闇の中は、どこを見ても黒一色だった。


空も地面も存在せず、世界そのものが暗闇で染め上げられている。


しかし不思議なことに、闇王はそこに懐かしさを感じていた。


伝承では、闇に飲まれた者は身動き一つ取れなくなると言われていた。


だが闇王は違った。


自由に動ける。


しばらくすると目が慣れてきた。


その時、半透明の身体でふわふわと浮かぶ存在が現れた。


見覚えがある。


それだけではない。


周囲を見渡せば、どこかで見たことのある者ばかりだった。


闇の中には無数の魔物たちがいた。


「……こいつらは」


闇王は目を見開く。


「ここは……私の世界なのか?」


かつて自分が名付けた魔物たち。


見覚えのある姿ばかりだった。


その時だった。


丸い身体に大きな口。


無数の牙をむき出しにし、目を赤く光らせた魔獣が襲い掛かってきた。


闇王は剣を振るう。


斬る。


避ける。


反撃する。


だが、まるで効いていない。


何度攻撃しても魔獣は怯むことすらなかった。


そして――


パキッ。


嫌な音が響いた。


グレートソードが真っ二つに折れたのだ。


「くっ……!」


逃げるしかない。


闇王は走った。


後ろから何十、何百という魔獣たちが追いかけてくる。


もし闇のオーラさえ使えれば、こんな連中など一瞬で消し飛ばせる。


だが今の自分にはそれができなかった。


その時だった。


長く伸びた腕が背後から飛んできた。


腕は蛇のように足へ絡みつき、闇王の身体を宙へ持ち上げる。


目の前で巨大な口が開かれた。


鋭い牙が並び、闇王を飲み込もうとしている。


もう駄目だ。


そう思った瞬間――


無数の枝が闇を切り裂くように現れた。


枝は闇王を守るように巻き付き、魔獣たちを遠ざける。


魔獣たちは一斉に怯えたように後退した。


そして逃げ出していく。


その姿を見て、闇王は理解した。


「本体……」


現れたのは、自分の真の姿。


闇の木だった。


巨大な木は静かに闇王を包み込む。


すると木の内部から膨大な闇のオーラが流れ込んできた。


失われていた力が戻ってくる。


身体の奥が満たされていく。


「少しだけ眠ろう……」


闇王は目を閉じた。