
秋が来ると空を眺めるのが嬉しくなりますね
春は曙、秋は夕暮れが良いと、かの歌人もおっしゃるように、秋は茜色に染まった夕暮れが美しいですね
再び日本の秋の伝統色と、秋の日本画をご紹介します
太陽が西に傾くと横からの光の波長が伸びて、長波長の赤が通りやすくなり、空が赤く染まります
実際の茜色は茜草の根で染めた暗い赤です
茜色のような赤が際立つ日本画と言えば…
藍染めの暖簾から、顔を出した瞬間に赤とんぼがひらり…
この方、大店の若女将のような雰囲気がありますね
商売繁盛で外に出かける暇もない中、ふとした瞬間に小さい秋を見つけましたね^^
髪飾りの赤、とんぼの赤、口紅の赤、半襟の鴇色が際立つ美しさです
(青系の伝統色)
青系の秋の伝統色は少なく、少し灰色が混ざった納戸色や錆納戸などがあります
縹色が美しい日本画と言えば…
透けたような単衣の着物の柄には、桔梗や白菊、女郎花が描かれ、季節は初秋の頃です
綴れ織りのような鼠色の帯や、袖口から見える枯野色の襦袢や七宝柄の半襟が上品です
季節を楽しむ方法の一つに、着物の色合わせや柄選びがありますが、伊藤小坡は、渋くて粋な着物を着こなす女性を描く達人ですね^^
いちじくが熟したような色合いです
飛鳥時代や奈良時代には、役人の装束の色とされていました
いちじくが描かれた日本画と言えば…
いちじくの中心にほんのりと深緋色が見えます
収穫の時期には少し早い、緑とわずかな赤紫色のアクセントカラーに、季節は初秋の頃でしょうか?
葉の一枚一枚、実の一つ一つに色のぼかしが入り、奥行きが感じられます
(緑系の伝統色)
色彩辞典で確認すると、青みがかった緑色です
秋草を描いた日本画と言えば…
酒井抱一は尾形光琳が描いた風神雷神図屏風の裏に夏秋草図を描いています
雨に濡れた夏草図は雷神の裏に、風になびく秋草図は風神の裏に描かれ、表と裏が共鳴しあっているようです
光琳の描いた天空の神に対して、抱一は地面の草花を選んだ事が、光琳へのリスペクトを感じます
この秋草図は、のわけ(台風)の後、風が右から左に流れていく様が、夏が過ぎ季節が入れ替わった事を表現しています
(黄色系の伝統色)
類似色には、鬱金(うこん)等があります
朽葉色が美しい日本画と言えば…
秋雨の霧の中、渓谷の細い道を雨笠をかぶって二人の旅人が麓に降りようとしています
山越えをしてようやくたどり着いた安堵感と谷間に色づいた朽葉色の葉が温かくて風情がありますね
(無彩色系の伝統色)
開いたすすきの穂が光りに当たってキラキラしていますね
純白の類似色には卯の花色や雪白等の伝統色があります
風になびくすすきの穂と満月は、まさに秋真っ盛り!
この草原の作品を見ていると、阿蘇山周辺の一面のすすき野原を思い出します
その他、全て秋色で描かれた日本画と言えば…
どのお野菜も生き生きとして美味しそうです👀
実りの秋を象徴する茸に野菜や果物が、10メートルぐらいの巻物にリズミカルに配置され描かれています
伊藤若冲は京都の青物問屋の息子として日頃から野菜や果物などを見て育ち、野菜は身近な素材でした
美味しいよ!食べて!と言わんばかりに並んでいる姿に、野菜の一つ一つが擬人化された身近な人のように見えて来るから不思議です👀
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日本の伝統色の秋色は、日本の気候が密接に関係して、湿度が微妙に混ざりあった、ディープトーンやダルトーン、グレイッシュトーンが多く、ビビッドな原色やパステルカラーには無い情緒がありますね^^