G.M.ナイル『銀座ナイルレストラン物語』 | スライダーズおやじ

G.M.ナイル『銀座ナイルレストラン物語』

銀座ナイルレストラン物語 日本で最も古く、最も成功したインド料理店 (P-Vine BOOks...
¥1,680 楽天

東京裁判でラダ・ビノード・パール判事の通訳を務め、その後も判事のブレインとして活躍したA.M.ナイル氏(勲三等瑞宝章)が、革命家から日本国内最初のインド料理店“ナイルレストラン”創業者へと転身した経緯。そして、日本人の妻との間に生まれたG.M.ナイル氏が二代目社長として、レストランをさらなる成功へ高めた物語が鮮やかに描かれている。


銀座ナイルレストラン
うちの末っ子が銀座で合唱コンクールのピアノ演奏をした10月28日。GINZA瑛舎夢が閉まっていたので、次に行ったのがこのナイルレストラン。これで3度目の来訪だ。正確には5度目だが、そのうちの2回はお店が「長期休暇」の期間にあたっていた。

スライダーズおやじ-2 スライダーズおやじ-3
僕が通された席は、一番奥の厨房に近い一人用の席。まるで賄い用の席みたいな感じで、テーブルの上に胡蝶蘭がどかっと置いてあり、目の前にはトイレのドア。しかし、いつかテレビで見た厨房の作業が見えたり、料理や店内の写真を撮るのにも良い場所だったりで、悪くはなかった。

お店の壁の飾り戸棚に、以前から気になっていた本があった。『知られざるインド独立闘争』という、分厚い本だ。こづかい日の直後だったこともあり、お店の方に「あれは売り物ですか?」と質問してみた。すると「おおっ! 素晴らしい!」手をパチンと叩き、とても嬉しそうに席まで本を持ってきてくれた。

「こちらの本もいかがですか?」と、一緒に持ってきたのが、この『銀座ナイルレストラン物語』だった。僕は別にイチ料理店の歴史に興味などなかったんだけど、二冊の本の裏の値段を確認してから、「じゃあそれもください」と言ってしまった。すると間髪いれず、「素晴らしいっ!」とまた言われ、照れくさいけどうれしい(笑)
 
 
『銀座ナイルレストラン物語』のサブタイトルに『日本で最も古く、最も成功したインド料理店』、帯に『これはね、大いなるサクセスストーリーなのよ/G.M.ナイル』とある。

スライダーズおやじ-5
この銀座の裏通りのさほど大きくも新しくもないナイルレストランが、どれほどの成功をおさめているというのか、少々ピンとこなかった。ただ、ランチ単価は高い(1500円~)のに、常に満席というのは凄いなあとは思ってはいたけど。あ、でもそういや、2ヶ月間の従業員のインド帰省休みっていう貼り紙を見た時は、頭が「???」ってなったな。
 
レジで6000円(2800円+1680円+1500円・・・計算合わないw)を支払って店を出た。
どちらを先に読もうかなと考えた結果、『銀座ナイルレストラン物語』を読むことにした。僕にナイルレストランを紹介してくれた同僚に貸すためだ。

スライダーズおやじ-6
ひとたび読み始めたら、時間を忘れて一気に最後まで読んでしまった。ナイルレストランの歴史を通して、お店を構えるオーナーの想いがどれだけ強いものか知った。
お店への情熱を知り、僕が座った隅っこの席でさえ、涙が出るほど強い、お店の人の愛情を注がれた場所なのだということを知った。

スライダーズおやじ-7 スライダーズおやじ-8
またそれだけではなく、レストランの経営指南書としても非常に有用で、まさにG.M.ナイル氏の言う「大いなるサクセスストーリー」でもあった。
 
印象深いエピソードがいくつもあり、今も2度目を読み返しているところだけど、その中で特に印象に残った点を、いくつか箇条書きにしてみます。

スライダーズおやじ-9
・ムルギランチに使われている鶏は肉質の固い高級地鶏。他店が真似ようとしたが、あまりの原価の高さに「話しにならない」と諦めた。
 
・裏の食堂にボヤがあり、もともとあったナイルレストランが全焼。しかしその後建てなおしをした上に、競売で土地を落札。(銀座で土地と上モノを両方所有するオーナーレストランは極めて希有)
 
・二代目世襲社長が成功に導いた事例として興味深かった。
 
・お店の味に一切手を加えない。ムルギランチはもともと素人が作り上げたメニュー。本格的な修業を積んだ2代目は改良を加えることもできるが、ナイルレストランの味を守るのが使命。
 
・定番メニューを押し売り(推し売り)することの効果。


スライダーズおやじ-10
・食器は倉庫に50年分のストックがある。お客さんに、いつまでも同じものを提供したい。
 
・毎年1度、お店の1000万円を使い、特別なお客さんたち数百人を招待して花火大会をやっている。

・オーナーとスタッフの線引きに関すること。

・ネット上の評価などは一切気にしない。自分が提供したいものを出す。
 
・2年に一度、お店を2ヶ月間完全に休業して、インド人シェフ全員を帰省させている。

スライダーズおやじ-11
そして、中でも僕が一番感銘を受けたページは。


スライダーズおやじ-G.M.ナイル『銀座ナイルレストラン物語』
雑誌連載の企画で、『ニューヨークを車で回ってカレーを作るのがアートだ』という著名なタイ人アーティスト、リクリット・ティーラワニット(リクリット・ティラバンニャ)氏に関して、『僕はカレーを食べさせてお金をもらうことがアートなんだ』と言ったこと。目からうろこが何枚も落ちた気がしました。
 
僕は実は、お金をもらうということについて、卑しいという感情があったりします。もちろんお金は少しでも多く欲しいんだけど、自分で値段を決めるというのが苦手。
 
看板屋をやっていたときなど、値段のことが苦痛で苦痛でしょうがなかった。下請けの看板屋さんに払う製作原価が1万円だとしたら、デザインから設置までやって普通は4万円くらい。だけど、お客さんが直接その看板屋にオーダーしたら、つまり自分がいなければ1万円でできるのにって思ってしまう。僕のデザインが入らないから、仕上がりは違うものになるんだけど、なんか騙してるみたいな気になってしまって、うんざりだった。

お客さんのために血を吐く思いでつけた値段に、軽い気持ちで値下げの打診されてきたりとかね。支払いの期限を延ばされたり・・・。


スライダーズおやじ-12
道でギターを弾いて歌っていたころ、酔っぱらいのおっさんに「金額じゃないんだよな!」なんて言われたことがあった。いや、おれギターケース開いて、お金稼ぎに来てるんだけど・・・って思ったけど、曖昧な笑みを返すので精いっぱいだった。
 
「歌を聴かせてお金を稼ぐことがアートなんだよ」なんて胸を張って言ったら、かっこよかったねー。
 
 
読み始めた時は、結構前に刊行された本の売れ残りかな? と思っていたんだけど、終盤に3.11地震の話しが出てきてびっくり。奥付けを見たら、2011.9.30日初版発行とな! こないだの僕の誕生日だよ。
 
こういう本を、出たばかりの時期に読めるのはとてもラッキー。推し売りに感謝です!
 
近いうちにまたお店に行けたらいいな。こんどは4回目だから、G.M.ナイル氏がナイルレストランの歴史に加えた、たった二つっきりのメニュー<チキンマサラ><チャンナマサラ>のうちのどちらかを食べようと思います。
 
これだけお店の歴史を重んじ、愛するG.M.ナイル氏が加えたメニューだからね。これは食わなきゃ!
カレー好きの皆様に(・・・っていうと、全人類か?)、ぜひ読んでいただきたいです。



▼関連記事

ナイルレストラン ムルギーランチ 銀座
2010年04月13日(火)
http://ameblo.jp/444/entry-10504202238.html

 

▼ナイルレストラン公式HP
http://www.ginza-nair.co.jp/



 


オートバイと皮ジャンパーとカレー【初回生産限定盤】CD+ボーナスCD/ザ・クロマニヨンズ
¥1,575 Amazon.co.jp



ナイルレストラン インドカレー / 東銀座駅銀座駅銀座一丁目駅
昼総合点★★★★ 4.0