どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
ふと、口の中に冷たい水分が流れ込んでくるのを感じた。闇王は本能的にそれを飲み込む。
しかし、疲労が深すぎて目を開けることができない。
何度も何度も、水が口元へ運ばれてくる。そのたびに少しずつ意識が浮上していった。
そして何度目かの時――ようやく闇王は目を覚ました。
目を開いた瞬間、思わず目を見張る。
そこには砂漠とはまるで別世界の光景が広がっていた。
青々とした草原。
澄んだ水を湛えた泉。
色鮮やかな花々。
たわわに果実を実らせた木々。
涼しい風が吹き抜け、心地よい木陰が大地を覆っている。
「涼しい……」
闇王が呟くと、
「アウアウー」
低く優しい鳴き声が聞こえた。
声の方を見ると、そこには大きなピンク色のクマがいた。
二足で立つそのクマは闇王の傍らに座り、たくさんの果実を抱えている。そして、その中の一つを闇王へ差し出した。
「お前が助けてくれたのか?」
「アウー」
クマは嬉しそうに頷く。
「そうか……」
闇王は果実を受け取りながら呟いた。
誰かに助けられたことなど、生まれて初めてだった。
だから何と言えばいいのか分からない。
周囲を見渡すと、たくさんの動物たちが集まっていた。
鹿や兎のような草食獣だけではない。
狼や大型の肉食獣までもがクマの周りに集まり、甘えるように鳴いている。
どうやら、このクマは森の動物たちから慕われているらしい。
クマは闇王の頭を優しく撫でた。
まるで母親が子供にするような手つきだった。
「ここは安全なんだな」
「アウ」
闇王は果実を食べ終えると、そのまま眠りについた。
翌日も、その次の日も。
クマはたくさんの果実を採ってきてくれた。
闇王はその果実を腹いっぱい食べ、クマの膝を枕にして眠った。