―8種の旋律―Ⅲ―ページをめくる。 | 晴れわたる青空の下で

晴れわたる青空の下で

人類の歴史は、「侮辱された人間が勝利する日」を、しんぼう強く待っている。インドの詩人タゴール

私は星だ



私は大ぞらの星だ。

世界を見つめ、世界をあなどり、

自分の熱火に焼け失せる。




私は、夜ごとに荒れる海だ。

古い罪に新しい罪を積み重ねて、

きびしいいけにえをささげる嘆きの海だ。




私はあなた方の世界から追われ、

誇りに育てられ、誇りにあざむかれた。

私は、国のない王様だ。




私は無言の情熱だ。

家ではかまどがなく、戦争では剣を持たない。

自分の力のために病んでいる。


Ich bin ein Stern





わが母に

ー最初の詩集を母にささげようとー



お話したいことが、たくさん、たくさんありました。

私は随分と長いあいだ異郷に暮しましたが、

いつの日にも終始私を一ばんよく

理解してくれたのは、あなたでした。

長い間あなたに差し上げようと思っていた

最初の贈りものを、私が

おどおどする子どもの手に持つ今

あなたは目を閉じておしまいになりました。




それでもやはり、これを読むと、

自分の悲しみが不思議と忘れられるのを感じます。

言いようもなくやさしいあなたというものが

千もの糸で私を取巻いているのですから。


Meiner Mutter






独り



地上には

大小の道がたくさん通じている。

しかし、みな

目ざすところは同じだ。




馬で行くことも、車で行くことも、

ふたりで行くことも、三人で行くこともできる。

だが、最後の一歩は

自分ひとりで歩かねばならない。




だから、どんなつらいことでも、

ひとりでするということにまさる

知恵もなければ、

能力もない。


Allein




ヘッセ詩集
高橋健二
新潮文庫