引き上げたKAZU Ⅰ船体を20メートル水深で横抱き曳航中180メートル水深に落としたのは、信じられないショッキングニュースだった。

ニュースに触れて真っ先に頭に浮かんだのは責任問題だ。

国会中継は予算審議を中継しているが、さっそく責任所在を問う詰問が野党議員から出ている。

KAZUⅠを水深20メートルの位置で横抱き曳航を決めた理由の専門的内容は分からないが、作業手順に沿って見て行けば、落下原因となったスリング(吊り帯)の切断荷重は数値化のデーターで説明出来ても、曳航中にかかる、海流や潮流の及ぼす負荷などは経験値で判断せざるを得なかったのではないか。

それが荷重ではなく、船体とスリングの摩擦係数となれば経験はさらに少なくなろう。

潜水作業を職業としてきた私の経験上、日サル(日本サルベージ)の今回の作業手順のおおよそは分かるが、サルベージ作業の経験不足から技術の一つ一つまでは理解しない。

日本サルベージの会社名を持つようにサルベージ専門会社ではあっても、特殊作業だけに仕事の数が少ない。 その少ない経験値での作業判断を求められたのではなかろうか。

引き上げた船を水深20メートルの海中にスリングで吊ったままでの曳航作業は聞いたことが無いが、海域の条件でやむを得ない作業だったのだろうか。

特殊作業だけに仕事量が少なく、企業としての規模拡大の難しい業種である。

現場では、元受け工事に携わる機会も少なく、下請け仕事が多いのもこの業界の特徴だ。

しかし、持つ技術や設備は数少ない貴重な存在であり、日本にとっては代表する企業である。

今回のKAZUⅠ引き揚げなどは、引き揚げ計画から着手迄のスピードは速かったのではないか。 そして引き上げられたKAZUⅠの開いたドアや割れた窓の養生作業などは短時間にもかかわらず適切に処置されている。

海外の技術に頼った場合、こんなに早い対処は望めないであろう。

今回の落下事故責任が、企業としての日サル経営に影響しないかが心配だ。

この様な特殊技術を持つ企業などの場合、国で保護するとか、技術力強化の支援などが望めないものだろうか。

海上自衛隊には潜水班もある事だし、産官共同研究などでの、日本の技術力強化策などがあってもよかろうと思う。日本の技術を大事にしてもらいたいと願う。

松尾洋