ピンクのクマを見送った闇王は、広大な草原をまっすぐ進んでいた。
しばらく歩いていると、前方赤いスライムの姿が見えた。
ファイアスライムの軍団だった。
スライムたちは闇王の姿を見つけるや否や、一斉に火球を放ってくる。無数の炎が空を埋め尽くし、闇王へと降り注いだ。
しかし、その程度の攻撃は今の闇王には通用しなかった。
闇王は迫り来る火球を軽々とかわしながら群れへ突っ込む。
鋭い剣閃が次々と走った。
ファイアスライムたちは抵抗する間もなく斬り裂かれ、やがて身体をキラキラと輝かせながら消えていく。
気が付けば、辺りにいたスライムは一匹残らず消滅していた。
闇王は剣を軽く振り、付着した炎の残滓を払う。
「ここにはか弱い奴しかいないのか?」
少し物足りなさそうに呟くと、再び歩き始めた。
すると今度は草むらの奥から青い毛並みを持つ狼の群れが姿を現した。
先頭にいた一匹が空に向かって遠吠えを上げる。
「ワオォォーン!」
その声を合図に、群れ全体が一斉に闇王へ襲いかかってきた。
闇王は魔物図鑑によると、
ランクC
――スピードウルフ。
個々の戦闘力は高くないが、その名の通り驚異的な俊敏性を持つ狼型の魔物だ。
実際、その速さは尋常ではなかった。
闇王が構えた瞬間には、すでに狼たちは四方へ散開し、あっという間に包囲網を完成させていた。
一匹が正面から飛びかかる。
その攻撃をかわした瞬間、別の一匹が横から牙を剥いて襲いかかってくる。
しかし闇王は冷静だった。
身体をわずかに捻って攻撃を回避すると、そのまま剣を振り抜く。
青い狼が光となって消えた。
さらに次々と襲い来るスピードウルフたちを、闇王は正確な剣技で斬り伏せていく。
やがて群れの大半が倒されると、生き残った数頭は戦意を失ったように後ずさった。
そして一目散に森の奥へ逃げ去っていく。
闇王は追わなかった。
「逃げるなら好きにしろ」
そう言って再び旅路を進んだ。