『高圧経済とは何か』原田泰、飯田泰之 | 前山和繁Blog

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このごろ、過去に書いた記事の誤っている箇所が気になり始めてきた、直したい箇所もいくつかあるが、なかなかできないでいる。

英語学習の記事も時折書くことにした。

『高圧経済とは何か』原田泰、飯田泰之編

 

Amazonレビューに、いくらか付け足してこのブログにも残しておく。

 

2013年春頃からの黒田東彦総裁が就任していた日銀の金融政策実施の他に減税を含む積極財政が必要になるという雰囲気が前面に出ている。リフレ派的な経済学者からのアベノミクスの検証といった内容の論文集。

 

第1章「高圧経済論の源流と拡張可能性」の図表1-1には1人あたり都道府県民所得の成長率(2010-2018年)が掲載されている。

 

47位が福井県で46位が東京都。2010年から2018年の期間は、そのうち6年近くがアベノミクスが実施されていたが東京都の1人当たり所得の伸びは他の45道府県より一段低かった。税負担の高さによっても、そんな窮屈さが出現している。

 

私の解釈は、北海道、東北六県、新潟県等の冬に水道光熱費が高くなる寒冷地に長期間住み続けたくない若い層が比較的温暖な東京都に逃げて行っているようにしか思えない。そして2010年以降に東京に移動した地方出身者が東京都内に、ある程度の品質の住居を確保できる確率は1980年代や90年代の地方からの移住者よりも下がっているだろうから、その分、東京都の一人当たりの所得が伸びにくくなっているのだろう。

 

徳川家が支配していた時代から、人々は関東平野というエネルギー効率の良い江戸に向かい、江戸の人口密度が高くなっていた。

 

1915年生まれのコラムニストの山本夏彦も戦前真っ暗史観は間違いだとコラムに書いていたが、これも結局関東平野のエネルギー効率の良さの問題であろう。

 

第3章「日本経済には持続的円安の高圧経済が望ましい」には政府債務の増加が国の社会保障費を圧迫するという懸念に対して、62ページに

 

「政府赤字そのものは一国の対外債務を増やさない限り、国民の福祉に関係しないというのがラーナーの機能的財政の考え方で浜田はそれに賛成する。」

 

という見解がある。

 

過度に日本の社会保障費用の増加を恐れて緊縮継続などしない方が良いということである。

 

第5章「高圧経済が労働生産性に与える影響」の図表5-1の数字の推移を見て明示的に説明されていなかったことを、私なりに説明する。

 

生産性については米国の生産性が日本より一貫して高く推移している理由は、米国の資源及びエネルギー消費量の多さによる。イメージが湧きやすい書き方をするなら米国人の飛行機の使用頻度の高さ、40フィート以上のコンテナの使用率の高さによって資源及びエネルギー消費が多くなり、同じ人手を同一労働時間内に投入しているなら米国の方が日本より労働生産性が高くなる。以上に雇用慣行の違いは影響せずとなる。

 

日本も飛行機の離発着回数を多くし、40フィート以上のコンテナの輸送率を高くし、自動車の1年あたりの平均走行距離を長くすれば、整備等の需要も増加し労働者1人あたりの生産性は高くなる。2024年時点の日本で飛行機の離発着回数や40フィート以上の長さの海上コンテナの移動距離を長くできないなら、可能になるようなインフラ開発が必要になる。

 

エネルギー及び資源消費が安定的に増加している状況下で、東京都から地方に、まとまった人口が移動していくなら日本国内の自動車の年間平均走行距離が長くなり生産性が上がる。