俺が右足を切断した理由

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「暴力と脳の障害夫婦の逆境のトリセツ-義足のタレント失意から再起へ」

 暴れて大声を上げても、その記憶がない。谷口正典さんの高次脳機能障害は4年前に突然現れた。右足を失った23歳の時の交通事故の後遺症だった。失意の日々から再起できた背景には、妻の益村泉月珠さんの支えがあった。現在は義足のタレントとして活動する。2人が自費出版した体験記「逆境のトリセツ」には、周囲の理解があれば前を向けると思いを込めた。

 

 

前回からの続き・・・

 一方、「一緒に障害と向き合う」と腹をくくった泉月珠さんは、症状が出た時の夫を「マイケル」と名付けて別の人と割り切った。夫の行動を全て記録。脳内で情報を処理しきれないときにマイケルが現れると突き止めた。予定の内容や時間を逐次伝える▽同時に二つのことをさせない―などパニックを回避する「トリセツ」を作った。食事に文句を言ったり、水を出しっ放しにしたりするのもマイケルが現れる兆候。目で見て気付いてもらうよう家中に注意書きを張った。

 

 トリセツは正典さんが所属する障害者のアンプティサッカーチーム「アフィーレ広島」でも共有。仲間は障害を受け入れ、練習や遠征での勝手な行動はいさめてくれた。正典さんは「見た目で分からないからこそ一人で背負い込むのは苦しい。仲間の理解で楽になれた」と感謝する。

 

 再就職には後ろ向きだったが、元来目立ちたがりな性格。地元のテレビ局に勤める泉月珠さんに促され、テレビCMのオーディションを受けると合格した。CMや講演に出ると、周囲が義足姿をかっこいいと感じてくれた。21年の東京五輪の開会式では選手の先導役を経験した。自信を取り戻した時、もうマイケルは姿を現さなくなっていた。

 

 泉月珠さんは「自分は仕事人間だから、職場の課題を乗り越えるように、夫とも向き合った。困難から逃げた方がもっと苦しくなったと思う」と打ち明ける。夫婦の間では障害を言い訳にしないことをルールにし「ちゃんとしないと離婚する」とも言い続ける。

 

 正典さんは「妻が義足のことも脳のことも受け止めてくれたから、自分を信じられた」と強調する。本を手に取ってほしいのは、全国の高次脳機能障害の患者や家族たちだ。「苦しみを抱え込む人は多いはず。周囲と支え合えるよう打ち明ける勇気を与えたい」

 

引用:12/10中国新聞朝刊「暴力と脳の障害夫婦の逆境のトリセツ-義足のタレント失意から再起へ」https://www.chugoku-np.co.jp/articles/gallery/246926

 

ノンフィクション小説『逆境のトリセツ』

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