おひさま〜終章〜 #109
「私、子どもの頃は身体が弱くてね。結構入退院を繰り返してたんだ」有美子は、浩介としばらく世間話をした後に、自らの過去について語り始めた。『……………』「その度に裕之のご両親や他の病院の先生たちが寄り添ってくれたの………だから、大人になったらその人たちに恩返しをしたいと思って、医療の道を目指すようになったんだ」『そうだったんですか………』人に歴史ありだな……………浩介はつくづくそう思った。「浩介君は?どうして、お医者さんを目指そうと思ったの?」『まあ………理由は色々あるんですけど………』ーーーーーーーーーーーーーーーーーー浩介も、有美子に自らの過去を話した。看護師の母を見て育ったこと。初恋の女性を、病気で亡くしたこと。少しでも苦しむ人々を助けられるようになる。そんな思いで医学部の門を叩いた。有美子はただ、黙って浩介の話を聞いていた。『………そんなところですかね』「医療の道は…………想像する以上に過酷よ」有美子が、声を低くして言った。『ええ………母を見てきてるんで、なんとなくはわかっています』「でも頭でわかっていても、そうはいかないものよ」『そうでしょうね………でも、彼女に約束したんです。必ず医者になってみせるって』「史緒里さん?それとも………明里さん?」『どっちも………ですかね』有美子は笑いながら、そう、と言った。「ゆみ姉、こんなとこにおったん?」今度はひかるがやってきた。ひ「あらっ、浩介君もおったんや………お邪魔やったかな?」『そんなことないよ』有「そうそう。医者の卵だから、私なりのアドバイスをしてあげてたのよ」ひ「ふーん。ならさ、あたしともおしゃべりせえへん?」『裕之と一緒にいなくていいの?』「今、お父さんとお母さんと一緒にいるの。家族水入らずの時間ってことかな」『そっか』有「じゃ、私は拓哉君と唯衣ちゃんのところに行こうかな〜。またね、浩介君」それだけ言うと、有美子は浩介のもとを去っていった。