その5掲載の

「いったい、水色のマーク部分のうち、

・どの部分を“反論”とし、それをどのように表現すれば、得点効率が最大化できるでしょうか?

他方で、

・どの部分を“私見”とし、それをどのように表現すれば得点効率が最大化できるでしょうか?」

という課題に対する私なりの解答を、この記事末尾に載せました。

 

その注釈を何点か。

 

まず、司法H29論文の採点実感(公法系)の「1 総論」の“・”5つ目ラスト“設問2では,国の反論なのか私見なのか判別しにくいものが見られた。”というクソ出題者・採点者側のムチャ振りに一応対処してやる目的なので、“反論なのか私見なのか判別”さえできればよいと考えることができる。

とすると、“反論”とか“私見”は後から付けたり挿入したりすればいい…これが、得点効率を最大化する“反論”“私見”の表現方法だろう。

少なくとも予備論文憲法では、このような書き方でA評価をとった再現答案がある。

(cf)動画「H29年度 予備論文式試験出題趣旨分析セミナー 公法系」の「参照ファイル」欄のレジュメP6~7

 

で、どの部分を“反論”・“私見”とするかは、まあテキトーでいいと思うんだけど、ベストを尽くすなら、できる限り設問1の主張に対応する内容を“反論”とした方が、争点整理能力を示せる感じになるので評価されるんじゃないかと(私は、修習・実務での争点整理とは全く別物の、受験生の“自作自演”力しか分からないと思うんだけどね…)。

 

あと、ある論述が“反論”でもあり“私見”でもあるという意味で、“反論・私見”という表記もありだと思うんだけど、どうだろうか?

司法H28論文の採点実感(公法系)の「5 検察官の反論又は私見」では、付添人主張と同様の私見や、反論に対する再反論に終始する私見が批判されているだけだし、司法H29論文の採点実感(公法系)に照らしても、ある論述が“反論”でもあり“私見”でもあると“判別”できると思うんだけど、ややリスキーではあるよね…極力無難に書くなら、反論≒私見となる部分は、単に“私見”とすれば充分だろう(主張の全てに反論する必要はないので)。

 

他にも、

(下記アイは反論・私見)

・私見→反論(→私見)の順序

(反論部分以外は私見)

といった、できる限り多様な“反論”“私見”の表現方法を提案してみたので、参考になれば。

 

これにて、憲法の論文答案の育て方シリーズはおしまい!

↓の答案例と、その3-1の設問1の答案例をくっつければ、私なりの形式面も含めた“完全解”になるよ~(o^-')b

これまでの課題をやってくれた皆さんは、赤の他人である私の答案例の内容・意図を読み取って加工するのは結構大変だったと思いますが、実際には内容・意図を完璧に把握している自分自身の書いた答案を加工して育てていけばいいだけだから!

他科目の論文対策や短答対策との兼ね合い・優先順位を充分に意識しつつ、皆さんの個性・環境等に応じて、徐々に・論文本試験当日までにできるところまで育てていってくださいな~(^O^)/

 

 

第2 設問2

1 自由1は憲法上保障されるか。

反論:人権のインフレ化防止のため、「幸福追求~権」として保障するのは、人格的生存に不可欠な利益に限定すべきである。

私見:確かに、誰もがその時々の位置情報を周囲の者に把握されているし、継続監視は、監視対象者の前科等の参考情報をもともと把握している警察本部長等が行う(22条)だけである。

しかし、前記A側主張に加え、警察に位置情報を収集されることによる心理的圧迫は大きいといえるし、収集した位置情報の漏えいや目的外利用等を防ぐ管理体制も明らかでない。

このような情報をコントロール(強制的に収集されないように)することは人格的生存に不可欠といえるから、自由1は「幸福追求~権」として保障される。

2 反論:としても、「公共の福祉」に基づく最小限の制約に服する(13条後段)

私見:最小限の制約かどうかの審査基準が明らかでない。

   前記A側主張の一方で、政党国家現象が進み国会野党対国会与党(≒内閣)という対立が激化している中で、超党派の「性犯罪被害の予防を促進するための議員連盟」が結成され、性犯罪者の再犯防止に関する具体的方策を講じるために必要な法整備についての検討が進められた翌年、「全国民を代表する選挙された」国会議員(431項)の提出法案として法が国会(41条)に提出され、衆参両議員で可決され成立した(591項)から、これを尊重する必要もある。

そこで、最も厳格な明白かつ現在の危険の基準よりは緩やかに、(a)相当の蓋然性で生ずる放置できない害悪防止のため(b)必要かつ合理的な手段による制約ならば、最小限と解する。

3⑴ 本件では、(a)20**5月に連続して発生した①②事件により、性犯罪者の再犯防止に社会の関心が集まることとなった。

①②事件に関する報道では、心理学の専門家等が、「一定の類型の性犯罪者は、心理的、生理的、病理的要因等により同種の性犯罪を繰り返すおそれが大きく、処罰による特別予防効果に期待することは現実的でない。このような性犯罪者の再犯を防止するためには、出所後の行動監視が必要である。」旨の所見を述べた。

こうした経緯を受けて、前記2⑵の事情に至ったから、法の主目的は、「性犯罪の再犯の防止」(法1条)にあり、これを通じて「性犯罪者の社会復帰を促進するとともに、地域社会の安全の確保を推進する」ものと解すべきである。(下記アイは反論・私見)

ア ここで性犯罪の再犯被害は、①②事件とも再犯を重ねるにつれて被害が大きくなっていることからしても、「生命、自由」(13条後段)や肉体・精神的「健康」(251項)、特に子ども(①は前科も含め幼稚園児、②はPの前科で女子中学生が被害者)はその「教育」(26条)の見地からも放置できない害悪といえる。

イ そして、心理的、生理的、病理的要因等により特定の性的衝動に対する抑制が適正に機能しにくい者が存在することは確かで、そのような者が再び同様の性犯罪に及ぶリスクの高さは専門家が判定できるから、そのような者による性犯罪の再犯被害については、相当の蓋然性で生ずるといえる。

⑵ア (b)私見:前記⑴の心理学の専門家等の所見から、主目的を達するには、監視対象者(法22項)の出所後の継続監視が必要とはいえる。

また、検察官が継続監視の申立てをしなければならないのは、刑法176179181条の「性犯罪」(法1条)で懲役の確定裁判を受けた者(その刑の執行猶予の言渡しをするものは除く)が、その心理・生理・病理的要因等により再び性犯罪を行うおそれが大きいと認めるとき(法101項)に限られている。

そして、裁判所が継続監視決定をしなければならないのは、上記申立て(必要な資料も提出:法102項)を受けて、必要な調査(111項)を基礎とし、被申立人の上記おそれが大きいと認めるとき(この点は上記検察官と二重にチェック)に限られる。

さらに、被申立人は、弁護士を付添人に選任でき(法121項)、これを選任しないときは、裁判所は職権で、弁護士である付添人を付さなければならない(同条2項)し、裁判所は、“審判”期日を開き、被申立人及び付添人から意見を聴かなければならない(法13条)から、公開法廷で国民に監視される(821項)「裁判」ではないが、被申立人の弁解・防御の機会は充分といえる。

その上、被申立人と付添人は、継続監視決定に対し、1週間以内に抗告できる(法15条)という不服申立手段もある。

() 反論

a 前記第12(2)()については、電子地図上に監視対象者の現在地と前科等の参考情報が表示されるから、監視対象者がその前科等に関連する場所に近づきそうなら事前に警戒できる。

それで監視対象者が性犯罪(の準備行為)をしている疑いある場合には警察官が現場に急行できる態勢が整えられることが想定されていたから、性犯罪の再犯を防止できる。

b また、()の手段では性的衝動による性犯罪の再犯防止には間に合わないこともあろうし、同区域から離れた場所での性犯罪につながる不審な行動やその準備行為等を把握できない。

c さらに、()の社会復帰目的は、性犯罪の再犯防止という主目的達成を通じて副次的に達成すべきものにすぎない。

() 私見:しかし、多忙な警察本部長等自身の継続監視(法22条)が、前記()aのような形で充分できるとは考えにくいから、適切な担当者に任せるべきである。

また、継続監視決定の基礎となる「必要な」調査(法111項)で、専門家による鑑定等は、「必要があると認めるとき」に命じる「ことができる」し命じないこともできる(同条2項)という任意的なものにとどまる。

() 私見:とするとこれらの点で、継続監視は必要かつ合理的な手段とはいえないから、最小限の制約ではなく違憲である。

(反論部分以外は私見)

法案作成過程では、監視対象者に小型のブレスレット型GPSの装着を義務づける案も検討されたが、「外部から認識可能な装置を装着させると監視対象者に対する社会的差別を引き起こしかねない」との懸念が強く示されたため、最終的に、超小型のGPSについて12(2)イの手術をすることになった。

この手術を受けても、いかなる健康・生活上の不利益も生じず、手術痕も外部から認識できない程度に治癒し、継続監視の期間終了後にGPSを取り外す際も同様との医学的知見が得られている。

反論:そうすると、10日間ほどの余裕を持たなければ、上記のように治癒しないだろうし、監視対象者の身体・健康やGPSに不具合が生じた場合も、継続監視開始日までに対応できないだろう

() 監視対象者に小型GPSの所持を義務付ける等の手段では、GPSがどこかに放置される可能性を否定できず、主目的を達成できないし、医療的な措置にも限界があるのだろう。

反論:罰則も、前記手術を嫌がる者に対する法2112項の実効性確保に(2項については監視対象者の身体・生命の安全のためにも)必要とはいえる。

() しかし、A側の主張に加え、そのような者の自己決定権を尊重する(13条)見地から、「社会的差別」を甘受しても、同手術より、小型のブレスレット型GPS等の「外部から認識可能な装置を装着」する方法を選択する余地を認めるべきである。

() とするとこの点で、法21条は必要かつ合理的な手段とはいえず、最小限の制約ではないから、違憲である。

ウ 反論・私見

() 最後に、前記第12(2)()については①②事件の犯行現場を含んでおり、一般的にも性犯罪が生じやすいといえるし、子どもは特に保護すべきだ(前記⑴イ)ともいえるから、この範囲内で、その者が性犯罪を行う危険性があると認めるときに限り特定危険区域を指定して警告・立入禁止命令をするのは、必要かつ合理的といえる。

() また、段階的な規制は、広範囲の立入禁止命令をいきなり下されるよりは合理的といえる。

前記第12(2)()については、これこそが、性的衝動による性犯罪の再犯防止に、継続監視に基づく警官の急行では間に合わない事態を防ぐのに必要と考えられる。

() よって、この点は必要かつ合理的な手段といえるから、最小限の制約であり合憲である。

以 上