飛び立っていく。風が吹き、百合が倒れ、気を失う。

 朝、制服姿の百合が防空壕の中のビニールシートの上で目覚める。外に出ると、住宅が広がる現代に戻っていた。百合が家に帰り、テレビを見ると6月15日で、半日しか経っていなかった。

 母が帰ってきて「大丈夫?怪我なかった?ごめんね」と言って百合を抱きしめる。百合も「ごめんね」と謝る。母は「お父さんのせいにして、みんな押し付けて。これからは百合の好きにして良い」と謝る。

 百合は父の遺影を見て、学校に出かける。学校で担任が来週社会科見学に行く、と教える。

 生徒たちは「特攻隊資料館」に行く。ゼロ戦が飾られているのを見学する。自由時間になり、百合が展示を見ると「特攻を免れた隊員。板倉和久。訓練中に病気が見つかり除隊。故郷で婚約者と結婚する」という表示と、老年の板倉と車椅子に乗った妻の写真を見つけ、驚く。さらに寺岡や加藤の写真と家族に宛てた手紙や、石丸が千代に宛てた手紙も展示されていた。

 そして彰が書いた百合への手紙もあった。「君と語った百合の花さくあの丘で、こんな手紙を書いても君を悲しませるだけかもしれない。だが俺はこの気持ちが海の藻屑として消えるのに耐えられない。君を妹みたいだと言ったのは嘘だ。君の事を愛していた。できるなら戦争のない日本に生まれて、一緒に暮らしたかった。百合の花と一緒で、純粋でいとおしかった。君の笑顔が続くことを願う。百合、一生懸命生きてくれ。平和で笑顔が絶えない世界を作ってくれ。今までありがとう」「佐久間彰。昭和20年7月7日戦死。21歳」とあった。それを読んだ百合は「ありがとう、彰」と言って床に泣き崩れる。

 学校の帰りに防空壕の前を通ると、入口は板で閉鎖されていた。入口の脇に百合の花が咲いていた。百合は「私の声が聞こえますか?彰が思い描いた未来を生きていますよ」と呟く。

百合は、鶴屋食堂で覚えたアジの天ぷらを作り、母親の弁当も作る。百合は「私。教師になりたい。大学に行かせて下さい。私、すごく幸せだと思う」と言い、2人で笑う。

 百合は「彰。あなたの事は絶対に忘れません。あなたが願った未来をせいぜい生きてみます」と誓う。

 (タイトル『あの花の咲く丘で、君とまた出会えたら』。エンドクレジット)

(写真は「映画com」「公式X」より)