「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」のテリー・ギリアム監督の最新作。
人間嫌い、外出嫌いの孤独なプログラマー・コーエン。彼は会社の命令で、この宇宙が偶然の産物で無意味ということを証明するゼロの定理の証明を命ぜられる。
【会社でコンピューターと格闘するコーエン】
しかし、不思議な美女ベインズリーと、会社の代表の15歳の息子ボブと出会い、彼の生き方は変わっていく。
何といっても、厚みのある映像と世界観に魅了される。
【道路を横断しようとするコーエン ギリアム監督は街の描写は秋葉原(!)にインスパイアされたと語っている】
映画のテーマは極めて判りやすい。コンピューターや大企業やお金や利益や、そういった数字や情報や概念に支配・抑圧される社会への批判、人間同士の直の触れ合い、コミュニケーシヨンの大切さといったものであろう。
しかし、映画はメッセージだけではない。映像であり、音響・音楽であり、芝居であり、それが組合わさった独特のものである。
【コーエンの住む火事で焼けた教会を突然訪問して来たベインズリー】
だから、映像を主体とする映画の感想や批評を、文字・文章で書く行為はどうしたものものかと時々思う。この映画の魅力は文章では語れない。
映画館に足を運んで実際に観て、その人がどう思うか。
【数ヶ月ぶりに外出したコーエンと、コーエンを外に連れ出したボブ】
自分にとっては、DVDを買って繰り返し観たくなる映画。何故なら、画面ひとつひとつに含まれている情報量がとても多い感じで、1回観ただけでは気が付いていないところが沢山ありそうだから。
未見の「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」も絶対観なくては。
【仮想空間で寄り添うコーエンとベインズリー】
監督:テリー・ギリアム
脚本:パット・ルーシン
撮影:ニコラ・ペコリーニ
キャスト
コーエン・レス(IT企業マーコム社のプログラマー):クリストフ・ヴァルツ
ベインズリー(エロティックサイトを運営する美女):メラニー・ティエリー
ボブ(マーコム社代表の息子・15歳):ルーカス・ヘッジズ
ジョビー(コーエンの上司):デヴィッド・シューリス
マーコム社代表:マット・デイモン
原題:The Zero Theorm (ゼロの定理)
上映時間:1時間47分
初公開:2013年9月ヴェネチア国際映画祭
英国公開:2014年3月
日本公開:2015年5月
鑑賞日:2015年8月14日
場所:下高井戸シネマ