『#マンホール』ネタバレの詳しいあらすじ | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

監督:熊切和嘉  2023年

主な登場人物(俳優)役柄

川村俊介(中島裕翔)主人公。不動産会社「CRレジデンス」営業部社員。

工藤舞(奈緒)川村の元カノ。

加瀬悦郎(永山絢斗)川村の同期。

折原奈津美(黒木華)10年前の川村の元カノ。

 

 不動産会社CRレジデンスに勤める川村俊介は、営業成績N0.1で上司、部下からの信頼が厚い。さらに社長令嬢との結婚も決まっており、将来的には会社を背負っていくことも約束されている。結婚式前夜、川村は後輩から相談があると渋谷のバー「HAL」に呼び出される。だが、待っていたのは川村の所属する営業4課のメンバー達で、彼を驚かそうとサプライズパーティを計画していたのだ。

 驚く川村へのサブライズの成功で、宴はおおいに盛り上がる。だが帰り際、川村は同期の加瀬に、実はわざと引っかかった振リをしたと話す。如才ない同期に苦笑しつつ、加瀬は結婚祝いのライターを川村に手渡す。

 川村はほろ酔い気味で一人帰路につくが、酒を飲み過ぎたのか、足がふらつく。暗い夜道をふらふら歩いていた川村は、蓋が開いていたマンホールに落ちる。

(タイトル『#マンホール』)

 目覚めると、川村はどこかの穴に落ちていた。底にはネズミの死体や虫たち、穴を見上げると満月が見えた。川村が立ち上がった瞬間、右太腿を激痛が襲う。転落した際に深い傷を負ったようだ。パイプから油がしたたり落ちていた。

 川村は足の傷をネクタイで縛り、痛みをこらえて梯子を上ろうとするが、梯子は途中で破損しており、手が届かない。ベルトを投げてひっかけようとしても無理。ジャンプして手を伸ばすが、梯子から落下し、怪我が酷くなる。

 上に向かって「誰かいませんか。穴に落ちてしまったんです」と叫ぶが、反応はない。時刻は深夜1時05分。コートのポケットを探すがスマホがない。鞄の中にあった、加瀬から貰ったライターを点火して明かりにして探し、落ちていたスマホを見つける。

 婚約者の中川さゆりに電話するが留守電だったので「帰り道に穴に落ちた。結婚式に間に合わないかもしれない」と吹き込む。次に友人、同僚に片っ端から電話をかけるが、深夜1時過ぎのためか、すべて留守電で連絡がつく人間はいない。

 自棄になっていると、ただ一人、5年前に別れた元カノの工藤舞から折り返しの電話がかかって来る。川村は「すまない。酔っ払って穴の中に落ちた。足を怪我して、出られない。今からこっちに来てくれないか」と頼む。川村がスマホのGPSで現在地を確認すると、渋谷区神泉町5丁目だった。舞は「仕事帰りだし、遠いし、警察を呼んだら」と言う。川村が「大事な用事があるので、警察沙汰にしたくない」と言うと、舞は川村が結婚する事を知っていた。でも、舞はしぶしぶ車で向かうと約束する。

 深夜1時半。雨が降ってくる。舞から電話が来るが、神泉町5丁目に来たが穴はないと言い、警察に電話するように助言する。舞が110番でなく、現地の警察署に電話した方が良いと言う。川村が渋谷警察署に電話すると、本人確認、どこで飲んだか、穴の大きさや様子などを聞かれる。警察は工事の穴でなく、使用していないマンホールではと言う。警察の担当に代わり、また同じことを聞かれて、川村はイラつく。警察は10分で着くと言っていたが、なかなか来ない。

 深夜2時半。雨が酷くなり、川村はコートを被り、ライターの火で暖を取る。舞からまた電話が来る。警察が来ないので、イライラした川村は舞に「本当に探したのか。本当に渋谷にいるのか」と疑う。舞は「5年前の事をまだ引きずっているの?」と聞く。川村は「雨が強くなってきて、寒さもきつい」と弱音を吐くと、舞は「渋谷に雨が降っていない。別の場所では?」と言う。川村は、渋谷でない事に驚く。舞は携帯を切る。

 川村は外を見るため、スマホを動画撮影にしてマンホールの口の上に放り投げる。なかなかうまくいかず、何回か投げているうちに、スマホが梯子に引っ掛かる。

 穴の中の配管からガスが漏れ、川村はペンケースの中にあったセロテープで穴をふさぐ。

 川村はペンケースを投げてスマホに当てて落とす。画像を見ると、見知らぬ建物が映っていた。

 警察から電話がかかって来て、巡回中の警官が探したが、蓋が開いたマンホールはなかったと言う。警察は、酔っぱらいのいたずら電話だと疑う。

 川村はSNSのアカウントを「#マンホール男」の名で取るが、若い女性の方が助けに来てくれると思い、「#マンホール女」にする。ネット上のアイドルの写真を加工してアイコンにし「渋谷で飲んでいたら、マンホールに落ちた。GPSが故障して、どこか分からない。助けて」と投稿し、外の風景の写真を添付する。

マンホールの小さな横穴から泡が流れてくる。川村がスマホで泡を検索すると「有毒物質」と出る。

 舞から、川村の足の怪我を心配する電話が来る。川村が傷の写真を撮って送ると、看護師の舞は「このままだと壊死するかもしれない。傷を縫合しなければならない」と言う。川村は針と糸の代わりになる物を持ち物から探すと、ホチキスを見つける。

 川村は舞の指示で、ハンカチを雨水で濡らして傷口を拭く。川村は傷口を合わせてホチキスの針を刺すが、余りの痛みに悲鳴を上げ悶え苦しむ。それでも痛みを耐えながら、続けて傷にホチキスの針を刺す。舞は川村を労わる。川村はさっき疑ったことを謝る。川村は舞の指示で、傷口にハンカチを巻く。

 舞は、川村の「#マンホール女」とツイート数が凄い事になっていると教える。からかう物も多いが「深淵のプリンス」から「正義に乾杯!マンホール姫を守る!」との投稿もあった。「月か星は見えますか?」の質問に、スマホで方位を確認し「今は雨で見えないが、さっき北北西に月が見えた」と返信する。また「いつから雨が降った?」の問いに「1時半頃」と答えると、「北関東では」の返信が来る。「落ちたのではなく、拉致されて落とされたのでは。誰かの恨みを買いましたか?」の質問に「兄が恨まれたかも」と答える。「兄の情報をください」と言うので、「川村俊介。不動産会社CRレジデンス勤務」と教える。

 川村は舞に電話し「渋谷のバー『HAL』の防犯カメラの映像を見てくれ。誰かが酒に睡眠薬を入れたと思う。そいつが犯人だ」と頼む。

 泡が増え、雨も強くなる。

 SNSに川村の住所、出身校、部活動、趣味、仕事、社長令嬢と結婚予定、など、様々な情報が出る。「50人以上と付き合っていた」「同僚と浮気していた」など、いい加減な情報も出る。 「結婚すると知った女に嫉妬された」「嫉妬するのは女だけじゃない。出世を邪魔された恨みでは」などの意見もあった。同期の加瀬が川村に嫉妬しているという情報が上がり、加瀬の個人情報もネットにさらされる。

 川村は、パーティーの動画を見直す。パーティーの最中、加瀬だけが楽しそうでなかった。川村は舞に電話し「加瀬が犯人だ。彼が酒に薬を入れた。防犯カメラの映像で確認してくれ」と頼む。舞は「店が閉まっていた」と教える。

 川村は、もう一度パーティーの映像を見直す。営業4課の社員は11人だが、フードを被って顔が見えない12人目の人物が映っていた。川村はその写真を「犯人です」とSNSに挙げる。

 

 見知らぬ番号の電話がかかって来て、川村が取ると加瀬だった。加瀬は「大変なことになっている。SNSの『#マンホール女』で俺が犯人扱いされ、悪戯電話が鳴りっぱなしだ」と言う。ドアのチャイム音も聞こえる。川村は「白々しい。マンホール女は俺だ。お前が犯人だろう」と怒鳴る。加瀬は「俺はお前をねたんだが、それだけで人を殺そうと思わない」と言うと、川村は「人間は簡単に一線を越えられる」と言い放つ。「お前さゆりのこと好きなんだろ?」と責めると、電話が切れる。

 投稿に「マンホールの蓋のデザインで場所が分かる」とあったので、川村は動画に映っていたマンホールの写真を上げる。すると、電車の音が聞こえたので、それを録音して上げ、「何かわかりませんか?」と尋ねる。

 その後、「深淵のプリンス」が、加瀬が自宅でケガをさせられた動画を載せる。

 マンホールのふたのデザインから、ここは茨城県古河市青山町と分かる。電車の音から、青山町の廃工場のマンホールではないかと言う。川村が助けを求めると「LLL」と言うユーチューバーが向かっていると連絡が入る。

 いつの間にか、泡は胸のあたりまで達していた。川村は梯子に登ろうとすると、ロープがひっかかって登れない。泡に埋もれるが、やっとロープを外して泡から出る。

 現場に「LLL」が来て、救助の様子をライブ配信するが、アクセス数目当てで、真面目に探そうとしない。結局、廃工場には川村が落ちたマンホールはなかった。

 マンホールに泡でいっぱいになり、川村も泡に埋まる。川村は配管の穴をふさいだテープを取り、漏れたガスにライターで点火する。爆発が起こり、泡が吹っ飛ぶ。

 舞から、川村を心配する電話が来る。舞は車で古河市に向かっていると言う。舞が「私を振ったのは、社長の娘と結婚するため?」と尋ねる。川村は否定し、5年前に急に別れたことを謝る。舞は「結婚おめでとう。幸せにしてやってね」と祝福する。

 朝になる。マンホールの底の石が崩れ、ミイラ化した死体が現れる。川村は「何で!何で!」と半狂乱になって叫ぶ。舞に「場所が分かった。ここは埼玉県大塚村、岩崎小学校跡地」と教える。舞が「何で分かったの?警察に連絡したら?」と言うと、川村は「警察はだめだ。早く来てくれ」と頼む。

 (回想)プラスチックのリサイクル工場。東京の大きな不動産会社に就職が決まった川村が、社員に見送られ退職する。アパートに帰ると、母の仏壇に線香を供える。ドアのノックに出ると、吉田がいて川村を刺し殺す。吉田は川村の死体をロープで引きずると車に乗せる。あるマンホールの蓋を開けると、中に死体を落とし、土をかぶせる。吉田は闇整形外科医に行き、「この男になりたい」と川村の写真を見せる。吉田は手術で川村そっくりの顔になり、川村になりすます。

 川村は折原奈津美に電話する。川村は「10年ぶりだ。川村俊介だ」と話すが。奈津美は無言のまま。川村は「俺が偽物だと分かっているから黙っているのだろう」と話す。

 SNSに川村は「ようやく犯人が分かった。幼馴染だ。2人は付き合っていたが10年前に別れた。 その後も会いたいと連絡があった.警察沙汰にしたくないので、みんな落ち着いて」と書き込む。その一方で別のアカウントを取り「犯人の名前は折原奈津美」と書き込む。また「深淵のプリンス」に「あなたは真のヒーローです。正義に乾杯」と書く。さらに別のアカウントで「折原奈津美に死を。殺せ!殺せ!」と狂ったように書き込み、高笑いする。

 舞から「あと30分で着く」と連絡が来る。舞が来るのを待っている間、ネットで電車の時間と音から場所が「埼玉県大塚村岩崎小学校跡」と特定される。川村は慌てて「さっき脱出できました。もう大丈夫です」と投稿する。

 すると、埼玉県警から電話が来て「加瀬さんから110番通報があって、川村さんは『マンホール女』ですね。今、警察が岩崎小学校跡地に向かっています」と連絡が入る。川村は「今脱出できました」と断ると「怪我をしていますね。救急車も向かっているので、現場で待機してください」と言う。川村は「余計なことをして」と怒り、死体に土をかぶせる。

 その時、車の音が聞こえる。舞から電話が来て「今着いた、ロープを下ろす。端を括り付けた。上で待っている」と言う。ロープが下りてきて、川村はロープを掴んで登る。手が伸びてきて、川村は引き上げてもらいやっと地上に出る。

 地上で待っていたのは舞でなく、折原菜津美だった。菜津美は「久しぶり。吉田君」と言い、川村(吉田)が気を失っている間にスマホの電話帳に工作して、工藤舞に電話したら、奈津美に繋がるようにしたと言う。川村が履歴の電話番号を見ると、中川さゆりや加瀬、工藤、友人、同僚の電話番号は全て奈津美の電話番号になっていた。奈津美は「結婚おめでとう。幸せにしてやってね」と、さっき工藤が言ったのと同じセリフを言う。

 奈津美は「ここが岩崎小学校だと何で分かった?」と聞き、「盗んだものは、ちゃんと返しましょう」と言って、川村に覆い被さり、メスで顔を切りつける。

 川村はなんとか払いのけ「誰にも気づいてもらえない。生まれ変わるしかなかった。子供が産まれるから、一度だけでも子供を抱きたい。だから、時間が欲しい」と菜津美に命乞いする。

奈津美がメスを落とし、去って行こうとすると、川村がネクタイで奈津美の首を絞め「俺は他人の人生を奪って生きてきた。ここで終わるわけにはいかない」と言う。

 すると、矢が飛んできて川村に当たり、川村はマンホールに落ちる。「深淵のプリンス」である少年が、奈津子が「マンホール姫」、川村が犯人だと思って、川村にボウガンの矢を放ったのだ。「深淵のプリンス」は「正義に乾杯」と書き込む。

 マンホールに再び落ちた川村が上を見上げると、ロープが引かれていく。マンホールの口から少年がのぞき込む。川村が「お前は誰だ?」と書くと、少年は「深淵のプリンス」とSNSで答え「マンホール姫を助けることができた」と書き込む。少年はマンホールのふたを閉める。

 川村はライターの火をつけ、水面に映る自分の顔を見つめる。川村は顔を触り、悲鳴が上がり、ライターの火が消える。スマホに中川さゆりから「いよいよ結婚式、ドキドキするね」とメールが届く。

 (エンドクレジット。「青山町下水道」と書かれたマンホールの蓋。蓋が少し動く。)

(写真は「IMDb」「映画com」「公式Twitter」より)

 

脚本で感心した点

○川村に加瀬がライターをプレゼントする。→ライターを明かり、暖房、ガスの爆発に使う。

○舞(奈津美)が110番通報でなく、渋谷署に電話するように川村に言う。→110番通報だと現地の警察署に繋がり、ここが埼玉県大塚町だとばれる。

○川村が女性名「マンホール女」でアカウントを取る。→「深淵のプリンス」が、奈津子が「マンホール姫」、川村が犯人だと思い、川村をボウガンで襲う。

○川村が友人、同僚に電話するが、全員留守電だった。→奈津美が川村のスマホの電話帳の電話番号を全て奈津美の電話番号に変えた。

○加瀬から電話が来るが、登録していない電話番号だった。→奈津美が川村のスマホの電話帳の電話番号を全て奈津美の電話番号に変えた。

○川村が落ちた埼玉県大塚町のマンホールの蓋が、茨城県古河市青山町のマンホールの蓋になっている。また、「LLL」が行った青山町の廃工場のマンホールに蓋がない。→奈津美は青山町のマンホールの蓋を盗んで大塚町に持っていき、場所の偽装工作をした。

○吉田が殺した川村の死体をロープで引きずる。→川村がロープに絡まり、泡に埋まる。

○「マンホール女」が川村だと知っているのは加瀬だけ。→加瀬が警察に110番通報し、警察が「マンホール女」が川村だと知り、警官を青山町に向かわせる。

 

映画でおかしいと思った点

○川村が「深夜1時に月が北北西に見えた」と報告する。→見えていた月は満月で、季節は冬。埼玉県での満月の0時の高度は2022年12月7日0時、80.2度。2023年1月7日0時、79.5度。2023年2月6日0時、75.0度。深さ8m。直径1.5mのマンホールの壁際からの仰角は80度なので、12月や1月の南中した満月ならギリギリ見えるかも。午前1時になると5度ほど低くなるので見えなくなる。しかも方角は北北西ではなく、ほぼ南南西である。

○フォロワーが見えている星座を聞く。→マンホールの底から見える視野の直径は約10度と狭いので、何星座が見えているか分からない。分かったとしても、東京都と埼玉県の緯度の差は約0.2度、北関東でも約1度差なので、違いが分からない。

○10年前の死体に肉が付いている。→10年も土の中にあったら、肉は腐って骨だけになっているのでは。