やや暗い紫みを帯びた赤い色で、もともとはインドのガンジス川流域に成育するラック虫(貝殻虫の一種)から分泌される色素によって染められた染料の色です


インドでは、紀元前からこの染料を輸出しており、日本にも奈良時代にはすでに入ってきたと言われています


一方、中南米ではサボテンに寄生するコチニールという虫から赤を採る方法が行われており、16世紀スペイン軍のメキシコ征服によって渡来したと言われています


その鮮やかな深い赤は、異国の色として人気を博し、戦国武将達がまとっていた陣羽織等に染められました





強い興奮性を持った赤を少し抑えた臙脂色は、あの著名な詩人にも詠まれています


  臙脂色は  誰にかたらむ  血のゆらぎ 
  春のおもひの  さかりの命


ご存知、与謝野晶子の乱れ髪です


高校一年生の時、現代国語の授業でこの詞に触れ、そこに込められた熱い思いを知り、ドキドキした記憶が蘇ります💕


   えんじ色に   人は袂を   染めなれて
   まだしと云ひぬ    わが濃紫
  (与謝野鉄幹)




臙脂色のような濁りを含む赤は、赤が持つ強いエネルギーがやや内向した抑えられた情熱や蓄積された思いなどが秘められ、この成熟な色に思いを託し、内なる心情を表現しています




臙脂色が好きな人は、外向的で情熱を心に秘め、大人の魅力にあふれている人が多いようです



臙脂色のような深い赤が印象的な絵画と言えば、高島野十郎の“蝋燭”が浮かびます






高島野十郎は、独学で絵の道に入り、深い精神性を湛えた独特の写実を追求した画家です


終生家族を持たず、画壇とも一切関わらず、仏心厚く、隠者のような孤高の人生を送っています

高島はこの“蝋燭”を何枚も作品に残しています❤


揺らめく蝋燭の炎と、深い赤の背景色に画家の秘められた情熱と命の尊厳を感じます😊


この他にも、高島野十郎には臙脂色のような深い赤が印象的な作品があり、どれも色彩調和が美しく画家の情熱が見え隠れしています(^.^)


高島野十郎作、“こぶしとリンゴ”




高島野十郎作、“けし”




深まる秋…木々の葉っぱや木の実がそろそろ色づきはじめますね🎶


臙脂色を探しに出かけてみませんか😄



(昨年秋の六甲山高山植物園)


気持ちがアップして華やかな気分になれることでしょう💕



(昨年秋の根津美術館庭園の紅葉🍁)