『パラサイト 半地下の家族』ポスターに込められた意味を解読する | アンパンマン先生の映画講座

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映画の面白さやストーリーの素晴らしさを伝えるため、感想はネタバレで、あらすじは映画を見ながらメモを取って、できるだけ正確に詳しく書いているつもりです。たまに趣味のAKB48のコンサートや握手会なども載せます。どうかご覧ください。

『パラサイト 半地下の家族』のポスターは記念撮影風の物(タイプAと仮に呼ぶ)と、庭で撮影した物(タイプBと仮に呼ぶ)がある。

この他にも様々なバージョンの物があるが、一番多く見かけるタイプAとタイプBについて考察する。この2種類のポスターはポン・ジュノ監督がデザインしたそうだ。映画を見る前から、このポスターの構図に、かなり作為的なものを感じた。映画を鑑賞した後、ポスターに監督の意図が込められていると確信した。そこで、ポスターに込められた監督の意図を私なりに解読してみた。

 

 まず、タイプAのポスターから

①ポスターに写っている登場人物は何人?

 ポスターに記念撮影風に写っている人物は、後列左から順に

 キム・ギテク  パク・ダヘ   パク・ドンイク キム・ギウ

 キム・ギジョン パク・ヨンギョ パク・ダソン  キム・チュンスク

 の8人である。ところで左下の足は誰だろう。ここに写っていない家政婦のムングァンの足と思われる。しかも横たわっているので、彼女が殺されることを予告していると思われる。

 さらに左上にはダソンが描いた絵が写っている、この絵はチンパンジーでも自画像でもなく、ムングァンの夫であるグンセを描いたと、後に明らかになる。つまりグンセも写っている事になる。

 したがって、ここに写っている登場人物は10人である。

②配置の縦の関係は?

 写っている10人の配置を、まず縦に見てみよう。右側から後列・前列の順に、

 キム・ギウとキム・チュンスク  キム家の息子と母親。

 パク・ドンイクとパク・ダソン  パク家の父親と息子。

 パク・ダヘとパク・ヨンギョ   パク家の娘と母親。

 キム・ギテクとキム・ギジョン  キム家の父親と娘。

 後列・前列、男性・女性はバラバラだが、親子関係である。

 さらに、左端のグンセを描いた絵とムングァンの足であるが、グンセとムングァンは夫婦関係である。親子関係ではないが、ちゃんと家族関係になっている。これは分かりやすいと思う。

③配置の横の関係は?

 では横の関係は?横の関係は隣ではなく、一人置きに見てみよう。後列左から、

 キム・ギテクとパク・ドンイク   運転手と主人。

 パク・ダヘとキム・ギウ      教え子と家庭教師(恋仲とも言える)。

 キム・ギジョンとパク・ダソン   家庭教師と教え子。

 パク・ヨンギョとキム・チュンスク 夫人と家政婦。

 足のムングァンとパク・ヨンギョも、家政婦と夫人の関係である。

このように一人置きに見ると、強い関係が見えてくる。ただし、グンセの絵とパク・ダヘの関係が分からない。グンセと関係が深いのは、幽霊だと思ったパク・ダソンか、彼が殺害しようとしたキム・ギウだが。

④目隠しの意味は?

 写っている人物には、全員目隠しが付いて、全員犯罪者に見える。しかもキム家は黒で、パク家は白である。それぞれの犯罪を家族別に検証してみよう。

キム家

キム・ギウ…私文書偽造、住居侵入で起訴されたが、他にキム家は全員共通でパク家の食べ物を食べた窃盗と、グンセとムングァンの監禁など。

キム・チュンスク…キム・ギウと一緒に私文書偽造、住居侵入で起訴されたが、他に窃盗、監禁、グンセの殺人(正当防衛と見なされて不起訴か?)、死体が見つかっていないので起訴されなかったが、ムングァンの殺人。

キム・ギテク…逃亡したため起訴されなかったが、当然、私文書偽造、住居侵入、窃盗、監禁、パク・ドンイクの殺人(未遂?)、ムングァンの死体遺棄など。

キム・ギジョン…死亡したので起訴されなかったが、私文書偽造、住居侵入、窃盗、監禁など。

パク家

パク・ドンイクとパク・ヨンギョ…ドンイクが車内に落ちていたパンティーを見て「カーセックスでパンティーは置いて行かない。コカインをやったのでは」と言っていたので、コカインに詳しいようだ。ソファーでドンイクがヨンギョを愛撫している時、ヨンギョは「コカインが欲しい」と言っていた。2人はコカインの常習者では?

パク・ダヘとパク・ダソン…この2人の犯罪はよく分からない。ダソンは家中を遊び場にしているようなので、器物破損くらいはある気がするが。

ムングァン家

ムングァン…夫に食べ物を与えた窃盗、住居侵入ほう助、キム家への恐喝。

グンセ…住居侵入、食べ物の窃盗、キム・ギジョンの殺人、キム・ギウの殺人未遂。

⑤足元の関係は?

パク家は全員靴を履いているが、キム家は全員裸足である。キム・チュンスクの右足には、便所コオロギが留まっている。これはパク家が裕福で、キム家は貧乏だという事を表しているのではないだろうか。倒れているムングァンも貧困層で裸足である。

⑥ダソンが描いた絵の意味は?

 前に述べたようにダソンの絵は、グンセを描いている。右下の黒い部分をキム・ギジョンは「ダソンの心の闇」と適当に説明していたが、グンセが暮らす地下室の闇だろう。その上にはパク家の庭と思われる緑の芝生とインディアン・テント、そして青空が描かれ、右には上向きの矢印まである。つまり、グンセは地下室から上に移動して青空の庭に現れるという意味になる。グンセを一瞬見ただけでここまで読み取ったとは、描いた当時に小学校1年生とは思えない、卓越した才能である。しかも、この絵は家族の写真と一緒に飾られている。つまり、グンセは家族の一員であるとも受け取れ、不気味である。

⑦山水景石の意味は

 グンセを描いた絵の下には山水景石が置かれている。グンセが後で山水景石を凶器に使う意味だろう。

 タイプBのポスターでは、キム・ギウが山水景石を持っている。幸せを呼ぶと言う山水景石は、確かに最初は家族全員がパク家に就職する幸せをもたらしたかも知れない。しかし、後でギウはグンセにこの石で叩かれて重傷を負う。幸運の石とは思えない。山水景石は水を吸うと色が変わるらしい。山水景石が水を吸って色が変わった大雨の日から、キム家の運命の色が変わったのかもしれない。

 また、部屋が浸水した時に石が水に浮いてたので、軽石の一種のようだ。このくらいの大きさの石で叩かれたら頭蓋骨陥没で死亡すると思うが、軽かったのでギウは一命をとりとめたのだろう。

⑧撮影した場所はどこ?

 左側に階段、右側に台所が見えるので、この写真はリビングで撮影したはずである。ところで、人物の背後には、大きなガラス壁の向こうにインディアン・テントが建てられた庭が見える。ところが、実際の庭は人物の手前にある。映画中でリビングを写した写真と比較してほしい。つまり、この記念撮影風のポスター自体が監督のトリックだった。

 

タイプBのポスター

 日本版タイプBのポスターは、オリジナルの韓国版や諸外国のポスターと構図が違う。

①日本版は左下の足がない

 韓国版のオリジナルの左下には、タイプAと同じムングァンの足が写っているが、日本版タイプBにはない。ムングァンの死を秘密にしたかったのだろうか?でも日本版のタイプAにはしっかり写っているので、その意図が分からない。

 なお、タイプBの足は「足が細いので、庭で死んだキム・ギジョンの死体」とするサイトをいくつか見つけたが、タイプAとタイプBの足は全く同じ物である。フランス版のタイプAのポスター(色を反転した)を紹介する。タイプAとタイプBの足は全く同じだと分かるだろう。しかも、足の位置が他国のタイプAとずれているので、合成だと分かる。

②日本版は全員の目隠しが白

 オリジナル版はタイプAと同じで、目隠しの色がキム家は黒でパク家は白である。ところが日本版では全員白の目隠しである。なぜだろう?これだとキム家とパク家は同じ罪になってしまう。

このように2点もオリジナル版と変えた理由を、日本版ポスター制作者に聞きたい。

③構図の意味。

 実は、タイプAと違って、構図の意図が読み取れない。

 キム・ギテクが一番前にいるのは、キム家の父親であり、上で述べたように罪が重いからか。

 その後ろにキム・ギウがいるのは、今回の事件の源だからか。彼は山水景石を持っている。パク夫妻を石で襲うようにも見える。映画ではそんな場面はないが。

 オリジナル版では左の一番前にムングァンの足が見え、タイプAと同じく殺されることを予告しているのだろう。ただしガラスには映っていない。(合成だから?撮影者が写っていないのは、ギウが開けたガラス戸の正面にいるからだろう)

 ガラスの前の椅子にパク・ドンイクが寝そべっている。パク家で一番手前にいるのは、やはり父親で重要人物だからか。

 ドンイクの隣に腰かけているのはパク・ヨンギョである。ドンイクの妻だから2番目?

 リビングのガラスの向こう側にパク・ダソンがいる。それは…。 

 キム・ギジョン、キム・チェンスク、パク・ダヘ、(グンセも)が写っていないのはなぜ?写っている人物、写っていない人物の共通点が分からない。分かる人がいたら教えて欲しい。

(写真は「IMDb」より)

 

※新たに分かった事があったので、2020年11月16日に『パラサイト 半地下の家族』ポスターに込められた意味を解読する(改訂)」を掲載しました。そちらもご覧になって下さい。 

 

 

 

 

 

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