人を好きになるって。。。初体験。


春って、


どうしてこんなに困るんでしょう。


桜を見るたび、

心の奥で、

忘れたはずの誰かが、

そっと目を覚ますんです。


ふふ。。

あなたにも、

そんな春、

ありませんか?


小学四年生。

まだ恋なんて知らない頃のお話です。


私は少し変わった子でした。


友達と遊ぶより、

一人で山へ行ったり、

竹やぶで風の音を聞いたり、

夜になると星空ばかり見ていました。


今思えば……

少し宇宙人だったかもしれません。👽


そんな私が、

ある朝、

教室のドアを開けた瞬間でした。


春風が、

桜を一枚だけ連れて、

教室へ入ってきます。

新しい教科書の匂い。


少しだけワックスの香りが残る床。


友達の笑い声。

先生の声。

その全部が、

急に遠くなりました。


教室の一番後ろ。

友達と笑っている男の子。


春の光って、

好きになる人だけを、

少しだけ眩しく見せるんですね。


私は、

その時初めて知りました。


「あ……。」


恋って、

案外、

その一文字から始まるものなんですね。


先生が言いました。


「向日葵さん、この席ね。」

えっ……


彼が、

後ろの席。

それだけで、

心臓が忙しくなりました。


振り向けない。


でも、

気になる。

授業なんて、

何も入ってきません。


すると、

「動かないで。」


その声だけで、

世界が静かになりました。


肩のあたりで、

春が、

ふわっと揺れます。


「桜。」


彼は、

私の髪に舞い降りた花びらを、

そっと取ってくれました。


その時の指先は、

もう思い出せません。


でも、

大切にされた」


その気持ちだけは、

今でも覚えています。


不思議ですよね。

人って、

何をしてもらったかより、

その時、自分がどんな気持ちになったかを、

ずっと覚えているのかもしれません。


だから、

忘れられない人がいるんじゃなくて、

忘れられない自分がいる。


私は、

そんな気がしています。


彼は、

桜の花びらを、

私の手のひらへ乗せました。


私は、

壊れそうなくらい大事に、

ハンカチへ包みました。


放課後も、

帰り道も、

何度ものぞいては、

一人で笑っていました。


ふふ。。

今なら分かるんです。


大切だったのは、

花びらじゃない。

あの日の私でした。


人って、

思い出を残したいんじゃない。


あの日、

あんなふうに笑えた自分を、

忘れたくないのかもしれません。


その夜。

窓を開けると、

春の風が、

カーテンを揺らしました。


星がひとつ。

また、

ひとつ。


私は、

桜の花びらを本へ挟みます。


「しおりにしよう。」


そう思ったのは、

恋を閉じ込めたかったからじゃありません。


未来の私が、

もし笑えない日が来ても、

この春だけは、

なくさないように。


そんな気持ちだったのかもしれません。


人生って、

不思議です。

人を好きになると、

世界が変わるんじゃない。


昨日まで気づかなかった風に気づいて、

昨日まで何とも思わなかった空を見上げて、

一枚の桜に足を止めるようになる。


変わるのは、

景色じゃない。

心なんですね。


だから私は、

恋は、

誰かに出会う物語ではなく、

自分の心と出会う物語なんじゃないかなって思っています。


桜が咲くたび、

あの小学四年生の女の子が、

時々、

私に聞くんです。


「ねぇ……

まだ覚えてる?」


もちろん。

忘れるわけないよ。


あの日の春は、

今でも、

私の心の中で咲いているから。


ふふ。。

でもね……

この初恋には、

まだ誰にも話していない続きを、

ひとつだけ残しています。


その日、

桜の花びらだけじゃなく、

私の心に、

もう一枚、

忘れられない景色が舞い降りたんです。


そのお話は……

また今度。


よかったら、あなたのお話も、少しだけ聞かせてもらえませんか?」


あらら……

もうこんな時間。。


また、一緒にお話ししましょう。🌻