『女子高生に殺されたい』原作マンガのネタバレの感想と映画との違い | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

 映画『女子高生に殺されたい』の「ネタバレの感想・緻密に練られた計画で紡ぐ異常な犯罪に感嘆」に書いたが、脚本がスリリングで、非常に緻密な構成になっていたので、原作のマンガがどのような物か知りたくなった。書店で『女子高生に殺されたい・新装版』を売っていた。全2巻をバラバラに買うより安いし、「描きおろし」も付いているので、お得な気がして購入した。表紙が佐々木真帆(南沙良)のようであるのも魅力である。

 原作マンガと映画の主な違いは以下のとおりである。

1.春人が誰を狙っているか、キャサリンは誰か、と分かる時点

 マンガでは、東山春人が殺されたい相手が佐々木真帆だと、すぐ第1話で公表している。ネタを早くバラし過ぎる気がする。また、真帆の別人格のキャサリンを使って自分を殺害させようとしていると、第8話で明かされる。

 映画では佐々木真帆、小杉あおい、君島京子、沢木愛佳の4人の女子高生が登場し、真帆は誰に殺されたいのか、謎めいた展開になっている。また春人が女子高生を犬で襲ってキャサリンが出現するが、その女子高生の顔は見せず、謎のまま話が進む。映画の展開の方が、スリリングで良いと思う。なお、君島京子と沢木愛佳は、映画のオリジナル登場人物だった。

2.春人の二鷹高校への赴任時期

 マンガでは真帆が二鷹高校に入学する3年前から赴任していた。春人は真帆が小学生に頃からずっと付け狙って、入念な準備をしていたことが分かる。二鷹高校に入学することを、真帆が中学の時に予想したのだろうが、もし真帆が別の高校に入学したら、どうしたのだろう?

 映画では、東山先生が二鷹高校に赴任したのは、真帆が2年生になった4月である。この方が、犯行が確実だろう。

3.春人が真帆を犬で襲った時期

 春人が真帆を犬で襲い、真帆の心の中にキャサリンが存在している事を証明したのは、真帆が小6の時でかなり早い。キャサリンの存在を確認してから、入念な準備を始めたのだろう。春人は中学校の運動会に行ったり、周辺に何度も姿を現し、ずっと真帆を監視していたと分かる。

 映画は高校2年から始まるので、春人が真帆を犬で襲ったのは、犯行直前である。映画は上映時間が限られているので、単純にしたのは仕方ないだろう。

4.五月の登場時期

 映画では、五月は後半に登場するが、原作マンガでは第4話ですでに登場する。また、五月が春人の計画をUSBメモリーで知り、二鷹高校に赴任したのは春人の反抗を阻止し、春人の病気を治すと言う強い意志を持っている事が分かる。マンガの方が五月の描写が詳しい。

 映画では前半は、春人は誰を狙っているのか、キャサリンとは誰なのか、それに観客を集中させるために、五月の登場は後半になったのだろう。映画でも五月は春人の計画を知っていたが、春人の病気を治したいと言う意思は、最後に表明される。

5.あおいの能力

 マンガでは、あおいは地震を予知する能力を持っている。緊急地震速報が、初期微動を地震計が感知して主要動がやって来るのを予報するように、真帆は地震発生による磁気や電波のような異常を感知できるのかもしれない。また、あおいは教室では「皆の声が聞こえる」と言い、春人を「怖い先生」と言い、春人の犯行直前には震えていたように、人の心を何となく感じることができるようである。アスペルガー症候群で、記憶力が良く、知能が高い。

 映画では地震予知の他に、魚の心や犬の心が分かるようである。春人を怖いと感じ、アスペルガー症候群で、記憶力が良く、知能が高いのは、漫画と同じ。

6.真帆に春人を殺害させる方法

 マンガと映画の一番大きい違いは、真帆に春人を殺害させる方法である。マンガでは春人は真帆を森の奥に誘って首を絞めてキャサリンを出現させようとする。キャサリンは春人を殺害後、沢に投げ飛ばすだろうと言うが、そんなに上手くいくだろうか?意識が戻った真帆が春人の死体を発見し、自分が春人を殺害したと知るのではないだろうか。

 映画の方は、首にロープを巻いた春人が、劇の上演中にキャサリンに首を絞められて殺害され、その後幕が降ろされた時に首にロープが巻き付いた春人の死体が発見されて、事故死と見なされる、と言うものである。こちらの方が完全犯罪になるだろう。

7.春人の犯行の阻止の仕方

 春人の犯行の止め方も違う。マンガでは真帆の居場所をGPSで雪生と五月が探す。電波が弱いので、最後は雪生が真帆のシャンプーの臭いを辿って、真帆を探し出し、春人の犯行を止める。どれだけ雪生の嗅覚が鋭いのか、安易な気がする。

 映画は、五月が劇の始まる前に、春人に睡眠薬入りのコーヒーを飲ませて眠らせ、犯行を阻止しようとするが、逆に五月が睡眠約入りのコーヒーを飲まされて眠ってしまう。意識を取り戻した五月は、犯行に間に合うのか、と言うスリリングな展開になっている。

8.キャサリンの出現

 マンガでは、五月の治療により、真帆とカオリの人格の統合が進み、春人の犯行時にはキャサリンが出現しない。これにはがっかりした。

 映画では演劇『エミリーの恋人』が上演され、京子が「キャサリン。キャサリン」と連呼する声でキャサリンが出現する。こちらの方がスリリングな展開になっている。しかも8歳の真帆からキャサリンの人格が生まれるきっかけになった、映画『エミリーの恋人』を上手く使っているのに感心した。さらに、カオリとキャサリンの人格が統合すると真帆の人格が消えるので、あおいが必死に「私が真帆を守る」と言う、感動的な展開になっている。

9.犯行を阻止された後の春人

 マンガでは、五月に犯行を阻止された春人は、五月の思いを知り、再び一緒に暮らし始める。好きだと告白した雪生は真帆(+あおい)とデートし、微笑ましい展開である。

 映画では、春人は首にロープが巻かれたまま宙吊りになり、窒息死寸前になったせいか記憶を失っていた。五月は春人に記憶を取り戻そうと必死になり、春人の病気を治すと誓う。雪生が真帆に告白するのはこれからだが、きっと成功するだろう。

 ただし、マンガも映画も、春人はまだ「女子高生に殺されたい」と言う願望を密かに持っている事をほのめかして終わる。どちらも余韻を残した良い終わり方である。

10.さらにその後の春人

 マンガの新装版の本編終了後の「描きおろし」では、春人は変装して、女子大生に成長した真帆に殺される計画を進めているようである。催眠療法でキャサリンを出現させるのだろうか。わずか8ページなのが残念である。ぜひこの続きを見たい。

 マンガの続編が書かれたら、ぜひ映画も続編を制作して欲しい。